魚編に旨いと書いて鮨(すし)と読みます。
この漢字は紀元前の中国の文献には登場するらしいのですがそんな時代にどうやって生魚を扱ったんだろうとたいへん興味をそそられますね。
鮨の歴史はナマ物の保存法の歴史でもありました。
江戸より昔の鮨はいわゆる「なれずし」と呼ばれる発酵食品で僕らがイメージする鮨とはずいぶん違いました。
今でもなれずしは流通していて滋賀県の鮒ずしなどは有名です。
僕も食べたことがありますがとにかく匂いがすごい。
酒呑みだからか僕的には食欲をそそられると感じられる匂いなのですが、かなり多くの人が「あれだけはダメ」って言いそうな臭いだったりします。
そう、昔は寿司といえば臭い食べ物の代表選手だったみたいなのです。
僕らがイメージする握り寿司が登場したのは江戸後期、文化文政の頃。
それにしたって冷蔵庫がない時代ですから魚の刺身なんて何時間も持ちません。
そこでいろいろな保存方法が考案されました。
まず米(しゃり)に酢を混ぜ込むことで腐敗を遅らせるという工夫がされました。
科学的な理解はなくとも経験的に酢漬けにすれば腐りにくいことが知られていたのですね。
加えて刺し身を醤油と酒を合わせたタレに漬け込むことで長持ちさせるヅケという方法が考案されました。
今聞いても「へえ、なるほど」てなもんですが実はこれはすごい贅沢なことだったのです。
醤油は今と違って高価だったのでそれまでだったらそんな技法は却下されていたでしょう。
この頃から醤油が大量生産されるようになって庶民が簡単に使える調味料として普及し始めたからできた技なのです。
それからおよそ200年の現代。
今では冷蔵庫がありますからヅケの技法は保存法としては過去の遺物になりました。
けど、生魚では味わえない風味が楽しめるのでこれをネタにした握りが楽しめる寿司屋はたくさんあります。
それどころか、この料理のように魚以外の食材にヅケの技法を使った料理も居酒屋のお品書きに並んでいたりするのですよ。
【材料】(2人分)
-調理時間:半日-
- ささみ:2本
[漬けダレパート]
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 酒:10g(小匙2)
- 味醂:6g(小匙1)
【作り方】
- ささみは筋を取り一口大に切ってビニール袋に入れます。これに[漬けダレパート]を合わせて冷蔵庫で半日漬け込みます。 ※一晩づけこむと更にしっかりとした味になります。
- 魚焼き用のグリルの焼き網にクッキングシートを敷いて1.を並べます。漬けダレは使うので取っておきます。
- 2.をグリルで15分ほどあぶり焼けばできあがり。この間、3分おきに取り出して取っておいた漬けダレにどぼんと浸けてまた網に戻すという手順を繰り返してください。
【一口メモ】
- 独特の醤油辛い風味はなんだか日本酒が欲しくなります。一粒口に放り込んでは猪口を傾けてぐびりと酒をすするなんて酒呑みとしては最高の飲み方ですよ。
- お好みで粉山椒を振ったり千切りの大葉をまぶしてみてください。清涼感が加わって良い暑気払いになります。
- 甘めがお好みなら[漬けダレパート]に砂糖を3g(小匙1)ほど加えてください。ただし、焦げやすくなりますので焼くときは要注意。頻繁に[漬けダレパート]に浸けて表面が乾かないようにします。
- この料理の付け合せには塩気の強い野菜の漬物などがよく合いますよ。