「幽霊の正体見たり枯れ尾花」なんて言葉があります。
ちなみに尾花とはすすきの別名。
黄昏時、通う人もない野道を歩く──なんてシチュエーションならば、夕日を背に枯れてへたっているすすきのシルエットが幽霊に見えないこともないかもしれません。
この場合、「幽霊が出て来てもおかしくない」という特殊な舞台装置が先にあってその先入観でものを見るから起きる錯覚なわけです。
人は時としてそこに「あるべき」と思っているものを勝手にそこに「ある」と思い込んじゃうんですね。
逆に特殊じゃない舞台装置──日々見飽きた光景だからこそ起きる思い込みというのもあります。
たとえばコーヒーに牛乳を入れようとして冷蔵庫の扉から紙パックを取って中身を注いだら黒い液体が……
「ちょっと誰よ、こんなところに麺つゆのボトル置いたの!」家族との口論は必至。
そのあと、あなたはめんつゆ入りのコーヒーを飲むべきか悩む羽目になりますw
これなんかは冷蔵庫の扉の一番手前が牛乳の紙パックの定位置という日常がまずあるわけです。
ところがたまたまその日は牛乳がちょうど切れてそのスペースが空いていた。
そこへお昼にそうめんを食べたお母さんが似た色のめんつゆの紙パックを置いちゃったといったところでしょうか。
とかく人は思い込みを持ちやすい生き物。
特に手慣れた行動を取るときにこそよくよく確かめてから行うべきなのかもしれません。
過日、よく行くお肉屋さんがショーケースの模様替えをしていました。
牛、豚、鶏と分類されているだけでなく「焼き肉用」などどういった料理に向く部位かによっても分けられていてなかなか見易い。
ただ、いつも買う定番アイテムがいつもの位置になくなっているのでちょっとまごまご……
あ、あった。
牛バラ肉──商品番号は〇〇(ここの店は商品名の聞き違いを防ぐためにお肉に番号の書いたポップが付いていてその番号で注文するシステムなのだ)。
「〇〇を200gください」
といって買って帰ったらスライスじゃなくてブロックだった……。
最初から自力で探さずに「牛バラスライスどこですか?」と訊けば済む話でした。
げに思い込みは恐ろしい。
牛バラスライスはいつも牛すじ肉の隣に置いてあるので牛すじ肉の引っ越し先の隣がそれだと信じて疑わなかった僕なのでしたw
ブロックはスライスと違って焼き物には向かないので仕方なく煮物をチョイス。
その日の夕飯はこんなおかずとなりました。
【材料】(1人分)
-調理時間:75分-
- 牛バラブロック:150g
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 大根:3cm
- 白ネギ(緑色の部分):10cm
- 生姜:スライス
- サラダ油:12g(大匙1)
[煮汁パート]
- だし汁(昆布出汁):150g
- 酒:15g(大匙1)
[調味料パート]
- 濃口醤油:12g(小匙1)
- 砂糖:9g(大匙1)
【作り方】
- 牛肉は食べやすい大きさに切って塩、ブラックペッパーをまぶします。白ネギは小口切りに、生姜は千切りにします。
- 鍋にサラダ油と白ネギ、生姜を入れて弱火で炒めます。香りが立ってきたら牛肉を加えて焼き色が付くまで炒めます。これに[煮汁パート]を加えてひと煮立ちさせます。アクを取ったら再度煮立たせてすぐに火を止めバスタオル3枚くらいにくるんで1時間放置します。 ※バスタオルでくるんで保温することで火を使わなくても煮込むことができます。光熱費の節約になりますよ。
- 2.をやっている間に大根を下茹でするお湯(分量外)を沸かします。待っている間に大根はかつらに剥いて5mm厚の半月またはいちょう切りにします。お湯が沸いたら大根を投入し5分下茹でしてざるに揚げておきます。
- 2.の鍋に大根と[調味料パート]を加えて中火で10分煮込めば出来上がり。
【一口メモ】
- ほっこり落ち着く煮物です。味付けはシンプルなので飽きが来ずわりと万人受けする味付けじゃないかな。
- ちょっと甘めの味付けにしています。和食はその方が美味しく感じやすいのだ。すっきりした味がお好みの方は[調味料パート]の砂糖を加減してください。
- 手間は大したことありませんが煮込みに少々時間がかかります。ただ、バスタオルに包んで放置しておくだけなので早めに仕込めばそれほどわずらわしくはないと思います。
- お急ぎの時は工程2.のバスタオルに包んで煮込む時間を短くしてください。お肉の硬さが変わる以外はそん色はありません。
- 圧力鍋を使う場合は[煮汁パート]の水を200g(1カップ)増やして工程2.のバスタオルに包む煮込みの代わりに加圧10分減圧10分で調理してください。お肉がとろとろになりますよ。