ジャンクフードはいずれ高級化する──そんな話を過日娘としました。
例えば寿司や天ぷらは黎明期の江戸末期には安いことが身上の庶民が食べるファストフードでした。
それをどこかの商売人が金持ち相手の商売にするために後付けで作法やら意味付けやらして1席1万、2万は当たり前のドン引きするような高級料理に仕立て上げたのです。
おせち料理も食積とか鳳来と言われていた太平洋戦争前までは昆布や干し柿などの乾物が中心の地味なものでした。
それが高度成長期に百貨店がこぞって豪華絢爛な料理をお重に詰め合わせた「おせち料理」を販売(そう「おせち」と呼ばれるようになったのは太平洋戦争が終わった後の話です)。
今ではおせち料理は高価なものというのが常識になっちゃっています。
ラーメンだって元は1杯が100円、200円の庶民の食べ物だったはずなのですがいつのまにやら千円前後が当たり前になっちゃいました。
もちろん高級化されたと言っても値段だけが上がったわけではなくその値段に見合うだけの素材、調理技術が投入されていて安さがウリの頃とは味のクオリティも跳ね上がっています。
けどね……
「そこまで頑張らなくて良いから安くしてほしいな」と思うのもまた人情。
そんな思いに呼応する形で高いお店と思われていた寿司屋から「どれでも1貫100円」なんて低価格がウリの回転寿司屋のような業態が登場しました。
原点回帰というか歴史は巡るというべきか。
ジャンクフードはいずれ高級化するけど高級なのが当たり前と認知されると今度は価格破壊が起きる──ということですかね。
その回転寿司屋がまた値上がりして普通のお寿司屋さんのランチサービスの方が安いなんて逆転現象が起きているのはなんとも皮肉な話ですが。
ラーメンもたまにはとことん拘り抜いた一杯を食べたいこともある。
けど普段は気軽に立ち食い蕎麦感覚で食べられる一杯で十分──そう思う人は案外多いのではないでしょうか。
という思いを込めてこんなラーメンを作ってみました。
歴史は繰り返す。
遠からずラーメン業界にも価格破壊の波がやってくるんじゃないかなと熱く期待しております。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- 棒ラーメン:100gまたは生ラーメン1玉
- 薄揚げ:1/4丁
- 野菜類:人参、小松菜、白ネギ、椎茸など煮物にできそうな野菜なら何でも。
[スープパート]
- 昆布出汁:300g
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 味醂:18g(大匙1)
- 酒:15g(大匙1)
- 砂糖:9g(大匙1)
- 蕎麦の返しまたは麺つゆ:大匙1
- 鶏ガラスープの素:小匙1
- 鷹の爪:半本または豆板醤6g(小匙1)
【作り方】
- [スープパート]を小鍋に合わせてひと煮立ちさせます。待っている間に薄揚げは5mm幅の小口切りにします。野菜類は食べやすい大きさに切ります。
- 1.の小鍋に薄揚げ、野菜類を入れて中火で10分煮込みます。
- 2.の工程完了時間に終わるように逆算して麺を茹でます。
- 茹で上がった麺をざるに揚げて湯切りし丼に移します。これに煮立った2.を注げばできあがり。
【一口メモ】
- ほっこり甘い煮物風味のラーメンです。後から鷹の爪の辛さがピリリと利いてくるのが楽しいですよ。
- [スープパート]で使われている調味料を見ればわかる通りこの料理の原型は野菜の煮物。なのでスープの味はラーメンらしからぬテイストなのですがなぜかほっこり落ち着きます。良い年のおっさんになるとこういうお惣菜的なテイストが嬉しくなるんですよね。
- 京都のおばんざいに着想を得ているので肉は使っていませんがお好みで[スープパート]鶏もも肉を加えて一緒に煮ても楽しいですよ。
- [スープパート]の調味料の配合は自由度が高いように設定しています。普通のお惣菜同様に味を見ながら自分好みに調整してください。