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牛肉の料理(和食)

社会人になったばかりの年、無料鑑賞券を母からもらったので神戸の館に映画を観に行ったことがあります。

映画のタイトルは「異人たちとの夏」。

何の予備知識もなくたいして期待していなかったのですが……

めっぽう良かった。

監督は大林信彦。

仕事にも私生活にも倦んだ中年男(風間杜夫)がふらりと立ち寄った浅草の演芸場でいるはずのない男(片岡鶴太郎)を見かけるところから物語は始まります。

「お父さん……」

男はどう見ても自分が小学生の頃に交通事故で母と一緒に死んだはずの父親だったのです。

男はさも当たり前のように風間杜夫を今住んでいるというアパートへといざないます。

まさか──アパートの扉が開いて彼の前に現れたのは亡くなった頃そのままの若い母でした。

物語はそのまま風間杜夫が両親のアパートに通い続ける逆牡丹灯篭(念のために書くと牡丹灯篭は幽霊の方が男の家に毎晩やってきます)のような展開になります。

きめ細やかに描かれていく心情の機微の美しさ、哀しさも見ごたえありなのですが冒頭の浅草の描写にまずは圧倒されました。

日の落ちたネオン街、そぞろ歩く人、人、人。

周りに見えている店もビルも現実のもののはずなのにいつの間にか人ならぬものが棲む街へと迷い込んでしまっている──大林信彦はやっぱりこういったファンタジックな絵を造らせたら天下一品だったなぁ。

異人たちとの夏を観た年から10年ばかりが過ぎた頃だったと思います──出張できていた新宿での仕事が早く終わったので僕は西口商店街をぶらついておりました。

かつてはションベン横丁なんて口さがない名前で呼ばれていたその辺りは僕が行った頃は思い出横丁という名前になっていましたね。

あの一角はとにかく店のひとつひとつが小さくて狭い。

なので実際以上にみっしりと店店がまるで折り重なるように並んで見えます。

居酒屋、焼鳥屋、ホルモン焼きに串焼きの店。

まぶし過ぎるくらいに明るい電球が灯る店店の間をそぞろ歩く人、人、人。

確かお目当ての店があったはずなのに気が付くと僕はよく知らない飲み屋のカウンター席に腰を下ろしていました。

そこの店に限ったことではないのですがどの店の壁もやけに薄くて今聞こえてきている喧騒が店の中のものなのか隣の店から聞こえてくるものなのかもよくわからない。

だんだん自分の居場所が心もとなくなっていくような心地よい不安を抱きながら僕は盃を傾けておりました(暢気だな)。

隣の席に座ったおじさんと意気投合して。

おじさんの馴染みの店(といっても徒歩10歩くらいw)に河岸を移して。

おじさんが実はプロの歌手なんだと正体を明かせば「お、僕もけっこうカラオケとか歌いに行くんですよ」と答えたりするあたり明らかに2人ともできあがっていたよなぁ。

で、そのまま近くのカラオケボックスに移動。

僕は時ならぬ「酒と泪と男と女」の猛レッスンを受けたのでしたw

翌朝はさすがに宿酔いがきつかった。

けど、あのカラオケボックスでの特訓は夢じゃなかったよなと思いつつ。

記憶のディテールはぼやけるばかり。

今でもホルモン焼きの匂いを嗅いだりするとあの夜の喧騒が脳裏によみがえることがあります。

日の落ちたネオン街、そぞろ歩く人、人、人。

周りに見えている店もビルも現実のもののはずなのにいつの間にか人ならぬものが棲む街へと迷い込んでしまっている──実はあのおじさんも含めてあの時僕がいた場所は……

いや、考えるのはやめときましょう。

いずれにせよ遠い日の思い出。

今となってはホルモン焼き同様に酒の肴にするしかないようなお話です。

【材料】(2人分) 

調理時間:32分-

  • 牛もつまたは豚もつ:100g
  • 玉ねぎ:1/4個
  • サラダ油:4g(小匙1)

[下茹でパート]

  • 水:300g(カップ1.5)
  • 酒:15g(大匙1)
  • 生姜:スライス1枚

[漬け込みパート]

  • 濃口醤油:12g(小匙2)
  • 酒:10g(小匙2)
  • 砂糖:6g(小匙2)
  • コチュジャンまたは豆板醤:12g(小匙2)
  • おろしにんにく:ひとかけ分
  • ごま油:2g(小匙1/2)

【作り方】

  1. [下味パート]を小鍋に入れて強火にかけひと煮立ちさせます。これにもつを加えて中火で10分下茹でします。 ※もつのパックに(ボイル)という記載がある場合は下茹で済みですのでこの手順は省略してください。
  2. 1.をやっている間に玉ねぎは細切りにします。[漬け込みパート]を器に合わせてよく混ぜておきます。
  3. 1.をざるに揚げて湯切りし[漬け込みパート]に加えてよく和えます。このまま15分漬け込みます。
  4. フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これに玉ねぎを加えて炒めます。玉ねぎがしんなりとし始めたら3.を[漬け込みパート]ごと加えて水気がほぼなくなるまで炒めればできあがり。

【一口メモ】

  • 辛口の味付けにしたので体がポカポカ温まります。辛いのが苦手な方はコチュジャンまたは豆板醤の量を加減してください。
  • [漬け込みパート]はもつ全般に合います。普通の焼き肉の漬けダレにしてもOK。市販の焼き肉のタレに飽きたら是非お試しあれ。
  • 今はバーベキューなどで焼き肉だけでなくホルモン焼きなんかも普通に楽しむ人も多いと聞きます。タレ漬けしたお肉を買っていくのが一般的だと思うのですがあれってタレ込みの重さで量り売りだと思うのです。もつの正味重量で買えばお得ですし[漬け込みパート]は安く作れちゃうのでできればひと手間かけて自分でタレ漬けして野山に出かけましょう。

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