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魚料理(和食)

パンガシウスの蒲焼きVer.2

同窓会などで、昔は地味だったのにすっかり綺麗な大人の女性に変身したクラスメイトを見た時、

「いや、俺、あの頃からあの子は絶対美人になると思っていたよ」

なんて調子の良いことを言いだすやつが、一人や二人はいるものです。

これは心理学用語で『後知恵バイアス』と呼ばれるもので、結果を知ってから(その結果に合わせて)都合よく記憶が改ざんされることによって起きる現象だそうです。

プロジェクトが失敗してから

「あのやり方だと失敗すると思っていたんだ」

と言ってみたり、

スポーツの試合に負けてから

「〇〇をリリーフさせてたら勝てたのに」

なんて負け惜しみを言うのも、同じ現象ですね。

ともあれ、人間の記憶というのは案外頼りなく、「最初からそうだった」──なんて思い込んでしまうことは世の中に多々あります。

料理の世界でもこの現象はちらほら見かけられて、実は元々使われていた食材は全然別のものだったのに、誰も覚えていない──なんてことは珍しい話ではありません。

例えばコロッケ。

明治時代に洋食が伝わった頃、フランス料理の「クロケット」を下地に考案された料理で、ホワイトソースを使うクリームコロッケのスタイルが元祖です。

それがいつの間にやら、すりつぶしたじゃがいもに衣を付けて揚げるのが主流になり、クリームコロッケはその変化球──みたいな扱いになっていますね。

あるいは唐揚げ。

江戸時代に中国から伝わった当初は、豆腐を小さく切って素揚げし、醤油と酒で煮た料理だったとも言われています。

ところが今では、唐揚げと言えば鶏肉を下味に浸けて揚げた料理と誰もが思っていて、本家の豆腐料理を出しても「何、これ?」と言われるのがオチでしょう。

もっとえぐい例を挙げると、ウェディングケーキのご先祖は今と似ても似つかないものです。

古代ローマ時代には、小麦粉のケーキを花嫁の頭上で砕き、その破片をゲストが拾い集めて幸運を願うという習慣がありました。

また、エリザベス朝時代(日本では関ヶ原の合戦をやっていた頃)のイギリスでは、臓物やカキなどをパイ生地で包んだ「ブライダルパイ」が振る舞われていたらしい。

もちろん甘いお菓子ではなく、完全に惣菜のカテゴリーですね。

もし今の結婚式でそんな料理が出されたら、「なんの嫌がらせだよ」と物議を醸しそうです。

パンガシウスは、少し前からウナギの代用食として注目されているナマズ目の魚です。

まだまだ認知度は高くありませんが、最近は学校給食に登場したり、安価な魚としてスーパーで売られていたりして、少しずつ僕らの日常生活に浸透しつつあるように感じます。

案外、今から数十年後には、「蒲焼きと言えばパンガシウス」と誰もが思い浮かべる時代が来ていたりして。

「ウナギ? ええっ! あの蛇みたいで気持ち悪い魚のこと? あんなので蒲焼きを作って美味しいわけないじゃん。ていうか、あの魚、そもそも食べられるの?」──なんて会話が交わされるようになっているかも。

この料理をこしらえながら、そんな愉快な想像をしてしまいました。

【材料】(1人分) 

調理時間:15分-

  • パンガシウス:1切れ(100g)
  • サラダ油:4g(小さじ1)

[下味パート]

  • 塩:1g(小さじ1/6)
  • ブラックペッパー:少々
  • 薄力粉:小さじ1/2

[タレパート]

  • 濃口醤油:9g(大さじ1/2)
  • 味醂:6g(小さじ1)
  • 酒:5g(小さじ1)
  • 砂糖:3g(小さじ1)
  • マヨネーズ:3g
  • 酢(できればバルサミコ酢):3g

【作り方】

  1. パンガシウスは横半分に切り、両面に塩、ブラックペッパーを振ります。全体に薄力粉をまぶします。[タレパート]の材料を器に合わせてよく混ぜておきます。
  2. フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。温まったらパンガシウスを並べ、焼き色が付くまで5分ほど焼きます。
  3. 裏返して蓋をし、さらに3分焼きます。
  4. 蓋を外し、鍋肌から[タレパート]を流し入れます。タレの泡が大きくなり始めたら、パンガシウスを時々返しながら絡めるように炒りつけます。水気がほぼなくなればできあがり。皿に盛って戴きます。

【一口メモ】

  • パンガシウスは、鰻の代替食品として注目されたナマズ科の魚です。正直、タレの味が濃いので「鰻の蒲焼きにそっくり」かは判じがたいのですが、身がふっくらしていて淡白。美味しいことは間違いなし。
  • タレに少量のマヨネーズとバルサミコ酢を加えると、味わいがマイルドになりコクが増します。バルサミコ酢の手持ちがなければ、普通の酢でもさっぱり風味に仕上がりますよ。
  • パンガシウスはクセがないので、焼き物以外に唐揚げにしても美味しいです。白身魚やハモの調理法が概ね合うので、献立のレパートリーは広め。しかも100gで98円くらいで売られているので、お財布にも優しいのです。

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