僕の馴染みの焼鳥屋のご主人はちょっと変わった経歴の持ち主です。
大学は理学部数学科を卒業……
したと思ったら単身オーストラリアに渡って3年近く料理店でアルバイトをしていたらしい。
その後、すかいらーくの工場長やら和食のさとの料理長などを遍歴し貯めたお金で焼き鳥屋を開業したそうな。
そのお店も2024年で25周年目。
すっかり老舗の域に達したなぁ。
今から10月の開業記念イベントが楽しみです。
彼がすかいらーくの工場に勤めていた頃に出荷先のファミレス(=すかいらーく)からこんなクレームの電話が入ったことがあったそうです。
「あの、今日の里芋から芽が出ているとお客様から苦情が入っているんですけど」
一瞬何を言われているのかわからなかったらしいのですが、合点が言った途端さすがにその電話の相手を叱ったそうです。
「お客様が知らないのはしかたがない。けどいやしくも飲食業に勤める人間ならクワイくらい知っとけ」
丁度お正月の時期。
お客様が里芋と思ったものはお正月メニューに使ったクワイだったんですね。
クワイは丸いフォルムは里芋に似ていますが全然別の野菜です。
特徴的なのは長く伸びた芽。
あれを見れば知っている人は「あ、クワイだ」とわかっちゃうはずなのです。
ちなみにおせち料理に入れる意味は芽が出ているので「芽出たい」という縁起担ぎだそうです。
クワイに限らず昔は普通に食べていたけれど今はあまり食べられなくなったものってありますよね。
というかすっかり忘れられてしまっていて久しぶりに見ると「そういえばあったなぁ」なんて言ってしまいそうなやつ。
僕らが今時夕飯に使う肉や野菜の種類が今では極端に少なくなっている気がするんですよね。
料理のレパートリーも肉なら焼き肉、魚なら刺身、野菜ならサラダしか思い浮かばない人がいそう。
昔は当たり前に食卓に上っていた料理でもいつのまにやら忘れ去られて時の彼方に焼失してしまったものもたくさんありそうです。
高野豆腐などもその一つ。
今でもスーパーなどで売られていてお値段もお財布に優しい価格帯なのですがあまり手に取っている人を見かけません。
けど高野豆腐で作るお惣菜のレパートリーが豊富だと諸物価高騰の昨今、強い武器になるのは間違いありません。
なんてことを考えながら久しぶりに高野豆腐を買ってきました。
ついでに乾燥ひじきも使って星一徹がひっくり返したちゃぶ台に載っていそうなこんなお惣菜を作ってみましたよ。
【材料】(1人分)
-調理時間:35分-
- 高野豆腐:10g
- 乾燥ひじき:10g(生ひじき大匙2でも可)
- 人参:1/4本
[煮汁パート]
- 鰹出汁:100g(カップ1/2)
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 砂糖:6g(小匙2)
- 味醂:6g(小匙1)
【作り方】
- 高野豆腐と乾燥ひじきは別々の器で水に20分浸けて戻します。高野豆腐は戻ったら1cm角の賽の目に切ります。人参は細切りにします。
- 1.フライパンを中火にかけます(油は入れません)。これに高野豆腐、ひじき、人参を加えて1分炒めます。
- 2.に[煮汁パート]を加えてひと煮立ちさせます。火加減を弱めの中火にして煮汁がほぼなくなるまで煮詰めればできあがり。
【一口メモ】
- なんか昭和の頃なら給食のおかずにでも出てきそうなお惣菜です。その頃小学生だった僕らの世代からするとなんだかノスタルジックなテイストだな。
- 栄養価も高く腹持ちも良いのが特徴です。お肉に飽きたらこういうのもありだと思います。
- やっぱりお肉が欲しいなという方にはひき肉をプラスするのをおススメします。工程2.で先に豚ミンチを炒めてから残りの材料を加える手順にしてみてください。
- あと細切りのこんにゃくを加えるとより昭和のお惣菜感が出せて楽しいですよ。