かつて、ショッピングは、いやいや、仕方なくするものでした。

今から200年くらい前、ナポレオン一世が失脚し、王政復古が叫ばれたフランスでの話です。
当時の商店は、店の外から中が窺えず、店に入ると薄暗い。
商品は雑に積み上げられてほこりを被っている。
その商品に値札は付いておらず、店員に訊ねると明らかにふっかけたような高値を告げられる。

お客はなんとかもう少し安くならないかと価格交渉しなければならない──ショッピングとはそういう憂鬱な作業だったのです。
「とはいえ、服が破れてきたし、靴もくたびれている。新しいのを買わなきゃな」
──当時のショッピングは「必要なものを買う」という行為でもありました。
そんな既存の概念を打ち破る店がパリに登場したのは19世紀半ばのこと。
新興のマガザン・ド・ヌヴォテというスタイルのお店を、世界初の『デパート』という商業形態に進化させたのは、一組の夫婦でした。

店の外壁を大きなガラス張りにして、商品や店内の様子が外からでも眺められるショーウィンドウの発明。
店内は明るく、商品は美しく陳列され、客が通る通路にはヴェルサイユかと見まごうような綺麗な絨毯が敷き詰められている。
そして……
全ての商品に値札が付いていて、客は店員に訊かなくても自分の財布と相談できるようになっている!せっせと貯めた貯金で店の経営権を得たブシコー夫妻が打ち出したアイデアは、今ではどこのデパートでも見かけるありふれたものですが、200年前の人々にとっては驚異的だったことでしょう。

さらに夫妻のアイデアは留まるところを知らず、店内に図書室を作って「別に買い物をしなくても良いですよ、ここでゆっくりくつろいでください」という雰囲気を醸成。
図書室はご婦人方のたまり場になりました。
店の上に飲食店を作って「お買い物のあとは、お食事を」という新常識を作ったのも彼らでした。

そして──極め付きは『バーゲンセール』という新商法。
特定の期間だけ商品が安くなるこのキャンペーンは、「今買わなければ末代までの損!」と客たちに思い込ませる効果をてきめんに発揮しました。
デパートの誕生によって、ショッピングは「必要なものを買う」から「欲しいものを買う」という行為にシフトしました。

そしてバーゲンセールは、「別に欲しいと思っていなかったもの」までも「絶対欲しいもの」に変えてしまう悪魔的なアイデアだったのです。
歴史上、『衝動買い』という不思議な行動が誕生したのは、この時期じゃないだろうかと僕は思っています。
けど、元々が「別に欲しいと思っていなかったもの」ですから、買ってすぐに持て余してしまうなんてことが往々にあります。
それは200年後の今も同じ。
過日読んだ記事では、「日本で発生しているフードロスの50%は家庭で発生している!」なんて報じられていました。

いわゆる『家庭内フードロス』の一因は、家にあるもので日々の食事は事足りているのに、スーパーに行ったらなんとなくまた食料品を買ってしまうという『衝動買い』によるところが大きいんじゃないかと思います。
ブシコー夫妻も罪作りなことをしたなぁ(笑)
けど、せっかくの食料品を捨てるのはなんとももったいない。
なんとか消費する方法はないかと、知恵を絞るべきでしょう。

幸い今は冷蔵庫がありますから、野菜なら小分けにして冷凍すれば、とりあえず日持ちを良くすることができます。
その上で、野菜を大量消費する献立を駆使して、せっせと使っちゃいましょう。
まずは切り方。
千切りやみじん切りにすると、一気にかさが減って火の通りも良くなるのでおすすめです。

調理法なら、フライパン蒸しにレンジ蒸し、煮込み料理に野菜炒め。
けど、何と言っても野菜をたっぷり使えるのは、このレシピのようなスープじゃないかしら。

洋食ならミネストローネ、和食なら豚汁あたりは、大量だけでなく多種の野菜を使えるのでおすすめです。
いやいや、あまり凝ったものを作るのはちょっとしんどい──という方は、ぜひこのレシピをお試しくださいな。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- キャベツ:2枚
- ベーコンスライス:1枚
- オリーブオイル:4g(小さじ1)
- 塩、ブラックペッパー:適宜
[スープパート]
- 牛乳:150g(カップ3/4)
- 水:100g(カップ1/2)
- チキンコンソメの素:1キューブ
[スパイスパート]
- ターメリック:少々
- オールスパイス:少々
【作り方】
- キャベツは1cm角に切ります。ベーコンは5mm幅の細切りにします。
- 小鍋にオリーブオイルを入れて中火にかけます。これにキャベツ、ベーコンを加えて1分炒めます。
- 2.に[スープパート]を加えてひと煮立ちさせます。蓋をして弱火で5分煮ます。
- 3.の火を止めて[スパイスパート]を加えて混ぜます。味を見て薄ければ塩、ブラックペッパーで味を調えればできあがり。
【一口メモ】
- このスープはドライカレーの付け合わせに作りました。カレーにミルク系ってどうよ──と思ったのですが、意外に合う。そして、チキンコンソメで煮込んだ素朴な味がけっこう旨い。
- キャベツは汎用的で使い勝手の良い野菜ですが案外、使わない時は長く使わずに傷めて炒めてしまいがち。なので、大量消費できるレシピを知っていると便利なのですが、一案がこの料理のようにスープの具材にすること。あっという間に使い切っちゃいますよ。
- 主菜がドライカレーだったのでテイストを寄せてスパイスにターメリックを使っています。合わせる料理によってスパイスはいろいろアレンジしてみてください。

