2019年の冬アニメに「ラーメン大好き小泉さん」というのがありました。
基本的には小泉さんという美人女子高生がひたすらラーメンを食べているだけのお話なのですが、深夜に小腹が空いている状態で観るには拷問のような作品でした(笑)

小泉さんは転校生なのですが、本作のヒロインの大澤さんは同性ながら彼女のことが気になって仕方がない。
いささか病んだストーカーのように小泉さんの追っかけをやっている大澤さんの姿が作品にギャグのテイストを添えていました。
とある回、珍しく小泉さんのモノローグで話が始まったのですが、実は大澤さんのことを自分も気になっていて、素直になれないことを悩んでいると視聴者に告白してくるのです。
ところが……
セリフが進むうちに声のトーンが変化して、視聴者もこれは小泉さんの声じゃなくて、大澤さんのアテレコ(吹き替え)だと気付くのです。

つまり、大澤さんの声優が小泉さんの声真似をしていたわけなのですが、序盤は全くわからなかった。
十分小泉さんの代役が務まるじゃんと思いましたね。
それよりも凄いのは声のトーンを変化させるとちゃんと大澤さんの声に聴こえるところ。
つまり小泉さんの声を演じつつもその芯に大澤さんの演技が一本通っているのです。
プロの声優って凄いなと改めて思った一幕でした。
今さら説明するまでもないかもしれませんが、声優は声だけで演技をする役者さんです。

観客からは顔が見えないという特性を活かして実写ではなし得ないトリッキーな演出で作品を盛り上げることができます。
小泉さんのモノローグもその好例ですね。
そんな演出でよくあるのは年齢を錯誤させること。
高校を舞台にしたアニメで30代、40代の声優さんが生徒役を演じるのはザラですし、還暦を過ぎてもティーンを演じられる人もいます。

見た目は可憐な美少女だけど実は男という役柄を女声が得意な男性声優が演じていたなんて例もありました。
笑顔はそのままで、不意にドスの効いた声に切り替わった時はゾクっとしたなぁ。
病気や何らかの事情で声優さんが降板しても代役を立てて、作品は続行できるというのも顔が見えない声優ならではの技でしょう。
多くの場合、代役は前の声優さんの演技に寄せて演じるので役者が変わったことに気づかない視聴者も多いと思います。

それでも単なる前任者の物まねではなく自分オリジナルの演技を加味してくるところにプロ根性を感じさせます。
料理でいうと顔を出さない声優のポジションは調味料や薬味ということになるでしょうか。

例えば焼いたお肉を出して、「鯛の尾頭付です」と言われても無理があり過ぎますが、ど定番の調味料や薬味を切らしている時、よく似た風味のものを代用すると案外気付かれないことがあります。
例えばローストビーフ用のソースに使われる薬味の定番と言えばホースラディッシュです。
和名はセイヨウワサビと呼ばれて、本わさび同様にシャープな辛味が特徴です。
その辛味の強度は本わさびの1.5倍。
鼻に抜ける強烈な辛さが刺激的でクセになります。
ただ、日本のスーパーではめったに見かけることがない食材なんですよね。
ネットで見かける日本語のレシピ(きっと日本人が書いたものでしょう)でもローストビーフのソースは本わさびを使ったものが大半な気がします。

つまり、ホースラディッシュの代役として本わさびに登板してもらったというわけ。
つんと抜ける辛味はホースラディッシュに良く似ているので欧米の人が食べても違和感はないんじゃないかな。
別物の薬味が使われているとは気づかず、「あ、定番のソースだな」と思ってしまうかも。
それにね、名前に「ラディッシュ(大根)」と付いているだけあって、ホースラディッシュは香りが少し大根に似ているのです。
その点、本わさびを使えばあの爽やかな香りがソースを引き立ててくれます。

単なるホースラディッシュの物まねではなく、そこに自分オリジナルの特技を加味してくるところ──代役に起用された本わさびのプロ根性、面目躍如といったところでしょうか。
【材料】(ローストビーフ100?150g分)
-調理時間:6分(粗熱を取る時間は含めていません)-
- 玉ねぎ:1/4個
- 濃口醤油:9g(大さじ1/2)
- 味醂:9g(大さじ1/2)
- 酒:7.5g(大さじ1/2)
- 砂糖:6g(小さじ2)
- わさび:チューブ2cm分
【作り方】
- 玉ねぎをすりおろします。
- 耐熱容器にわさび以外の材料を合わせてよく混ぜます。これにラップをかけて串で数か所穴を開けて、電子レンジの500ワットで1分半加熱します。
- 2.の粗熱が取れたらわさびを加えてざっくり混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- ローストビーフは牛ももブロックを炊飯器の保温モードで低温調理すれば簡単に家でも作れます。けど、わざわざソースを買ってくるのはお金も時間ももったいない。家にあるもので作れないかと考えてこのレシピを組みました。
- 美味しんぼで書かれていましたが牛肉に醤油は実に合います。なので和食の調味料だけでもちゃんとソースとして成立するのです。
- 洋食ではローストビーフにはホースラディッシュ(西洋わさび)を使うのが定番です。香りはちょっと大根に似ていて本わさびの爽やかさには及ばないのですが、ツンと来る辛さは格段に強いです。スーパーなどではなかなか売っていないのでこのレシピでは本わさびを使っていますが、手に入ることがあればぜひお試しあれ。
- 玉ねぎには肉の繊維を分解して柔らかくするプロテアーゼという酵素を含んでいます。できれば盛り付けたローストビーフにソースを和えてしまって10分ほど置いてから食べるのがおすすめです。

