酒の歴史は稲作の歴史と同じくらいに長いらしい。
米を栽培するのと酒を作る食文化はほぼ同時期に生まれたそうです。
であれば、酒を作ると必然的にできる酒粕の歴史も同程度に長いわけで、万葉集に載っている山上憶良が詠んだ貧窮問答歌にはこんな一節があります。
『糟湯酒 うち啜ろいて』
「酒粕をお湯で溶いたものをすすって」と言ったほどの意味ですが酒には手が出ない貧しい庶民は代わりに酒粕湯で寒い夜に体を温めていたらしい。
僕にとっての酒粕のイメージは母が作る甘酒。
冬になるとお湯に酒粕を溶いて砂糖を加えた飲み物をよく戴きました。
後に保温モードの付いた餅つき機を購入してからは祖母がよく麹から本格的な甘酒を作ってくれましたが正直風味がきつくて、僕は酒粕から作るチープな甘酒のほうが好きだったな。
ま、すっかり酒呑み体質になってしまった今ではまた嗜好も変わっている気がしますが。
とまれ、僕の中では長らく酒粕はお湯に溶いて飲むものという固定観念の澱がたまっておりました。
酒を嗜むようになって、奈良漬やわさび漬けなども好もしく思うようになったのですがなぜかそれらに酒粕が使われているという発想はなく「この風味と粘りってどうやって出すんだろうな」なんて呑気なことを考えていましたっけ(をい)。
この料理のように焼き物の風味付けに酒粕を使うなんて技法を覚えたのもわりと最近のことなのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:90分-
- 鶏もも肉または胸肉:1枚(約300g)
[漬け床パート]
- 酒粕:35g
- 味噌:15g
- 味醂:15g
- 濃口醤油:9g(大匙1/2)
【作り方】
- [漬け床パート]を器に合わせて電子レンジの200ワットくらいの低温で1分半チンして酒粕を緩めます。これをよく混ぜます。
- 1.をやっている間に鶏肉にフォークで数カ所穴を開けます。肉が集めの場合は観音開きにします。
- バットにラップを敷いて1.の半分を均等に敷き詰め鶏肉を載せます。その上から残りの1.をまぶしていきラップをかけてしっかり密着させます。これを冷蔵庫に入れて1時間以上寝かせます。,
- オーブンを200度に予熱します。待っている間に鶏肉についている漬け床をキッチンペーパーで軽くぬぐっておきます。
- オーブンが温まったら天板に焼き網を置いて鶏肉を皮目を上にして置き18分焼けばできあがり。途中で一度ひっくり返してください。
【一口メモ】
- 独特の風味と甘みをまとってちょっと高級感のある焼き物に仕上がります。冷めても美味しいのでお弁当の主菜にもオススメですよ。
- 付け合せはレタスやミニトマトなどの洋風サラダが合うと思います。
- お好みで粉山椒を振っても楽しいですよ。
- 豚肉や鮭、サワラなどを使っても美味しくできます。