過日、日本人の食生活が1日2食から3食に変わった一因は江戸時代にあった明暦の大火にあると思うという話を書きました。
復興作業に従事した職人たちに昼食を振舞ったことで朝と夜の間にもう1食摂る習慣がついたと。
それ以外にもうひとつ、1日3食になった原因と思われるものがあります。
それは菜種油の普及。
それがもたらす灯りが人々が起きている時間を長くしたのです。
それまでは日が落ちればあたりは真っ暗闇。
起きていても何もできないので人々は日が昇れば起きて暮れれば寝る生活でした。
菜種油は「夜はまだまだこれからだぜ」という生活を与えてくれたと言えます(ま、高価ではあったので庶民にいきわたったわけではないのですが)。
で、起きているとお腹が空く。
お腹が空くと何か食べたくなる。
今までは日が落ちる前に食べていた1食以外に夜になってから食べるもう1食が増えたと言われています。
菜種油がもたらしてくれたものは灯りだけではありません。
それは──揚げ物。
江戸後期、文化文政時代になると天ぷらの屋台が登場して庶民たちの間で人気を博しました(ま、この頃使われた油はごま油の方が主流でしたが)。
目新しさだけでなく、揚げ種の種類の豊富さが飽きが来なかった理由じゃないかな。
肉食文化が定着する前の時代、油を含んだ衣をまとわせた野菜や芋は煮物や焼き物より腹持ちも良く満足感が高かったんじゃないかとも想像できます。
更に言えばサクサクとした食感も煮物、焼き物では得られないもの。
当時の人たちにとって天ぷらをはじめとする揚げ物は超ナウい食べ物だったんじゃないでしょうか。
【材料】(1人分)
-調理時間:7分-
- 山芋:4cmほど
- 片栗粉:適宜
- 揚げ油:適宜
[つゆパート]
- かつおだし:100g(カップ1/2)
- 濃口醤油:6g(小匙1)
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 塩:1g(小匙1/6)
- おろし生姜:ひとかけ分
【作り方】
- 揚げ油を170度に温めます。待っている間に山芋は皮を剥いて7mmの輪切りにし片栗粉をまぶします。油が温まったら山芋を入れて3分揚げて油を切ります(山芋は途中でひっくり返しましょう)。
- 1.の揚げあがりを待つ間に[つゆパート]を小鍋に合わせてひと煮立ちさせます。
- 深めの器に1.を入れ2.を注げばできあがり。冷めないうちに熱々を戴きましょう。
【一口メモ】
- 山芋は外はサクサクで中はほっくほくに仕上がります。この食感は揚げ物ならではですね。はんなりと優しい味のつゆが衣に沁みてめっちゃ旨いですよ。
- つゆの味付けは醤油を控えて塩で味を加減するのがコツです。[つゆパート]
- の量は少ないのでうっかりすると濃い味になりがち。味見をしながら慎重に整えてください。
- 他の料理にかまけて山芋が冷めてしまった場合でも煮立たせたつゆをかければ熱々を楽しめます。ただの天ぷらと違って揚げ出しだからこそできる技ですね。