中国料理には「医食同源」という言葉があります。
栄養を摂り、体を育てる食事はまた体を癒やす薬でもあるといったほどの意味です。
逆に言うと僕らが日常何気なく食べている食材にはそれぞれ薬効があるという意味でもあります。
2021年にドラマにもなった近藤史恵の「ビストロ・パ・マル」シリーズにもそんな医食同源にちなんだエピソードがありました。
上司と不倫している秘書。
彼女は上司の正妻が作る手料理を食べて彼を奪い取る決意をします。
血抜きされてないレバーは生臭く、水にさらしていないサラダのタマネギは辛く、ぬめりの取れていない里芋には味がしみてない。
どれも愛情が感じられないひどい料理。
それを嫌な顔ひとつせず食べている彼を見てたまらなくなったのです。
彼がひどい偏食になるのも当たり前だ──そう彼女は考えるのですが真相は真逆でした。
彼の偏食は子供の頃からのもの。
それを奥さんはわかっていて気遣っていたんですね。
レバーは血抜きすれば生臭くなくなりますがその血に豊富な栄養があるのも事実。
玉ねぎを水に晒せば栄養も一緒に流れ出る。
里芋のぬめりに含まれるガラクタンは血圧を下げコレステロールを取り除く作用がある……
偏食な彼の体を気遣うからこそ敢えて薬効成分を抜いてしまう手順を行わない、愛情のこもった料理だと主人公のシェフは彼女を諭します。
ちょっと持って回った気遣いな気はしますがハートフルなエピソードでした。
とまれ、かように日常何気なく口にしている食べ物の中に意外な薬効がひそんでいるのはよくあることらしい。
たとえば「山芋」。
中国料理ではこの食材は薬そのものの扱いなのだそうです。
曰く、滋養強壮、消化促進、新陳代謝促進、コレステロール低下作用、むくみ解消、活性酸素除去、血糖値低下作用、便秘改善……
書いてて寿限無みたいだなとか思っちゃったw
そんなことを思いながら戴くとこのありふれた料理もなんかありがたい一品に思えてくるのは……
プラシーボ効果かなぁ
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- 山芋:3cm
- 干しきくらげ:2、3枚
- ピーマン:半個
- 人参:スライス3枚
- 刻みネギ:少々
- 生姜:スライス1枚
- にんにく:ひとかけ
- サラダ油:6g(大匙1/2)
- 水溶き片栗粉:3g分
- ごま油:ひとたらし
[調味料パート]
- きくらげの戻し汁:100g(カップ1/2)
- 鶏ガラスープの素:3g
- 砂糖:ひとつまみ
- 塩:ひとつまみ
- 酒:5g(小匙1)
【作り方】
- 山芋は皮を剥き3mm厚の半月切りにします。きくらげは水で戻して細切りにします。ピーマン、人参は千切りにします。生姜、にんにくはみじん切りにします。
- フライパンにサラダ油と刻みネギ、にんにく、生姜を入れて弱火にかけます。香りが立ってきたら山芋、きくらげ、ピーマン、人参を加えて中火で2分炒めます。
- 2.に[調味料パート]を加えて蓋をせずに3分煮ます。水溶き片栗粉を加えてとろみを付け(とろみが物足りない時は煮汁を煮詰めて調整します)、ごま油を垂らしてさっと混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- はんなりと優しい味のお惣菜です。それでいて肉を全く使っていないのに満足感があるのは腹持ちの良い山芋のおかげかな。ぜひ、熱々を召し上がれ。
- 山芋は中国料理では薬に分類されるくらい様々な薬効のある食品です。ちょっと体調が悪いな。なんか体がだるいなと言う日に特にオススメの1品です。
- お好みで味の素を少し振るとぐんと旨味が増して美味しいですよ。とかく化学調味料はいろいろ言われがちですがたまにだったら目くじら立てなくても良いんじゃないかなと僕は思っちゃいます。