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ケイジャンかつ丼

その男は小さな農村で生まれました。

日々食べるのがやっとという貧しい村でしたが、少年になった彼は両親を手伝って野良仕事に精を出しました。

やがて青年に成長した彼は村の娘と結婚し、子供をもうけます。

成長した子供たちにも手伝わせながら、彼は相変わらず野良仕事に精を出しました。

やがて──年老いた彼は子供たちに看取られながら天寿を全うしました。

結局、彼は生涯一度も村から出ることはありませんでした。

これだけ読むと昔話かファンタジー物のプロットのように思われるかもしれません。

けれど、これが江戸時代のお百姓さんのごくありふれた一生だったのです(武士や商人、職人といった階級の人たちは比較的移動が多かったようです)。

好きな時にどこへでも行けて、どこに住んでも構わない令和を生きている僕からすると、“村の外”を一度も見たことがない人生って、なんだか眩暈がしそうな気がしてしまいます。

けれど、それが当たり前すぎて、案外なんとも思っていなかった人も多かったのかもしれません。

いずれにせよ、生きていくうえで様々な制約に縛られるのは江戸時代も令和も変わりません。

100年後の人から見たら僕のライフスタイルも「眩暈がしそう」なんて思われるかもしれませんね。

けれど、それは大きなお世話。

与えられた状況・物・人をフル活用して、人は生きていくしかないのです。

例えば食生活。

物流が発達していなかった江戸時代は手に入る食材が限定的でした。

村が山にあれば山の幸を、海辺なら海の幸を食べて暮らすしかなかった。

そうした制約が、日本各地に独特の郷土料理を生み出したのでしょう。

それは外国でも同じこと。

たとえば、ジャズで有名なニューオリンズやルイジアナ州に定着した「ケイジャン」と呼ばれる人たちがいます。

Wikipediaによれば

『ケイジャンとは祖先が北米東部のアカディア地方(カナダ南東部のノバスコシア地方)に入植したフランス人の直系で、イギリス人によってアカディアから追放されたのち、最終的に主にアメリカ合衆国ルイジアナ州南部に永住した人々を指す』とのこと。

ざっくりいうと「いろいろあってルイジアナに住むしかなかった人たち」というわけです(ざっくりしすぎですが(笑))。

彼らが作る料理は「ケイジャン料理」と呼ばれますが、特徴的なのは地元で手に入る食材を生かしていること。

「地産地消ってやつですね。カッコいいじゃん」

──などと思うかもしれませんが、それしか食べるものがなかったからそうなっただけなのです。

使う食材も、よその人から見たらゲテモノっぽいものが多く、例えばザリガニ、アリゲーター(ワニの一種)、カエルなどが挙げられます。

まあ、フランス料理でもカエルは使われますから、彼らの祖先にはそれほど抵抗がなかったのかもしれません。

さて、とあるランチタイム。

かつ丼が食べたくてトンカツを揚げました。

けれど、いつもの純和風のかつ丼ではつまらないと思ったのです。

「もしも日本でかつ丼を食べたケイジャンが帰国して再現したいと思ったらどうするだろう?」

──なんて考えてしまいました。

ご飯と豚肉を使うのは固定するとしても、醤油などは手に入らない。

ならば地産地消。

ケイジャン料理でよく使われる香味野菜と、ケイジャンスパイスと呼ばれるミックススパイスを使って、こんなソースをかけたんじゃないかな──そう考えながら試作してみました。

ちょっとケイジャンの人に食べてもらって感想を聞いてみたいものです。

【材料】(1人分) 

調理時間:12分-

  • ご飯:1膳分
  • 豚ロース(トンカツ用):1枚
  • 卵:1個
  • パン粉:適宜
  • 揚げ油:適宜

[トンカツの下味パート]

  • 薄力粉:少々
  • 塩、ブラックペッパー:少々

[ソースパート]

  • 玉ねぎ:1/4個
  • ピーマン:1/2個
  • セロリの茎:5cm分
  • 人参:スライス2枚
  • オリーブオイル:18g(大さじ1.5)
  • レモン果汁:7.5g(大さじ1/2)
  • 塩:1g(小さじ1/6)
  • ケイジャンスパイス:小さじ1/2
  • トマトケチャップ:10g(小さじ2)
  • はちみつ:7g(小さじ1)

【作り方】

  1. 揚げ油を170度に温めます。待っている間に豚肉の筋(脂身と赤身の境目)に包丁を入れ[トンカツの下味パート]をまぶします。よく溶いた卵液をくぐらせパン粉をまぶします。再度卵液に浸けてパン粉を二度付けします。 ※パン粉を二度付けすることで衣が厚くなりソースとの絡みが良くなります。
  2. 油が温まったら肉を投入して片面1分半、ひっくり返してさらに1分半揚げます。カツを油から引き揚げてカツを立てるようにして置き油を切ります。 ※カツを立てることで油が良く切れ、衣がサクサクになります。
  3. [ソースパート]の野菜類をみじん切りにします。フライパンに[ソースパート]の野菜類とオリーブオイルを合わせて弱火で1分炒めます。[ソースパート]の残りを加えてさらに1分炒めます。
  4. 丼にご飯をよそいます。食べやすいサイズにカットしたカツをご飯に載せて、3.をまんべんなくかければできあがり。

【一口メモ】

  • 酸味の強いスパイシーなソースが、カツと面白いコラボレーションを演出しています。純和風のかつ丼とはまったくの別物ですが、意外に旨い。
  • ケイジャン料理はアメリカ・ルイジアナ州あたりで食べられる家庭料理で、入植したフランス系の人たちによって育まれました。地産地消を旨としており、ザリガニ、アリゲーター(ワニ)、カエルなども使われるそうです。ちょっと食べてみたいかも。
  • 風味の要は香味野菜。玉ねぎ、ピーマン、セロリはケイジャン料理の「聖なる三位一体(Holy Trinity)」と呼ばれる定番の組み合わせで、さすが長い歴史の中で培われてきただけのことはあります。

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