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厨房日誌

昭和に戻りたくない理由

昨日に続いて更にエッセイ的なものを……

ちょうど1年ほど前、5ちゃんねるのスレッドが立ったりしてネットで「昭和に戻りたくない理由」というネタが話題になっていたみたいです。

恐らくは「昭和は良かった」「あの頃に生きてみたかった」といったつぶやきを見た誰かがそのアンチテーゼとして立ち上げたんじゃないかなと推察します。

ちょっと覗いてみたのですが、挙がっている意見がなかなか面白い。

「スマホがない」、「インターネットがない」、「携帯電話は2.5kgもした」など今の利便性を失いたくないというごもっともな意見。

「先生の体罰は当たり前だった」、「学校も社会も謎ルールが多かった」、「セクハラ、パワハラは当たり前」といった社会の風潮を嫌うもの。正論を吐くと「細かいこと言うなやガハハハ」の一言で一蹴される風潮は僕も嫌いだったな。

中には「みんな就職できたのはちょっとうらやましい」なんて意見も。

えと、いつの時代の話をしてます? って聞きたくなっちゃった。昭和で就職が楽にできたのは高度成長期の1960年代か昭和の末のバブルにかかろうとしていた頃だけですよ。

戦前も戦時中も結構厳しかった。戦後すぐは就職以前に生きるのが大変な時期を過ごしたし、70年代に入るとオイルショック、ニクソンショックが相次ぎ、70年台後半は大不況で空前の就職難でした。

あるいは「バブルの前か中か後かで違うな」なんていう歴史をもう一回勉強してきなはれと言いたくなる意見もありました。

昭和は64年が明けて6日目に終わりを迎えます。実質1988年までが昭和。バブル景気がやってくるのはその後、バリバリの平成になってからです。

総じて感じたのはあの頃は良かったという意見も悪かったという意見も、少なからずデフォルメされたイメージで語られているようで、現実(リアル)とはちょっと乖離している気がしました。

ま、人間の記憶は時間が経てば経つほど書き換えられていくので当然の帰結ではあるのでしょう。

 

僕自身はあまり戻りたいとは思わないのですが、それはあの頃にネガティブなイメージを持っているからではありません。

東京オリンピック(昭和39年)の年に生まれてから50年以上生き続けて来ましたがあの頃と今は僕にとって地続きで遠い世界のできごととは思っていないからです。

端的にいうと何も変わってはいない。科学技術は進歩したし、文化や流行も変化しました。けどね、今でも白いご飯にめざしと味噌汁を食べて「旨いなぁ」と言ってるし、昭和39年でも令和元年でも僕は僕。ずっといっしょです。

顧みればあの頃の方が良かったことも悪かったこともあるでしょう。けどね、なんで戻りたいって思うかな?

それって自分で料理をせずにレストランの椅子に腰掛けて「これが食べたい、あれが食べたい」って注文するのと同じ発想じゃないですか。

もし本当に「あの頃のほうが良かった」と思うのであれば今を変えましょうよ。あの頃の良かった一面に近づけましょうよ。大きなことはできないかもしれないけれど、たとえば夕飯を家族みんなで食べることなんてちょっと頑張ればできると思うのです。

コンビニで出来合いのものを買ってくるのをよしてあの頃お母さんが作ってくれた惣菜を作ってみましょう。ご近所の人と顔を合わせたら「こんにちわ」って挨拶しましょう。電車で姿勢を正して立ち文庫本を広げるなんて今日からでもできることですよ。

「過去と他人は変えられないけど、未来と自分は変えられる」アニメにもなった少女漫画「あまんちゅ」に出てくる言葉です。

実に正鵠を射ていい言葉──戻ることはできないけれど、自らが変えようと思えば今からだって未来を昭和にしていくことはできるのです。

どうでもいいけど、「少女漫画」ってめっちゃ昭和の響きですね。平成だと少女コミックかしらん^^

2019/10/27 Sun.

by カエレバ

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