僕は根っからの運動音痴なので、オリンピックやスポーツの中継を観ていても「なにをどうやったらそんな風に体が動くのか」さっぱりわかりません。
ただただ魔法のように見えるだけです。
けど、当の選手たちからすれば
「いやいや、魔法なんてあるわけないじゃん。普通にやればそうなるんだよ」
という答えが返ってくることでしょう。
反面、料理に関しては長年やってきたこともあり、それなりにいろいろな皿が作れるという自負があります。
もし料理が苦手なスポーツ選手がそれを見たとしたら、「あの食材がどうやったらこんな料理になるの?まるで魔法だ」なんて言うかもしれませんね。
そしたら僕もこう答えると思います。
「いやいや、魔法なんてあるわけないじゃん」
魔法なはずがないことが魔法のように見えるのは、概ね仕組みが理解できていないから。
料理という作業がブラックボックス化されていて、「食材をその箱に入れたら熱々の料理が出てくる」──みたいに捉えているからじゃないかと思います。
武道や芸事の修練をするステップを指す言葉に「守破離」というのがあります。
- 「守」……基本や決め事を徹底的に「守る」ステップ
- 「破」……基本や決め事を「破って」発展させるステップ
- 「離」……基本や決め事から「離れて」自分なりのスタイルを確立していくステップ
料理も一種の芸事と捉えることができるので、このステップを踏んで上達することができます。
特に最初の「守」のステップをみっちりやると、料理の原理原則、仕掛けや仕組みが理解できて、魔法めいて見えていたことが実は魔法でもなんでもないと分かるようになります。
原理原則がしっかり身についたら、それを破って発展形の料理が作れるようになりますが、逆に「守」のステップをしっかりやっていないと、独自アレンジを加えた結果、激マズ料理になったりしかねないのでご用心。
発展形がいろいろ作れるようになると、「離」のステップに進めます。
というか、その頃には「守」のステップで覚えた原理原則が体に沁みついてしまっているので、いちいち思い出さなくても、そこから変な逸脱はしなくなっているのです。
なので、「今晩何を食べようか」と訊かれた時に、ふわっとした料理のイメージしか思い浮かばなくても、その料理に至る道筋が自然に見えてくるようになります。
とある夕飯時のこと。
- 豚バラ肉が少し残っている。
- これを使った炒め物が食べたいな。
- ふわふわっとしたスクランブルエッグを混ぜ込む。
- トマト缶で酸味の強いソースを作って……。
- あ、テイストは中華でヨロ──
なんて、とりとめのないイメージが脳裏に次々と浮かんだのですが、それを交通整理してこんな料理にしてみました。
料理を覚えたての頃だったら、本棚に走っていって料理本を引っ張り出していたでしょうに……
ホント、成長したものだと自画絶賛しております(笑)
【材料】(1人分)
-調理時間:9分-
- 豚バラ肉(スライス):70~80g
- トマト缶(ダイスカット):70~80g
- 生姜スライス:1枚
- 卵:1個
- サラダ油(卵用):6g(大匙1/2)
- サラダ油:4g(小匙1)
[卵の下味パート]
- 塩、ブラックペッパー:少々
[調味料パート]
- オイスターソース:12g(小匙2)
- 濃口醤油:3g(小匙1/2)
【作り方】
- 豚バラ肉 は食べやすい大きさに切る。生姜 はみじん切りにする。卵 と [卵の下味パート] をボウルに合わせてよく溶いておく。
- フライパンに サラダ油(卵用) を入れて強火にかける。煙が立ってきたら卵液を流し入れ、緩めの スクランブルエッグ にし、素早く皿に取る。 ※卵は後で火を通すので、この段階では液状部分が残っていて構わない。
- 2.のフライパンに サラダ油 と 生姜 を入れて弱火にかける。香りが立ってきたら 豚バラ肉 を入れ、中火で色が変わるまで炒める。
- 3.に トマト缶、スクランブルエッグ、[調味料パート]を加えて、さっと絡めるように炒めれば完成。
【一口メモ】
- ありがちな中華総菜ですが、中華にトマトって割とありだと思うのです。 そこに ふわっとした卵 が加わると、料理のボリュームがぐんとアップ! 生姜の風味も良いアクセントになっていました。
- お好みで、生姜と一緒に にんにくのみじん切り を加えると、更に中華っぽくなりますよ。
- [調味料パート]に豆板醤を適宜加えると、四川風の辛口惣菜に!
- トケチャップと砂糖少々を加えれば、酢豚っぽい味付けになって子供ウケしそう。
- 手持ちがあれば仕上げに刻み葱を散らすと色味のアクセントになってぐっと見栄えもよくなりそうですね。