とあるテレビ局での楽屋話。
若手の芸人さんが「近頃、俺の番組がマンネリ化しててさ」なんて愚痴をこぼしていたら、それを聞いたベテラン俳優さんがこう言ったそうです。
「そうは言うけどね、マンネリになるって凄いことなんだよ」
その俳優さんとは誰あろう渥美清さんだったとか。

いや、男はつらいよの寅さんにマンネリ云々と言われたらそれは──重みが違いますよね。
あまりに話が出来過ぎているので、実話かなと疑いたくもなるのですが、こういう話は真偽はどうでもよくて、面白ければそれで構わないのでしょう。
いずれにせよ映画の観客に「マンネリ」と呼ばれるためには、それだけ回を重ねなければいけないわけで、その点「男はつらいよ」ほどふさわしい映画シリーズはないでしょう。
なにせギネスブックに「世界で最も長い一人の俳優が演じた映画シリーズ」として載っているそうですから。

映画界のレジェンドが「男はつらいよ」なら漫画界のそれは何か?
僕がすぐ思い浮かぶのはこち亀こと「こちら葛飾区亀有公園前派出所」です。
全200巻を以て連載終了。
その後も単発的に作品が発表され2021年には単行本201巻が出版されました。
巻数では今も連載が続いているゴルゴ13に抜かれていますが(2025年7月現在、217巻でギネスブックにも載っています)、金字塔と呼ばれるのにふさわしい作品だと思います。

こち亀の凄いところはマンネリ化を寄せ付けないストーリーの多様性だと僕は思っています。
例えば、
- 舞台を江戸時代に移して、町民や町方になった両さんたちが活躍する
- 少年時代の両さんがタイムトンネルを通って現代に迷い込んで来る
- 天国や地獄に行った両さんが死者たちと騒動を起こす
- 時給2万円に釣られて申し込んだら宇宙ステーションに連れていかれて、宇宙ゴミを大気圏に落とすバイトをさせられた──
などなど、想像力を駆使し、漫画ならではの強みを活かして、縦横無尽に作品のテイストに変化を付けていました。

「マンネリなんて言わせないぜ」
という作者の気概が見え隠れする作風でしたね。
同様に料理界で「マンネリ」と揶揄されがちなレジェンドといえば──やはり、おせち料理でしょう。
昔ながらの伝統だからと言われても子供の頃、重箱の中を覗いてウンザリした人もいるんじゃないでしょうか。

黒豆、田作り、昆布巻き、なます──
おせち料理の不人気投票をすれば、このあたりが必ず上位にランキングされそうです。
「だったら、伝統にこだわらず最初から入れなきゃ良いじゃん」
という発想もありでしょう。
近年、洋風おせちや中華おせちの人気が高まっているのもそんな思いの現れだと思います。

漫画でいえばマンネリなんて言われ出す前に、さっさと連載を終わらせて、違う漫画を描けば良いというわけです。
けれど、こち亀の作者ならこういうんじゃないかな。
「想像力を働かせれば料理のテイストはいくらでも変えられる。マンネリなんて言わせないぜ」
例えば数年前から我が家のおせちでは黒豆の煮物をクリームチーズで和えたアレンジ料理に変えています。

人気は上々で、あれだけ持て余されていたのが嘘のようにあっという間になくなります。
2026年のおせち料理ではなますをアレンジ。
珍味を加えたサラダ仕立てにしてみました。
これがめっぽう酒に合うのです。
「こんなのは、おせち料理じゃない」
なんて渋い顔をされる方もいらっしゃるかもしれません。

けどね、草葉の陰から寅さんに「それを言っちゃあ、おしまいよ」って、笑われちゃいますよ。
【材料】(2人分)
-調理時間:12分-
- 大根:200g
- 人参:1/3本
- お好みの珍味:イカの塩辛などまたは魚介の缶詰(貝柱、鮭缶など)を30g以上適宜
- (あれば)カイワレ大根:1/4パック
[マリネ液パート]
- 酢:15g(大さじ1)
- オリーブオイル:12g(大さじ1)
- ブラックペッパー:少々
- 塩:2g(小さじ1/3)
【作り方】
- 大根と人参をスライスし、さらに千切りにします。これに軽く塩(分量外)を振って5分ほどなじませ、しんなりしたら水気を絞ります。 ※百均ショップなどで千切りスライサーが売られています。これを使うと作業が格段に楽になりますよ。
- 1.をやっている間にお好みの珍味を粗みじん切りにします(缶詰を使う場合はフォークで粗くほぐします)。これをボウルに入れて[マリネ液パート]を加えよく和えておきます。
- 2.に1.と(あれば)カイワレ大根を加えてよく和えればできあがり。
【一口メモ】
- おせち料理のなますもわりと不人気な品なのですが、サラダ仕立てにして珍味などをプラスしたら…、あっと言う間になくなりそう。というか、実際一瞬でなくなりました(笑)
- ネットで見かけたオリジナルのレシピでは貝柱の缶詰を使っていましたが、スーパーで値段をチェックするとびっくりするくらい高かった。ということで、今回はお正月用に特売をやっていた珍味コーナーで「うにイカ」を購入して使っています。こっちの方が酒の肴っぽいですね。
- [マリネ液パート]の酢は風味の要です。ちょっと高級な黒酢を使うとどっしりしたテイストになりますし、ワインビネガーを使うとおしゃれなサラダ風になります。酢の代わりにレモンや柚子の果汁を使うとフルーティーさが加わって子供たちに喜ばれそうですね。

