かつて黒沢明とロス・プリモスという日本のムード歌謡を代表するグループがおりました。
このグループのデビュー曲「ラブユー東京」は最初、デビューシングルのB面曲だったのですが知名度が上がるにつれてA面に昇格。
たいそう売れたそうです。
この楽曲がリリースされた1966年から丁度20年後、土曜の夜に「オレたちひょうきん族」というお笑いバラエティ番組が爆発的なヒットを飛ばしておりました(ちなみに僕は当時大学生で毎週楽しみに観ておりました)。
その1コーナーに「ラブユー貧乏」というのが新設されました。
明石家さんまのMCで芸人たちがかわるがわる貧乏ネタを披露するという趣向だったのですがそのバックコーラスとして本家ロス・プリモスが生歌で「ラブユー東京」の替え歌を歌うというのがぶっ飛んでいて面白かったです。
よくOKしてくれたよなぁ。
紹介される貧乏ネタはけっこうどれも面白かったのですが印象に残っているのはこれかな。
「みなさん、……缶詰の蓋で舌を切ったことがありますか」
いや、この短いフレーズで何が起こったか、その光景がありありと浮かんでくるのはけっこうずるくないですか?
テレビの前で大爆笑してしまいました。
ま、これは芸人さんのネタなのですが、リアルでも人には自虐指向というか自虐願望というものが少なからずあって「俺はこんなにダメダメなんだ」とか「俺はこんなに貧乏なんだ」なんてことを自慢げに語りたがる願望を持っている気がします。
そういえば、とある社長さんが書いた「僕は学生時代、貧乏でね」なんて書き出しで始まるエッセイを社会人になりたての頃に読んだことがあります。
「肉を食べたいけど高くて買えない。肉屋のショーケースの隅に1袋50円で売っていた鶏の皮をたまに買うのが最高のぜいたくでね。ししとうと一緒に炒めて塩を振って食べたもんさ」
なんて書いてありました。
正直、社長さんの貧乏自慢はどうでも良かったのですが鶏皮とししとうの炒め物は妙に美味しそうだったので後に試作しましたっけ。
過日、ししとうオンリーのこんな皿を夕飯に作りました。
で、もしかして──この社長さんは学生時代、お金がない時はししとうオンリーでこんな料理を作ったりしてたんじゃないかな……なんて勝手な想像を巡らせたりしておりました。
【材料】(1人分)
-調理時間:4分-
- ししとう:8本
- サラダ油:8g(小匙2)
- 鰹節:ふたつまみ
- 塩:ひとつまみ
[煮汁パート]
- 蕎麦の本返しまたはめんつゆ:小匙2
- 水:大匙1
【作り方】
- ししとうはヘタを切り落とします。冷たいフライパンにサラダ油を入れてししとうを加え転がして全体にサラダ油をまぶします。
- 1.に塩ひとつまみを振って中火にかけ約2分、ししとうの表面に白い焼き色が付くまで炒めます。
- 2.に[煮汁パート]と鰹節を加えてひと煮立ちさせたら火を止めて小鉢に移します。これを氷水を張ったボウルに浸けて急冷すればできあがり。
【一口メモ】
- 3.の工程で急冷することで鮮やかな緑を保つので(色止めという技法です)見た目が美味しそうに仕上がります。ししとうのキリッとした辛味がまた旨い。良い箸休めになりますよ。
- 煮びたし、揚げびたし同様に焼きびたしは季節の野菜を焼いて香りを出し、薄めのだし汁(浸し地)でさっと煮た料理です。基本的に脇役として扱われる料理ですが主菜をぐっと引き立ててくれる1品なので知っておいて損はありません。
- 食材はししとうに限らず焼き野菜になるものならなんでもOK。できるだけ旬の素材を使いましょう。
- 時間に余裕があれば3.の工程で粗熱を取った後、冷蔵庫で小一時間寝かせておくと味が良く沁みて更に美味しくなります。
- 近頃の冷蔵庫には熱いままご飯などを入れて急冷する機能を持つものもあります。その機能を使えば3.の急冷の工程はグンと楽ちんになりますよ。