体調の良くない客のためにシェフが創意を凝らしたオリジナルメニューを提供する──
物語などではよく見かけるエピソードな気がしますが案外現実の世界でもあるようです。
例えばシャリアピンというオペラ歌手が公演で日本に来た時に歯痛に悩まされていた。
にも関わらず「柔らかいステーキが食べたい」なんてわがままを言ったらしい。
どうすれば肉を柔らかくできるか?
その問題にシェフが導き出した答えは「肉に玉ねぎをまぶす」でした。
玉ねぎにはプロテアーゼという酵素が含まれていてこれは動物性のタンパク質を分解してくれます。
玉ねぎにしっかり漬け込んでソースにも玉ねぎを使ったそのステーキをシャリアピンさんは絶賛したとか。
そのステーキは店のメニューに残り。
そのオペラ歌手の名前にちなんでシャリアピン・ステーキと名付けられました。
話変わって昭和5年の横浜。
ホテルのシェフが体調を崩していた銀行家のために特別メニューを作りました。
バターライスに芝海老のクリーム煮とホワイトソースをかけてオーブンで焼いたその料理は「"ShrimpDoria"(海老と御飯の混合)」と呼ばれてその後もホテルのメニューに残ったそうです。
更に弟子たちが日本各地のホテルやレストランでその料理を広め今ではファミレスの定番メニュー「ドリア」になりました。
そう、ドリアは日本で生まれた洋食なんですね。
ま、炊いたご飯を洋食に使うという発想自体、日本人的ではあるのですが。
過日、梅田のとあるレストランでシーフードのドリアを戴いたのですがその時ふと思ったのです。
ごはんが普通過ぎる。
せっかくオーブンで焼いているのに白いご飯のまま。
もしもこのご飯が焼きおにぎりみたいにこんがり焼けていたら……
思いつくと居ても立ってもいられなくなって翌日試作。
2日続けてドリアを戴くことになってしまいました。
【材料】(1人分)
-調理時間:30分-
- 鶏もも肉:50g
- しめじ:1/4株
- ご飯:1膳分
[ご飯の味付けパート]
- 鶏ガラスープの素:小匙1/2
- 蕎麦の返しまたはめんつゆ:小匙1
[ホワイトソースパート]
- 牛乳:150g(カップ3/4)
- 玉ねぎ:1/4個
- 塩:2g(小匙1/3)
- 薄力粉:12g(大匙1+小匙1)
- バター:15g
- ナツメグ:少々
- クローブ(パウダー):少々
- シナモン:少々
- 砂糖:ひとつまみ
【作り方】
- [ホワイトソースパート]の玉ねぎをみじん切りにします。鶏肉は1cm角のさいの目に切ります。しめじは小房に分けます。
- 小鍋に玉ねぎと薄力粉を合わせて弱火で3分炒めます。これにバターを加えて粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
- 2.に牛乳を加えて中火にし、泡立て器で撹拌しながらひと煮立ちさせます。これに[ホワイトソースパート]の残りと鶏肉、しめじを加えて弱火で3分煮込みます。
- 3.をやっている間にご飯に[ご飯の味付けパート]を加えてしゃもじでよく混ぜます。
- オーブンを230度に予熱します。待っている間に4.のご飯を耐熱皿に敷き詰め上から3.をかけます。これを予熱完了したオーブンに入れて15分焼けばできあがり。
【一口メモ】
- 蕎麦の返しを混ぜ込んだご飯がオーブンの中でカリカリの焼きおにぎり状態になるという仕掛けの料理です(にぎってないけど)。純和風テイストのご飯が純洋風なホワイトソースに意外と合ってびっくりしますよ。
- 更にカリカリ感を楽しみたい場合はホワイトソースを敷いた上にご飯を入れて直火に晒すのもありです。その場合はホワイトソースの塩を控えめにしてご飯の蕎麦の返しを多めにしてください。
- 具材は自由自在。海老や帆立などのシーフードでやっても美味しいですよ。