僕がMIXIにレシピを書き始めたのは2008年のことですが、それ以前は自前のホームページを作ってそこにレシピを載せていました。
なんか、"ホームページ"というワードに時代を感じますね。
どうせ誰も読んでいないだろうと高をくくっていたのですが、ある日、NHKから電話がありまして、朝の生活ホットモーニングに出演してレシピを紹介してもらえませんか、というオファーを戴きました。
って、天下のNHKさんが僕のホームページを見てくれていたんかい!……、ちょっと嬉しい。
レシピ紹介のテーマは"節約料理"ということだったので、生姜ご飯と鰻丼炒飯をチョイスして生まれて初めてのテレビ出演に臨みました。
生姜ご飯は、お寿司のパックに付いてくる紅生姜を細く刻んで具なしの炊き込みご飯を作るというもの。
どこの家でも冷蔵庫の隅の方にあの紅生姜の入った袋が転がっているものです。
鰻丼炒飯は卵オンリーの炒飯を作って鰻の蒲焼きに付いてくる鰻丼のタレで味付けしたもの。
中華鍋で適度に焦げたタレが香ばしい1品で、実にチープに、しかししっかりと鰻丼気分が味わえます。
振り返ってみると2品とも"節約料理"というテーマにマッチしていたなと改めて思います。
往々にして、時代がせちがらくなると、乏しい材料からでも発想をたくましくしてこういった"貧相だけど美味しい料理"のアイデアを思い付く人が出てくるものです。
以前、この日記でも紹介した"ソーライス"は百貨店の食堂でライスだけ注文して、テーブルに備え付けのウスターソースをかけて食べる料理とも言えないもの。
昭和の初め頃にサラリーマンの間で流行って、百貨店も対応に悩んだみたいですね。
どこかの社長が学生時代を回顧したコラムで、肉屋で一番安い鶏の皮を買ってきて塩炒めしたのが好きだった、なんて書いていましたが、学生たちならこういった"貧相な節約料理"の引き出しをたくさん持っていそうです。
太平洋戦争後、横浜のホテルニューグランドはGHQに接収されたのですが、米兵たちが食べていたある料理が、当時の料理長の目を惹きました。
「スパゲティにケチャップをかけて食べている!」
ソーライスとどっこいだと思うのですが、具なしのスパゲティに彼らはトマトケチャップをかけて食べていたのです。
これをレストランで出せる料理にアレンジできないかと料理長は考えました。
まず、トマトケチャップをきちんとしたトマトソースに仕立て上げ、具なしは味気ないので、炒めたハム、ピーマン、マッシュルームなどを加えました。
こうして生まれたパスタ料理が"スパゲッティー・ナポリタン"。
もはや"貧相な料理"とは呼び難いものになっちゃいました。
けれど、その料理がその後、日本中の喫茶店や洋食屋のメニューに載って、多くの人に愛されるようになるとは──
その料理長も想像だにしなかったんじゃないかな(笑)
過日、ランチに炒飯を作ろうと支度していたのですが、「普通の炒飯じゃおもしろみがない!」という心の声が聞こえました。
そこで、思い付いたのが"この焼き飯をパスタに見立ててナポリタンを作ったらどうだろう"というアイデア。
ナポリタンの真骨頂はメイラード反応。
ソースを煮詰めて余分な水分を飛ばして焦げを作ることで酸味がまろやかになり、コクが増します。
こんなの鰻丼のタレ同様に……、いや、それ以上に旨いに違いない!
ということでさっそく、"ナポリタン炒飯"を試作してみました。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- ご飯:1膳分
- 卵:1個
- ベーコン:20g
- 玉ねぎ:1/8個
- ピーマン:半個
- サラダ油:12g(大さじ1)
- バター:5g
[ソースパート]
- トマトケチャップ:30g(大さじ2)
- 濃口醤油:9g(大さじ1/2)
- 酢:5g(小さじ1)
- おろしにんにく:ひとかけ分
[仕上げパート]
- コンソメスープの素(顆粒):2g
【作り方】
- ベーコンは5mm幅の細切りにします。玉ねぎ、ピーマンはみじん切りにします。卵はよく溶いておきます。[ソースパート]は合わせてよく混ぜておきます。
- 中華鍋かフライパンにサラダ油、バターを入れて強火にかけます。バターが融け切ってうっすら煙が立ち始めたら卵を投入します。ざっと卵をかき混ぜたらすかさずご飯を加えてよく和えながらパラパラになるまで炒めます。これを一旦、皿に取ります。
- 2.の中華鍋(またはフライパン)にベーコン、玉ねぎを加えて中火にかけ玉ねぎが透明になってベーコンに軽く焼き色が付くまで炒めます。これに[ソースパート]を加えて強火にし、ふつふつと煮立ち始めるまでそのままいじらずに加熱します。煮立ち始めから10秒カウントしたらピーマンを加えてざっと混ぜ、更にご飯と[仕上げパート]を加えて混ぜ込みながら40秒炒めればできあがり。
- この料理の要は[ソースパート]の焦げです。煮立ち始めからご飯投入までの時間が短いと十分焦げが作れません。逆に長いと焦げすぎて苦みが出ます。10秒を目安にして感覚がつかめるまで繰り返し練習してみてください。
【一口メモ】
- [ソースパート]のおこげが絶妙なアクセントになってヤミツキなる美味しさです。普通の炒飯に飽きたらぜひお試しあれ。
- スパゲティ・ナポリタンをモチーフにしてこのレシピは組みました。ただ、そのままでは甘すぎるので[ソースパート]には中華料理的なエッセンスを加えています。
- [ソースパート]の濃口醤油と酢の代わりに手持ちがあれば餃子のタレを小さじ2杯分、加えるとより中華料理っぽさが増します。