一休さんといえばとんちで有名な室町時代のお坊さんです。
特によく知られているのはテレビアニメにもなった子供時代の話ですよね。
そんなエピソードの中に水あめの話がありました。
和尚さんが町の人から水あめをもらってくるのですが小僧たちが欲しそうにすると
「これは大人には薬になるが子供には毒だ。けっして食べてはいけない」と釘を刺されてしまうのです。
もちろん本当は毒などではないと知っている一休さんは和尚さんの留守に小僧たちと分け合って水あめを全部食べてしまいました。
空になったツボを見て青ざめる小僧たちをしり目に一休さんは和尚さんが大事にしていた茶碗を割ってしまいます。
で、和尚さんが帰ってくると……
「申し訳ありません。和尚様の茶碗を割ってしまいました。死んでお詫びしようと水あめを食べたのですが──」
なんて言い放ちます。
なんかヤな子供だな……
というか元はと言えば水あめを独り占めしようとした和尚さんが悪いのですがそこまでやるかと思っちゃいますw
ま、これは後からこしらえられた創作ばなしじゃないかなと思うのですが実際にこの和尚さんと同じことをはばかりなく公言した偉い人がおりました。
それは……徳川の将軍様。
近江牛の味噌漬けを大変気に入ったのですが仏教では4つ足の動物の殺生は禁じられているので公然と欲しがるのは憚られる。
そこで「これは料理じゃなくて薬なのじゃ」なんて子供みたいな言い訳を考えたとか。
江戸時代、庶民も案外に獣肉を食べることはあったようですが仏教の禁忌に触れるので似たような詭弁がよく使われました。
その最たるものは料理のネーミング。
馬肉、鹿肉、猪肉などとダイレクトに言わず符丁で桜、紅葉、牡丹なんで言い換えた。
それらを使った鍋料理が桜鍋、紅葉鍋、牡丹鍋になります。
(宗教的に)悪いことをしているには違いないのですがそれでも風流なネーミングを付けるあたり当時の庶民の粋を感じますね。
なあんてことを考えながらその猪の改良品種である豚肉を使って牡丹鍋風の料理を作ってみました。
うん、無理を圧してでも食べたくなるご先祖様の気持ちはよくわかる美味です。
【材料】(1人分)
-調理時間:21分-
- 豚バラ肉(焼き肉用):100g
- 野菜類:白菜、椎茸、水菜、ごぼう、大根、人参、えのき茸などあり合わせで適宜
- (あれば)焼き豆腐:1/4丁
- 粉山椒:少々
[煮汁パート]
- 水:200g(カップ1)
- 鰹出汁の素:小匙1/2
- 味噌:36g(大匙2)
- おろし生姜:ひとかけ分
- おろしにんにく:ひとかけ分
【作り方】
- 豚肉、野菜類は食べやすい大きさに切ります。ごぼうは5分間、水(分量外)に晒してアクを抜きます。豆腐は1.5cm角くらいの賽の目切りにします。
- 鍋(あれば土鍋)に[煮汁パート]を入れて中火にかけ沸騰寸前で火を止めます。白菜、ごぼう、人参など火の通りにくい野菜をまず入れて蓋をし、弱火で10分煮込みます。
- 残りの野菜と豚肉を入れて3分ほど煮込みお肉の色が変わったらできあがり。
【一口メモ】
- 元々は野生の猪(雑食なので臭みがある)を主食材とする前提の料理なので味噌、にんにく、生姜などを使って臭み消しをする工夫がされています。豚肉を使う場合はあまり意味がないのですがワイルド感は楽しめますね。
- この牡丹鍋が改良されて豚汁になったという説もあります。なので野菜類は豚汁に使うものならだいたい合います。ただそれをやっちゃうともはや牡丹鍋ではなく豚汁な気もするのですがw
- 味噌はけっこう濃い目の味になる分量にしてあります。野菜をたっぷり使って水気をしっかり出させて丁度良い感じかな。