坂本九が歌った「上を向いて歩こう」は日本でも大ヒットした楽曲ですが、欧米でのヒットもすさまじかったようです。
アメリカでは1963年にBillboardHot100(アメリカを代表する楽曲人気チャート。日本では「全米チャート」と言われることもあるやつです)で3週連続1位になったとか。

ただし曲のタイトルは「SUKIYAKI」に改名。
元のタイトルが長ったらしくてわかりにくいということと、いかにも日本らしいタイトルの方が覚えてもらいやすいだろう──
なんて理由で付けられたそうなのですが、ひっくり返して言うと「上を向いて歩こう」がアメリカに上陸するよりずっと前から、「すき焼き」という日本食を多くのアメリカ人が知っていたということなんですよね。
いや、「知っていた」なんて生易しいものではありません。
当時のアメリカはちょっとした日本食ブームで、その代表選手としてすき焼きは大人気だったのだとか。

「テーブルに置かれた鍋に肉を入れて、客が自分で焼くんだぜ」
ステーキにしろハンバーガーにしろ、店員が調理してくれたものを食べるのが当たり前だった彼らにとって、そのスタイルは珍しくエキゾチックに映ったのかも──
ブームの原因についてそんな考察をする人もいるみたいです。
そこまで忠実に食べ方を再現しているのだったら、生卵はどうしていたんだろう?──なんて興味が湧いてきます。

気になったのでちょっと調べてみました。
「それはさすがに気持ち悪い」とか衛生面を気にする人もいて、溶いた卵に肉を浸けて食べるのにはかなり抵抗があったようです。
反面、「その方が本式だ。味がマイルドになる」と通ぶる人もいて、生卵を使う派の人も案外いたとか。
その食への探求心には敬意を表します。

「いや、すき焼きに生卵は必須でしょ」なんて軽々しく言うなかれ。
僕らだって、「旨いカエル料理を食べさせてくれる店があるんだ」とか「今度、カタツムリを食べに行こうよ」なんてフランス人に誘われたら、ちょっと尻込みしませんか?
彼らにとってそれらは食べ慣れたものなので、僕らが何を躊躇しているのか不思議に思うかもしれませんね。
くだんのすき焼き(牛鍋)だって、明治初頭の人々にとっては箸を伸ばすのにかなり勇気がいる料理だったと思います。

今日のレシピに出てくる鯨肉にしてみてもそう。
僕ら日本人以外でも、イヌイットや北欧、ロシアの一部の民族では食べられているようですが、それ以外の欧米人にとっては未知の食材です。
実際に食べてもらえば美味しいと分かってもらえると思うのですが、おすすめするにはひと工夫必要です。
工夫のひとつとして、ステーキなど彼らが食べ慣れた洋食に仕立てるというやり方もあるでしょう。

もうひとつの方法は、彼らが既に馴染んでいて美味しいと知っている日本食にしてしまうことかな。
寿司や刺身が好きな人なら、きっとこの丼も抵抗なく食べられるんじゃないでしょうか。
【材料】(1人分)
-調理時間:20分-
- ご飯:1膳分
- 鯨肉(生食用):100g
- 玉ねぎ:1/4個
- 卵黄:1個
- 薬味:炒りごま、刻み葱、焼き海苔などお好みで
[タレパート]
- 濃口醤油:18g(大さじ1)
- 味醂:6g(小さじ1)
- ごま油:4g(小さじ1)
- マヨネーズ:6g(大さじ1/2)
- 豆板醤:3g(小さじ1/2)
- おろしにんにく:ひとかけ分
- おろし生姜:ひとかけ分
【作り方】
- 玉ねぎはスライスして10分空気にさらします。鯨肉は薄くそぎ切りにします。
- [タレパート]を器に合わせてよく混ぜます。これに鯨肉を加えて冷蔵庫で15分漬け込みます。玉ねぎを空気にさらす工程が完了したら、これに加えて一緒に漬け込みます。
- 丼にご飯をよそい、その上に2.を盛り付けます。中央にくぼみを作って卵黄を載せます。最後に、薬味を散らせばできあがり。
【一口メモ】
- 牛肉のユッケ丼に近い味付けにしました。
- [タレパート]を合わせるのが面倒だなという方は代わりに焼肉のタレで漬け込んでもOKです。ちょっと甘めのテイストになりますが、美味しいですよ。
- 山葵や柚子胡椒を添えて味変を楽しむのもあり。風味がさっぱり系に変化するので面白いですよ。
- 余った卵白は鶏がらスープの素をベースにしたスープに加えて具材にするのがおすすめです。

