社会人になって初めての冬、12月。
僕は忘年会にどっぷりと浸かっておりました。
職場の宴会が煙たがられる昨今では想像するのも難しいかもしれませんが1980年代は頻繁に「宴会」が執り行われておりました(職場にもよるのでしょうけど)。
ましてや年の瀬が押し迫った忘年会シーズンは宴会ラッシュ。
1年間お世話になったお客様に御呼ばれしたりして週に2、3回はどこかの忘年会で酒を飲んでいるなんてのも珍しくなかったな。
って、何回年を忘れるんだよ。
けど根が酒飲みなのとわりと周囲の人に恵まれたこともあってあまり嫌な思いをした宴会は経験していないんですよね。
今となっては良い思い出です。
当時はまだ特定の料理ジャンルに特化した飲食店が多くなく居酒屋で供される宴会コース料理はわりとどこも似たり寄ったりだったように記憶しています。
定番はなんといっても鍋料理でしたね。
カセットコンロに鍋を置いて火を点けておけばあとは客が勝手に具材を入れて作ってくれるので店員の手間が楽になる──なんて意図もあったのかもしれません。
その忘年会の席で──僕は生まれて初めて〆の雑炊というものを食べたのです。
僕の生家では鍋物はおかずの一種で中身を食べ尽くしたらそれでおしまい。
その後、何かを投入して再度食事モードに入るという文化がありませんでした。
学生時代に所属していた男声合唱団は1月に年に一度の定期演奏会を控えていたので12月は強化合宿のさなか忘年会というイベントを経験することなく社会人になっちゃったんですよね。
「ごはんとラーメンどちらになさいますか?」
店員さんにそう訊かれて「なんのこと?」てな顔を僕はしていたのでしょう。
世話焼きな先輩が鍋に残ったスープにご飯や麺を入れてスープを吸わせながら煮ると飛び切り美味しくなるのだと解説してくれました。
で、作ってみるとホントに飛び切り美味しかったので感動した覚えがあります。
あれも今となっては良い思い出だな。
過日、残り物の食材で鍋料理が食べたくなったのですが肉も野菜も微妙に少ない。
なんか満腹になる気がしなくてどうしたものかと思案していて──ふと思いついたのです。
だったら鍋料理自体をすっ飛ばして鍋料理を食べ終わった状態を作ってしまう。
そこにご飯を入れればいきなり〆の雑炊として楽しめるのではないか?そんな着想でこんな料理を作ってみました。
チョイスしたのは中国は四川の辛い鍋料理、「火鍋(フゥオグゥオ)」です。
【材料】(1人分)
-調理時間:16分-
- ご飯:1膳分
[具材パート]
- 豚バラ肉:50g
- 野菜類:ネギ、菊菜、もやし、しいたけ、人参など適宜
[スープパート] 水:200g(カップ1)
- 中華スープの素:6g
- 味噌(できれば赤味噌):6g(小匙1)
- にんにく:ひとかけ
- 生姜:ひとかけ
- 青ネギ:5cmくらい
[火鍋油パート] ごま油:6g(大匙1/2)
- にんにく微塵切り:ひとかけ
- 生姜微塵切り:ひとかけ
- 青ネギ微塵切り:5cmくらい
- 豆板醤:12g(小匙2)
- ごま油(仕上げ用):4g(小匙1)
【作り方】
- [スープパート]のにんにくはスライスします。生姜は細切りにします。ネギはみじん切りにします。[スープパート]を小鍋に合わせてひと煮立ちさせます。これに食べやすい大きさに切った[具材パート]を加えて柔らかくなるまで煮ます。これにご飯を投入して更に3分煮ます。
- [火鍋油パート]のにんにく、生姜、青ネギをみじん切りにします。フライパンにごま油大匙1を入れ、にんにく、生姜、青ネギを入れて弱火で炒めます。にんにくがキツネ色になったら豆板醤を加えてさっと炒めます。最後に仕上げ用のごま油を回しがければ火鍋油の完成。
- 1.を器によそい2.を好みの量加えて戴きます。
【一口メモ】
- 程よい辛さで体が温まる冬におススメの鍋料理です。いきなり〆の雑炊にしてしまっているので具材が多少心もとなくても満足感の高い一杯になりますよ。
- 辛味を付ける[火鍋油パート]を分離して後入れするスタイルにしてあるので辛いのが苦手な人ともシェアして食べられます。[火鍋油パート]はけっこう辛いので味を見ながら追い足してくださいね。
- 時間に余裕があれば工程1.で[具材パート]を煮た後1、2時間放置してからご飯を加えて仕上げてください。味染みが良くなってより鍋料理感を楽しめます。