大昔、ヒトは一日の大半を食事に使っていた──なんて言われても、俄かに信じがたいのですが、どうやらその可能性は高いようです。
火の発見以前、当たり前ですが獣肉でも木の実でも全て食事は生食でした。
何もかもが硬くて、咀嚼だけで5時間くらいかかったと言われます。
5時間、もくもくと口を動かしている自分を想像すると……
いや想像しただけで、すでにうんざりしてしまいます。
だって食事は毎日するものですから、その"5時間の咀嚼"が死ぬまで毎日続くんですよ。
ヤダなぁ。
で、やっと咀嚼して飲み込むと今度は体内で消化されるのですが、これまた生なのでめっちゃ時間がかかった模様。
火の発見のありがたみを改めて実感します。
ならば火を発見した人類は生食から解放されたかというと一概にそうとも言えないようなのです。
だって、火を使って調理するというのがまた大仕事でしたから。
ガスコンロのつまみをひねったり、IH調理器のスイッチを押したらすぐに鍋を温められるなんて、夢のような生活を享受するようになったのは、たかだかここ数十年のお話。
それまでは火を熾すだけでも一苦労だったのです。
それに、いつだって火が使えたわけではありません。
ちょっと遠出すれば野宿になることもあったでしょう。
まさかキャンプ道具一式背負って移動するわけにもいきません。
それでもお腹は空くので、ついつい生で食べることになる──なんてことが往々にしてあったようです。
このように僕らの生活はごく最近まで生食と切っても切れない関係にあったのですが、では何を生食するかという食文化についてはお国柄があるようです。
その点、僕たち日本人の食文化は"生食大国"として広く世界に知られているようですね。
「知ってるか、日本人は釣った魚を生のまま食べるんだぜ」
「おいおい、そんなことしたら腹を壊すだろ」
「いやいや、俺はもっとすごい話を聞いたぞ──あいつら、ライスに生の卵をかけて食べるんだってさ」
「うげっ、考えただけで気持ち悪くなってきた」
今でこそ、認知が改まってきましたが、かつては外国人の間でこんな会話がなされていた気がします。
今ではアメリカやヨーロッパにだって寿司バーが当たり前に店を構えているようになりましたけどね。
反面、僕らの先祖には野菜を生食する文化がありませんでした。
経験上、回虫などの寄生虫に感染するリスクが高いことを知っていたので、火を通すのが当たり前になっていたみたい。
けれど、それ以前にそもそもサラダの文化がなかったんですよね。
僕らの食卓にサラダが浸透したのは東京オリンピック(1964年の方)以降と言われています。
僕はそのオリンピックの年の生まれなので、日本人の“サラダの歴史年表”を書いたら、僕の成長とぴったり重なりそうです。
たかだかまだ、61年なんだなぁ(笑)
それでも61年はそれなりに長い年月。
今では、こんな皿が夕飯に出て来ても驚く人はいなくなっているでしょう。
【材料】(1人分)
-調理時間:5分-
- トマト:半個(ミニトマト数個でもOK)
- 長芋:3cm程度
- 薬味:刻み海苔、炒りごま、大葉、茗荷、刻み葱など
[調味料パート]
- 塩:1g(小さじ1/6)
- 鶏がらスープの素:小さじ1/2
- 酢:7.5g(大さじ1/2)
- ごま油:2g(小さじ1/2)
- ホワイトペッパー:少々
【作り方】
- トマトはヘタを落として1cm角に切ります。山芋は皮を剥いて、1cm角に切ります。
- 器に[調味料パート]を合わせてよく混ぜます。これに1.と薬味を加えてさっと和えればできあがり。
【一口メモ】
- いわゆる無限系といわれる料理の一種です。一度箸を付けたが最後、器が空になるまで止まらなくなっちゃいますよ。
- 生食できる野菜と調味料だけで作れる料理なので、とにかくパパっと手早くできます。火が使えない環境でも美味しくできちゃうところも嬉しいですね。
- 薬味は、わざわざ買ってこなくても、手持ちのもので十分です。ただ、できるだけ多種類使うと風味がぐっと複雑になってヤミツキ度が上がりますので、材料表に上げたものなどを常備しておくと重宝しますよ。