店の入り口が中世ヨーロッパ風の異世界に繋がっている不思議な居酒屋を舞台にした物語「異世界居酒屋のぶ」にこんなエピソードがありました。
「シュニッツェルを頼みたい」店に来た貴族にそんな注文を受けて店主は困惑します。
聞いたことがない料理──けど俺は料理人だ。
どんな料理かさえわかれば必ず作れる。
彼はホールを任せているしのぶ(本作のヒロイン)に店を任せて異世界の街中に飛び出していくのでした。
ネタばらしになりますがシュニッツェルとはいわゆるカツレツのこと。
待たせている貴族にしのぶが出したまかないのカツサンドが図らずも的を射ていたという結末を迎えます。
現実の世界でも似た料理なのに国によって別の名前で呼ばれているものがあります。
例えばイギリスの伝統料理である「シェパーズパイ」。
炒めたひき肉の上にパイ生地の代わりに茹でて潰したジャガイモを被せて焼いた料理です。
これと似た料理は世界のあちこちにありまして──アメリカでは「カウボーイパイ」と呼ばれています。
カナダのケベック州では「パテシノワ」。
フランスでは「アッシェ・パルマンティエ」。
ヨルダン、シリア、レバノン、パレスチナでは「キッベ・バタタ」。
ロシアでは「カルトーフェリナヤ・ザペカンカ(ポテトグラタンという意味のロシア語)」。
内容は多少違えどほぼ同じ料理がいろいろな名前で呼ばれています。
で、いずれの国でも「おらが国の伝統的な料理だべ」と思っている節があるのです。
なんで水戸黄門でもおなじみの本家、元祖争いみたいになっているんだろうと不思議に思ったことがあるのですがこういうことかもしれません。
この料理で使う材料は家畜の肉とじゃがいも、牛乳、バター。
いずれも牧畜をやっている農家でまるっと手に入るものばかりです。
つまり農家の人たちが手近な材料で料理を拵えたら図らずも似た料理になってしまった──なんかシュニッツェルが何か知らずにカツサンドを出しちゃったというエピソードと似たことが起こったんじゃないのかしらん。
ま、人間が考えることはオリジナリティがあるようで根っこでつながっているのかもしれませんね。
ちなみにイギリスの「シェパーズパイ」のシェパーズは羊飼いの意味。
まんま牧畜がルーツになっているよと示唆してくれています。
過日、冷蔵庫にあったジャガイモとチーズを豚肉で巻いてこんな料理を作ってみました。
この料理だって──世界のどこかの農家で「おらが国の伝統的な料理だべ」とか言いながら食べている人がいるかもしれません。
あ、醤油味ではないか。
たぶんw
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- じゃがいも:1個
- 豚バラスライス(長さ20cmくらいのやつ):3枚
- スライスチーズ:1枚
- サラダ油:4g(小匙1)
[調味料パート]
- 濃口?油:9g(大匙1/2)
- 酒:7.5g(大匙1/2)
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:5g(大匙1/2強)
【作り方】
- じゃがいもは皮を剥いてくし形に6等分します。これを電子レンジの500ワットで1分半チンします。豚バラスライスはそれぞれ2等分します。スライスチーズは6等分します。
- まな板に豚肉を置いてじゃがいも、スライスチーズを載せくるんと巻きます。これを6個作ります。
- フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これに2.を巻き終わりを下にして並べて置いて1分半焼きます。肉を転がしていきまんべんなく焼き色を付けます。
- 3.に[調味料パート]を加えて絡ませながら水気がなくなるまで焼けばできあがり。
【一口メモ】
- 定番の照り焼き風甘辛味。王道ですが美味しいですよ。冷めても美味しいのでお弁当のお惣菜にもおススメです。
- なんか冷凍食品にありそうな料理ですね。買うとけっこう高いですが実は冷蔵庫にあるものでわりと簡単に作れたりするのです。
- お好みでブラックペッパーや粉山椒を振ると風味が変わってまた楽しいです。