そのスープは「秘密」でできている──なんて書くと新刊書の帯に書かれたフレーズめいて聞こえますがスープは秘密主義的な料理だなと思う時があります。
例えばステーキ。
その皿を見れば誰だって肉を焼いた料理だなとわかります。
味付けは塩、胡椒かなと想像もつきます。
そう何の秘密もないとってもオープンなスタンスの料理なんですね。
天ぷらも、牛丼も、ハンバーガーも見ればだいたい何が使われているかわかりますし、見てわからなくても一口食べれば「あ、マヨネーズを肉に塗ってある」とか「アボカドを細かく刻んで挟んでいるんだな」なんて気づけます。
だって個々の食材も調味料も個々のまま入っているから。
ところが──スープは秘密に満ちている。
何が使われているのか何が入っているのかわからない。
目に見える具材はあるけれどそれ以外にも食材が煮潰されて溶け込んでいるかもしれない。
すりおろした食材が加えられているかもしれない──それを口にしても容易に使われている食材を言い当てられない可能性を秘めているのがスープという料理なのです。
ま、だからといって得体が知れないと恐れる必要はありません。
迷い込んだ森の奥の一軒家で怪しげなおばあさんが出してきたスープなんてシチュエーションだったら十分警戒すべきでしょうw
けど、夕飯にお母さんが出してきたスープ。
レストランで供されたスープにおかしなものが入っているはずもなし。
その秘密めいたたたずまいはむしろワクワクとした高揚感と期待感で迎えて良い一皿だと思います。
作る側の視点に立てば中身が分かりにくいスープは仕掛けを施しやすい料理です。
一見、何の変哲もないポタージュスープと見せかけて実は……このレシピのような遊び心あふれるいたずらを潜ませているかもしれませんよ。
【材料】(2人分)
-調理時間:12分-
- 椎茸:2本
- 玉ねぎ:1/4個
- じゃがいも:小1個
- オリーブオイル:12g(大匙1)
[スープベースパート]
- だし汁(昆布出汁):200g(カップ1)
- 豆乳:200g(カップ1)
[調味料パート]
- 濃口醤油:9g(大匙1/2)
- 塩:1g
- ホワイトペッパー:少々
【作り方】
- 椎茸はスライスします。玉ねぎはみじん切りにします。じゃがいもは皮を剥いておきます。
- 小鍋にバターを入れて中火にかけ溶けだしたら玉ねぎ、椎茸を加えて1分炒めます。これに[スープベースパート]を入れてひと煮立ちさせて一旦火を止めます。これにジャガイモをすりおろしながら加えます。
- 2.の鍋を再度弱火にかけ蓋をせずに時々かき混ぜながら5分煮ます。じゃがいものでんぷんでとろみが付きます。 ※吹きこぼれに注意しましょう。
- 3.に[調味料パート]を加えてさっとまぜればできあがり。味を見て薄いようなら塩、ホワイトペッパーで整えてください。
【一口メモ】
- 滋味豊かな味わいのスープです。昆布出汁と椎茸の相性は抜群ですね。豆乳の優しい甘みも嬉しいです。
- 一見、何の変哲もないポタージュスープに見えますが動物性のものは一切使っていません。出汁は昆布出汁。牛乳の代わりに豆乳。バターの代わりにオリーブオイル。そしてとろみづけはホワイトソースではなくじゃがいものでんぷん。種明かしをすれば家族が驚くこと間違いなしです。
- 茸は椎茸以外にマッシュルームも合います。醤油を使って和風に寄せていますが洋風がお好みなら醤油を外して塩で味を加減するのもありです。