もう20年くらい前の話になりますがふとした気まぐれから数年間、英会話スクールに通っていたことがあります。
英会話の学校とは言いながらそれだけではなく英語圏ならではの文化や考え方についてもたくさん教わり、日本との感覚の差異を知る良い勉強になりました。
たとえば名詞にはCountablenoun(可算名詞)とUncountablenoun(不可算名詞)の二種類があるなんてのは新鮮だったなぁ。
日本人からしたら「なんぞ?」と訊き返したくなるような話ですが、可算名詞は数えることのできる名詞──たとえば犬(dog)や猫(cat)がこれに含まれます。
不可算名詞は数えることができない名詞──たとえば水(water)や野球(baseball)がこれに当たります。
なんでわざわざそれを分類するの?
という話ですが英語の名詞には複数形があるからなのですね。
可算名詞は複数形がある名詞。
2匹以上ならdogsやcatsと表記します。
不可算名詞は複数形がない名詞。
waterやbaseballには複数形がありません。
文法を説明する上で必要に迫られた分類といったところでしょうか。
何匹いたって犬は犬、猫は猫と考える日本語圏の人間からすれば縁のない文法だと思います。
英会話スクールに通うのは仕事帰り、つまり夜が多かったからでしょうか。
この可算名詞/不可算名詞を教わった時、僕は今夜の酒のつまみについて考えていたようなのです。
で、一風変わった酒飲みの真理の一片を見た気がしました。
『理想の酒のつまみは不可算名詞であるべし』
どいうこと? って訊かれそうですがこういうことです。
たとえば若鶏の唐揚げは最高に旨い酒のつまみです。
けど、可算名詞なのです。
お店で注文すればお皿の上には5個とか6個とか数を数えられる状態で提供されます。
つまり箸を5回なり6回伸ばせばなくなっちゃう。
あとには空になったお皿があるだけで空しいことこの上ない。
その点、つまみがなめろうだった場合はどうでしょう。
なめろうは千葉の名物でアジの刺身と香味野菜を細かく叩いて味噌などで味付けしたつまみです。
お店で注文した場合小皿にこんもりと盛られて出てきますがこれは不可算名詞なのです。
1個、2個と数えることはできず食べる時は箸先でちょこっとずつつまみながら食べることになります。
箸を伸ばすこと1回、2回……減った気がしない。
10回、11回……まだまだある。
20回……って20回目だっけ?
なんかいつまでもいつまでも食べ続けられる気がしちゃうんですよね。
実際はそんなわけはなくていつか最後のひとかけを口に運ぶことになるのですが。
『理想の酒のつまみは不可算名詞であるべし』の真意は1個、2個と数を数えられない状態のつまみはいつまでもちびちび食べられる気がしてお得。
と言ったほどの意味。
なんともいじましい真理ですが得てして酒飲みというものは意地汚いものなのです。
たとえばこの「ささみの梅しそ揚げ」はそのままでは1本、2本と数えられます。
けれど写真にあるように小さく切って供すれば切った数だけ箸を伸ばすことができる──なんてせこいことを考えてしまうのが酒飲みという人種なのです。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- ささみ:2本
- 梅干し:2粒
- 大葉:2枚
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 卵:半個
- パン粉:適宜
- 揚げ油:適宜
【作り方】
- ささみはすじを取り縦に浅めに包丁を入れて(切り落とさないよう注意)左右に包丁を入れて観音開きにします。これに薄く塩、ブラックペッパーをまぶします。梅干しは種を外して細かく叩きます。大葉は軸を落とします。卵はよく溶いておきます。
- 揚げ油を170度に温め始めます。ささみに梅肉を載せて薄く伸ばし大葉を貼り付けます。これをくるくるっと巻いて卵液をくぐらせパン粉をまぶします。
- 油が温まったら2.のささみを投入し1分半、いじらずに揚げます。菜箸でこれをひっくり返して1分半揚げればできあがり。粗熱が取れたら食べやすい大きさに切って皿に盛って頂きましょう。
【一口メモ】
- 梅しそって定番の風味ですがさっぱりとした清涼感があるので揚げ物には良く合います。冷めても美味しいのでお弁当のおかずにもおススメですよ。
- おつまみとして戴く場合はちょっと細かめに切るのがコツ。その分、何回も箸を伸ばせるので長持ちするおつまみになります。
- 梅や大葉の手持ちがない場合、ふりかけのゆかりをささみの内側にまぶして揚げればけっこう似た感じのお菜にすることができます。ボリュームがちょっと寂しいのでスライスチーズなどを巻くとなお良しかな。