「砂ずりを唐揚げにしてくれない。それをポン酢で食べたいんだけど」
社会人になりたての頃に行きつけだった焼き鳥屋である日先輩が店のメニューにないわがままを言いました。
気の良い大将はぱぱっと作ってくれたのですが、そこは本職。
先輩の漠然としたリクエストに対してにんにくが利いた分厚い衣の唐揚げを作りポン酢と一緒に出してくれました。
衣が厚いのでたっぷりポン酢を吸ってさっぱりした風味になる──その料理は「ずりからポン酢」と名付けられてほどなく店の看板メニューになりました。
神戸の長田地区にあるとあるお好み焼き屋さんにて。
焼きそばを注文した常連さんが弁当箱の中の白ごはんを一緒に焼いてほしいと無茶振り。
これがきっかけで神戸名物の「そばめし」が誕生しました。
「カレーライスにとんかつを載せてよ」
ジャイアンツの千葉茂選手のリクエストから生まれた「カツカレー」など客のリクエストから生まれた料理というのは案外あるものなのかもしれません。
店主と客が一緒になって店を育てていく──そんな感じがして良いですね。
広島県呉市に「POPAYE(ポパイ)」という食堂があります。
近くにある高校の生徒が主要な客という安さとボリュームがウリのお店だそうですが、ある時ふりかけご飯を注文した男子高校生がこんなリクエストをしました。
「量が全然足りない。上に豚肉と目玉焼きも載っけてくんない」
更に上から広島のソウルフードであるお好み焼きのソースをかけてマヨネーズを絞ってなんとも高カロリーな丼が完成しました。
これが昭和50年ころに産声を上げて今でも学生たちの空腹を満たしている「肉玉ライス」の誕生秘話だそうです。
【材料】(1人分)
-調理時間:15分-
- ご飯:1膳分
- 豚こま:100g
- 卵:1個
- サラダ油:少々
- ふりかけ:適宜
- お好み焼きソース:適宜
- マヨネーズ:適宜
【作り方】
- フライパンにサラダ油を入れて中火にかけ卵を割り込んで目玉焼きを半熟に焼きます。待っている間にご飯を丼によそい上からふりかけをかけます。肉を食べ易い大きさに切っておきます。目玉焼きが焼けたらその上に載せます。
- 1.のフライパンを洗わずに肉を入れコテやフライ返しで押し付けるようにしながら焼き色が付くまで焼きます。これを1.の丼にトッピングし上からお好み焼きソースをたっぷりかけて仕上げにマヨネーズを絞ればできあがり。
【一口メモ】
- なんともジャンクな味わいの丼です。カロリーは高そうですがどうにもお腹が空いてたまらないなんて時にはオススメの一杯かも。
- 料理の全体構造を分析するとお好み焼きの生地がご飯に入れ替わっているだけと言えます。ご飯→目玉焼き→肉→ソース→マヨネーズと層を重ねていく構造は広島焼きのお膝元らしいですね。
- 肉の下に隠れている目玉焼きが半熟というところがポイントです。黄身を崩していくと味が徐々に変化して楽しいですよ。
- お好み焼きソースは甘口が基本かなと思います。けど、どろソースのような辛口も捨てがたい気がする。
- 昭和50年頃、呉市の食堂でこんな丼が食べたいとリクエストした高校生のワガママから生まれた名物メニューだそうです。勘定するとその高校生も70歳に手が届く年頃になっているはず。歴史を感じますね。
- その高校生の元々の注文がふりかけご飯だったのでふりかけが使われているだけでそれ以上の必然性はなさそうです。なので手持ちがなければ使わなくても構わないのではと思います。ちなみにふりかけの代わりに鰹節を使ってみましたが美味しかったですよ。