揚げた鶏肉の思い出──と言われるとお弁当に入っていた鶏のから揚げを連想する人が多いんじゃないでしょうか。
僕の場合、鶏のから揚げをお弁当のお菜に入れてもらった思い出ももちろんあるのですが一番に思い出すのは手羽先の素揚げです。
これは母がよく作ってくれたおかずで熱い揚げ油に手羽先を投入して素揚げにするだけ。
で、揚げたての熱々にアジシオを振って食べるのが子供の頃にお気に入りだったご馳走でした。
けど、今考えると手羽先は単価が安くていっぱい食べられるので経済的だったんですよね。
しっかり主婦してたなぁ>母
それからだいぶ時代が下って大学生活を送っていた頃、僕はケンタッキー・フライド・チキンの味を覚えました。
世の中にこんなに旨い揚げ鶏があるのかと感動したものです。
ただわざわざ買って食べるにはちょっと高かったんだよなぁ。
そのケンタッキーには忘れられないクリスマスの思い出がありまして──といっても艶っぽい話ではないのですが──クリスマスシーズンと言えばその頃所属していた男声合唱団の演奏会直前で毎年山に籠って強化合宿をやっていたのです。
で、近所に住むOBの方々がよく差し入れを持って来てくれるのですが一番多かったのがケーキとケンタッキー・フライド・チキンだったんですね。
ただ、この差し入れを戴くに際して非情な掟が存在していました。
それは……
「そのOBが在学中に所属していたパートのメンバーのみ食して良し」
というもの。
男声合唱は通常4パートに分かれていて声の高い方からトップテナー、セカンドテナー、バリトン、バスと呼ばれます。
僕はわりと低めの声なのでバリトンに所属していました。
が、近所に住むOBの方々はなぜかトップテナーが圧倒的に多かった。
必然的にバリトンに割り当てられるフライドチキンは希少。
大量のフライドチキンとケーキを平らげるテナーの連中を羨まし気に&恨めし気に見ていましたっけ(ケーキなんて一人当たり1ホール食べなきゃいけないくらい差し入れがくるんだもん)。
ま、その不平等さをみんなけっこう面白がっておりました。
運動会の徒競走で全員手をつないでゴールする世代の人から見れば理不尽極まりない光景かもしれませんが昭和の青少年はワイルドで変なところで潔かったのです。
手羽先にしろケンタッキー・フライド・チキンにしろ今となっては食べたい時に食べたいだけ買ってくるくらいの余裕はありますが──
《今となっては》そんな油っこいものは体が受け付けなくなっているという。
世の中、無常です。
それでもたまには揚げた鶏で乾杯!
なんてしたくなる時もありまして、過日こんな料理を手作りして缶ビールのプルトップを開けました。
そのうちもっと油っこいものがダメになる前に──食べられるうちに食べておかねばなのです。
【材料】(2~3人分)
-調理時間:45分-
- 鶏むね肉:1/2枚(約150g)
- 片栗粉:適宜
- 揚げ油:48g(大匙4)
- 白ごま:適宜
[下味パート]
- 酒:2.5g(小匙1/2)
- 濃口醤油:3g(小匙1/2)
- おろし生姜:半かけ分
- おろしにんにく:半かけ分
- 塩、ブラックペッパー:少々
[タレパート]
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 味醂:18g(大匙1)
- 酒:7.5g(大匙1/2)
- 砂糖:6g(小匙2)
【作り方】
- 鶏肉は皮を取って厚みのある部分を観音開きし厚みを均等にします。これと[下味パート]をビニール袋に合わせて30分漬け込みます。
- フライパンに揚げ油を張って中火で約1分半加熱します。待っている間に1.をざるに揚げて水気を切り片栗粉をまぶします。油が温まったら鶏肉を入れて片面1分半ずつ揚げ焼きにします。鶏肉を引き上げて油をしっかり切ります。
- 2.の揚げ油をオイルストッカーに戻したらフライパンは洗わずに[タレパート]を入れて中火にかけひと煮立ちさせます。待っている間に鶏肉を食べやすい大きさに切ります。
- 3.のフライパンに鶏肉を入れてタレを絡めながら水気がほぼなくなるまで焼きます。深皿に移して白ごまと和えればできあがり。
【一口メモ】
- からりと揚がった唐揚げも美味しいですがタレを絡めた揚げ鶏や南蛮漬けなんかも捨てがたい。甘辛い味付けで戴く揚げ物もなかなか乙なものです。
- 使う鶏の部位は脂肪の少ない胸肉。それを少量の揚げ油で揚げ焼きにしているので通常の唐揚げよりかなりカロリー低めです。油っこいものはちょっと苦手という人でもついつい箸が伸びてしまうテイストですよ。
- 揚げ物は冷めると衣がべしゃっと残念な感じになりがちですがこれはタレを絡めてあるのでその心配もなし。お弁当のお菜としてもおススメです。
- お好みで[タレパート]に酢を5g(小匙1)ほど加えるとさっぱり感が増します。鷹の爪か豆板醤を加えるとピリ辛味を楽しむこともできますよ。