和食の世界では「椀刺し」が華だと言われます。
椀刺しとは椀物と刺し身のことですね。
どちらも高度な技術を求められて厨房の中でもこれを作る板前さんは一番腕の立つ人が担うのです。
けど、刺し身はなんとなくわかるんだけど椀物のどこが凄いのか僕は長いことわからずにいました。
その凄さ、奥深さが理解できるようになったのは単身赴任をして毎日自分で料理をするようになってからじゃないかな。
椀物は「椀種」、「椀妻」、「吸い口」、「吸い地」そして器としての椀の5つから構成される小さな劇場なのです。
椀種はメインとなる具材。
芝居で言えば主演役者です。
椀妻はそれを引き立てる脇役。
吸い口は三枚目。
一見不必要な役に見えて物語を回すために欠くことのできない狂言回し的な役割を担います。
この3つが調和して椀を構成します。
吸い地は汁の部分、芝居で言えば脚本ですね。
出汁と調味料でその椀がどういった物語なのかを決定づけます。
そして器としての椀は劇場。
いくら良い役者と台本を揃えても劇場が貧相だと観客のテンションは下がります。
神経を張り巡らせてこれら5つの要素を調和させひとつの物語に仕上げる椀方(椀物を作る板前)はいわばこの芝居の監督であり演出家なのです。
と言ったことを料理する中で学び、理解するようになりました。
けどまあ、それは料理屋での話。
毎日頂く汁物で都度そこまで緊張していては身が持ちません。
手抜きもします。
本来、しめじなどの茸類は椀妻に使われる食材です。
けど敢えてそれを主役に据えて寸劇を演じてもらう──そんな汁物を作る日だってあるのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:12分-
- しめじ:1/2パック
- 生姜:スライス3枚
- ごま油:12g(大匙1)
- 水:500g(カップ2.5)
- 鶏ガラスープの素:500ml分
- オイスターソース:12g(小匙2)
- 塩、ホワイトペッパー:適宜
- 酢:7.5g(大匙1/2)
【作り方】
- しめじは石づきを取って小房に分けます。生姜は千切りにします。
- 小鍋にごま油と生姜を入れて中火にかけ炒めます。香りが立ってきたらしめじも加えて1分炒めます。
- 2.に水と鶏ガラスープの素を加えてひと煮立ちさせます。火を弱火にして蓋をし、3分煮ます。これにオイスターソースを加えて味を見、薄ければ塩、ホワイトペッパーで整えます。
- 仕上げに酢を加えてさっと混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- ほぼインスタントスープ的な作りなのですが意外に侮れない旨さです。特にスープポットに入れて数時間煮込んでからお弁当に頂くと茸の旨みがしっかり出て美味しいですよ。
- 他にも椎茸、舞茸、えのき茸など多種類の茸を使うと味が複雑になってスープのグレードがグンと上がります。
- お酢はお好み次第で抜いても構いません。けど、僕は入れた方がさっぱりしていて好きかな。
- 手持ちがあればアサリのむき身など魚介を加えると更に華やかな一杯になります。