7日に一度、土曜の日になると店の扉が異世界に繋がる不思議な洋食屋を舞台にした物語「異世界食堂」に一時期ハマりました。
といっても原作は読んでいなくてアニメ版のみ視聴したのですが。
その中の一話に異世界からウエートレスのバイトに来ている魔族の娘──アネットに店の主人がじゃがバターの作り方を教えるというエピソードがありました。
「確かアネットさんの国には蒸すという調理法がなかったんだよな」
じゃがいもを蒸し器に仕込みながら主人が彼女にそんなことを尋ねるシーンがありました。
この作品で描かれている異世界は中世ヨーロッパ風。
このセリフは現実のヨーロッパ諸国でも「蒸す」という技法が流行らなかったという史実を示唆しています。
フランス料理の世界でヴァプールと呼ばれる沸騰した水の蒸気で調理する技法が使われ出したのは実に1970年代のこと。
そこに至るまで洋食の世界では蒸すという技法が流行らなかったらしい(いちおうそういう調理法があるという認知はあったようですが)。
その理由は一説によると臭みの強い牛肉や豚肉を主食材とする料理が多かったからではないかとも言われています。
それに対して中国では6、7千年前の新石器時代の遺跡から陶器製の蒸し器が発見されていて蒸すという技法はむちゃくちゃ歴史のあるものらしい(ちなみに日本に伝来したのは3世紀、弥生時代が終わる頃)。
なら中国料理の方が洋食よりバラエティー豊かで上等なのかと言うとそういう話ではなくどちらの料理も扱う素材に対して最適な調理法を突き詰めていった結果、一方は蒸すという選択肢が残り、他方は合わないと考えて採用されなかったというだけの話なんですけどね。
涼拌茄子は茄子を蒸していろいろ調整したタレをかけた中国料理の冷菜です。
確かに洋食屋さんのメニューには載っていなさそうな1品ですが色々咲きて野は楽し。
夕飯の選択肢にこういうのもあって良いかなくらいに考えてレパートリーを増やせば良いと思います。
【材料】(2~3人分)
-調理時間:16分(料理を冷蔵庫で冷やす時間は含めていません)-
- 茄子:中サイズ1本
- 茗荷:半本
[調味料パート]
- ごま油:10g(小匙2.5)
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 酒:5g(小匙1)
- 酢:5g(小匙1)
- 生姜:スライス1枚
- にんにく:ひとかけ
- 豆板醤:3g(小匙1/2)
【作り方】
- 茄子はがくを取って縦半分に切ります。茄子の両脇に菜箸を置き皮目から斜めに格子模様になるように包丁目を入れます。これを横半分縦半分の四つ割りにします。 ※菜箸を両脇に置いておくことで包丁の刃先が途中で止まり切り落としを防げます。
- 1.を耐熱皿に入れ蒸気の上がった蒸し器で10分蒸します。
- 2.をやっている間に茗荷は千切りにします。[調味料パート]の生姜、にんにくをみじん切りにし残りの材料と合わせてよく混ぜておきます。
- 2.の茄子の水気を拭いて深皿に盛りつけます。[調味料パート]を回しがけ茗荷をトッピングしたらできあがり。冷蔵庫でよく冷やして戴きましょう。
【一口メモ】
- 夏向けの中華冷菜です。冷蔵庫でキンキンに冷やして戴けば良い暑気払いになりますよ。豆板醤の程よいピリ辛も夏らしくて僕は好きだな。
- [調味料パート]はサラダのドレッシングとしてとても汎用性が高いです。茄子を蒸すのはハードルが高いと思われる方は生で食べられる胡瓜やトマトに使うのもありです。
- オリジナルのレシピでは[調味料パート]の生姜、にんにくはすりおろす手順になっていましたがみじん切りを選択しました。その方がまんべんなく混ざらないので箸で取る場所によって風味に強弱が生じてより強いインパクトを感じられるようになると思ったからです。なので生姜、にんにくを混ぜ込む時は敢えてざっくり混ぜるくらいにしておくのがおススメです。