いつのまにやら1ジャンルを確立するほどに広まった料理があります。
その名も──「なんちゃって料理」。
材料が高級だとか、手間ひまかかるとか思われている料理を安い食材を使ったり時短技を使ってお手軽に作っちゃえというコンセプトの料理の総称です。
曰くなんちゃってウニ丼、なんちゃってローストポーク、なんちゃってビーフストロガノフなどなど。
え、そんな材料でできちゃうの?
そんな短時間でできちゃうの?
なんてものも少なくありません。
けど──「そりゃ本物のウニ丼を食べたいけどさ。高いしさ。手が出ないじゃん」
なんていうひがみや自虐精神から生まれたものじゃない気がするんですよね。
なんちゃって料理は。
お金がない!
と主張しているのではなく安い食材でこんな旨いものを作ってやったぜというカラりとした明るさを感じます。
フランス料理にも「キャビア・ド・オーベルジーヌ」という定番の家庭料理があります。
通称「貧乏人のキャビア」。
茄子を使った料理で茄子の黒い種をキャビアに見立てているのですが塩気とにんにくの香りがたまらない1品。
「どうせおいらはキャビアなんて縁のない男さ」
なんて自虐に浸るには旨すぎる。
そう、なんちゃって料理は旨くてなんぼなのです。
作った料理がいかにもパチもん臭くて「本家の足元にも及ばない」ものなら作る意味がありません。
本家にひけを取らない。
なんなら本家を超えているまである。
というところになんちゃって料理の真骨頂があるのだと思います。
2024年のおせち料理は中華、エスニックの風を入れるというコンセプトでいろいろ試してみました。
この北京ダックを模した1品もその一つ。
北京ダックは名前の通りアヒルを使った料理です。
けどねあれが好きな人はパリパリに焼けた皮とタレの旨さに惹かれているだけな気もするのです。
いうなれば鰻の蒲焼きが好きな人が実はタレが好きなだけという人が多いのに似ているかも(暴言)。
なら鰻じゃなくても秋刀魚の蒲焼きでも鰯の蒲焼きでも良いじゃんというのと同じ発想で安価に手に入る若鶏の鶏肉を使ってそれっぽく再現してみました。
まさに王道中の王道ななんちゃって料理なのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:45分-
- 鶏もも肉:1枚
[下味パート]
- 甜面醤:9g(大匙1/2)
- 酒:15g(大匙1)
- 塩:ひとつまみ
[焼きダレパート]
- 甜面醤:9g(大匙1/2)
- はちみつ:11g(大匙1/2)
- 濃口醤油:3g(小匙1/2)
【作り方】
- 鶏肉の皮目に大き目のフォークをぶすぶす突き刺して穴を開けます(火の通りが良くなります)。これに[下味パート]をまぶして10分休ませます。待っている間に[焼きダレパート]を合わせて電子レンジの500ワットで30秒チンしてからよく混ぜておきます。
- オーブンを200度に予熱します。待っている間に天板にクッキングシートを敷いて鶏肉を載せ[焼きダレパート]をまんべんなくまぶします。
- 予熱が完了したら皮目を上にして天板をオーブンに入れ15分焼きます。ひっくり返して10分焼いたらできあがり。
【一口メモ】
- パリパリの皮の食感がたまりません。味も北京ダックっぽい。秋刀魚の蒲焼きを食べた時も同じことを考えましたが別にアヒルじゃなくてもこれで良いじゃんと思っちゃいました。
- これはおせち料理用でお重に詰める想定だったため焼く前に[焼きダレパート]を塗っています。単品のおかずとして供する場合は[焼きダレパート]を塗らずに焼いて、焼きあがったものを食べる際に[焼きダレパート]をかけてください。白髪ねぎなどの香味野菜と一緒に春餅で包むとより北京ダックっぽくなりますよ。
- オーブンがない場合は冷たいフライパンに少量のサラダ油を敷いて皮目を下にして鶏肉を入れごく弱火で10分焼きます。ひっくり返して更に10分やけばできあがり。このやり方なら皮がぱりぱりに仕上がります。