「不器用ですから……」
というのは高倉健さんのトレードマーク的なセリフですが、元ネタは日本生命のCMのようですね。
YouTubeで改めて拝見しましたが、本当にこのセリフが似合う人だよなぁとしみじみ思いました。

同じセリフを僕が言っても……
きっと「何言ってるんだ?」という顔をされちゃうんでしょうけど(笑)
健さんの人柄や演じた役柄から推して、彼が公私ともに“不器用だけど誠実で情熱的な人”であったことに異論はなく、僕としても共感しかありません。
ただ、「不器用ですから……」という言葉を耳にする度に少し“もやっ”とするのは、対極にいる「器用で世渡り上手な人」が、どこか侮蔑を含んだ目で見られている気がしてならないからです。

世間の人は“要領の良い生き方=ずるい生き方”と考えているんじゃないかしら。
俗に「器用貧乏」という言葉があります。
何でもそつなくこなせるのに、どれも中途半端で、一つのことを極めて大成しない――そんな意味ですね。
けれど、時にそれは「何をやっても(なかなか)巧くできない人」が抱く、ちょっとしたやっかみではないかなと思うことがあります。

「器用貧乏」の反対語は「一芸に秀でる」でしょうが、見方を変えれば別種の反対語もあると思います。
つまり、“器用貧乏”をネガティブワードと定義するなら、そのポジティブ側の語である「オールラウンダー」だって反対語になり得るわけです。
オールラウンダーとは、多方面で才能やスキルを発揮し、何でもそつなくこなす人。
日本語で言えば「八面六臂」ですね。

ただ、「器用貧乏」と「オールラウンダー」は“反対語”というより“表裏一体”。
視点をちょっと変えただけで、指している人物像は実は同じです。
健さんの“不器用”な生きざまに憧れる人は多いですが、もし「アイツ、ホント器用貧乏だから」と陰口を叩かれて落ち込んでいる人がいたら、僕はそんな彼の方を励ましたいと思います。
例えば──「いや、それ見方を変えれば“オールラウンダー”、つまり“万能選手”なんだから、もっと自分を誇っていいよ」と。

さて、料理の世界にもこの“オールラウンダー”的な万能選手はたくさんいます。
天ぷら、串カツ、鍋、カレー、お好み焼き、ピッツァ、グラタン、サラダ……

どんな具材でも不思議と違和感がない料理たちは、さしずめ料理界の万能選手でしょう。
その分、その料理の“本筋”や“王道”が何かは意見が分かれるところですが。
もし、料理を擬人化したアニメがオンエアされ、大御所として「てっさ」や「鰻の蒲焼き」のような具材の代替が利かない"一芸に秀でた料理"が幅を利かせていたら……。

そして、彼らがオールラウンダーの鍋料理やカレーをいじめていたら……。
僕は絶対、鍋やカレーの肩を持つだろうな――
なんて、ヘンテコなことを、間違いなくオールラウンダー枠に入る“燻製料理”を作りながら考えておりました。
【材料】(1人分)
-調理時間:(燻製まで)120分、(燻製後風味を馴染ませる時間)1日-
- 鮭の白子:1腹
- 塩:9g(大さじ1/2)
- 桜チップ(燻製用):大さじ3
【作り方】
- 鮭の白子に塩をまぶして皿に載せ、冷蔵庫で30分休ませます。
- 白子を茹でる湯(分量外)を小鍋に沸かします。待っている間に流水で白子を洗います。湯が沸いたら白子を入れ30秒茹でます。これを流水で洗って急冷します。爪楊枝で血合いを取ります。
- キッチンペーパーで白子の水気をふき取ります。白子を一口大に切って、皿に載せてラップをかけずに冷蔵庫に入れ1時間放置して乾燥させます。
- 燻製鍋の底にアルミホイルを敷いて桜チップを重ならないように敷き詰めます。網の上にアルミホイルを船形に整形したものを載せ、その中に白子を並べます。蓋をして中火で15分燻製したら火を止めます。そのまま蓋を取らずに一晩放置すればできあがり。
【一口メモ】
- 噛みしまりがあり、口の中にサクランボのような香りが広がります。これは他の白子料理 とは“異次元の別物”。良い肴になりますが、意外と子どもも喜びそうです。
- 燻製鍋を前提としたレシピですが、中華鍋と中ほどで止まるサイズの焼き網(おそらくキャンプ用品売り場で見つかります)、しっかり密閉できる鍋蓋があれば代用可能です。とはいえ燻製鍋自体数千円で手に入り、コスパが良いので、燻製好きの方は持っておいて損はありません。
- 燻製後、焦げていない桜チップはアルミホイルに包んで保存できます。次回、続けて使えます。

