豚肉の唐揚げと聞くと浦沢直樹のマスターキートンのエピソードを思い出します。
ロンドンにある中華飯店。
その店の料理はどれも絶品なんだけど豚の唐揚げは別格。
どうやったらあんな味が出せるのかというのは謎に包まれていました。
ひょんなことからその店の見習いコックと店長の娘の恋路を助けることになった主人公がそのレシピの秘密に迫ります。
ネタバラシをしてしまうとその唐揚げのレシピの秘密とは……
隠し味に入れたウィスキーを使っていること。
これを少し加えるだけで衣が格段に香ばしくなると表現されていました。
で、僕も試してみましたが正直びみょー(笑)。
揚げ物の温度は高温ですからウィスキーの風味って飛んじゃうんですよね。
ただ、作劇上は非常に巧い演出だったと思うのです。
中国生まれの唐揚げとイギリス生まれのウィスキーの好相性(マリアージュ)。
それぞれ単独ではありえない味が生まれるというのは、中国生まれの娘とロンドン生まれの見習いコックの恋の行く末を粋に暗示しています。
過日、「異世界居酒屋のぶ」でその懐かしい豚の揚げ物に出会いました。
店の入口が中世ヨーロッパ風異世界につながってしまった日本の居酒屋。
そこの店主に弟子入りした異世界の青年が店主から一つの課題を渡されます。
豚肉を使って今夜出す1品を作ってみろ。
店主は彼が揃えた食材から豚のしょうが焼きを作るのだろうと想像していたのですが彼が作ったのは生姜焼きの下味を付けた竜田揚げでした。
その発想は正直なかった──と店主は感心します。
豚肉に生姜とくれば僕らはどうしても生姜焼きを思い浮かべちゃいますが和食に疎い異世界の青年だからこそ思い付けた自由な発想──豚肉の下味に異国の酒のウィスキーを使うというアイデアにどこか相通ずる物を感じました。
【材料】(2人分)
-調理時間:40分-
- 豚ヒレ肉:200g
- 片栗粉:適宜
- 揚げ油:適宜
[つけダレパート]
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 酒:15g(大匙1)
- おろし生姜:ひとかけ分
【作り方】
- 豚肉は1cm厚の小口切りにします。これをビニール袋に入れて[つけダレパート]を加え空気を抜いて口を結び30分漬け込みます。
- 揚げ油を180度に温めます。待っている間に1.をザルに揚げて水気を切り片栗粉をまぶします。
- 揚げ油が温まったら豚肉の半量を入れます。10秒揚げたらかす揚げで掬って10秒空気に晒すという手順を3分繰り返せば揚げ上がり。残り半分を同じ手順で揚げます。 ※一度にたくさん投入すると油の温度が下がってしまいますので2度に分けて揚げましょう。
【一口メモ】
- にんにくは使わず生姜風味の醤油味。めっちゃ病みつきになる揚げ物ですよ。
- 表面はサクサク中はしっとりに仕上がりました。コツはこまめに空気に晒しながら揚げること。面倒でもこの手順は守ってください。
- 肉の部位は柔らかいヒレ肉がオススメ。けど他にももも肉(酢豚用に切ってあるやつが楽ちん)やロース(とんかつ用のお肉をカットすれば簡単)でも美味しくできます。