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厨房日誌

家でおせち料理を作ること

僕が生まれ育った家庭では年末になるとおせち料理を作るのが当たり前でした。

祖母がいて、母がいて、妹2人がいて(彼女たちはあまり戦力になってなかったけど)、年の瀬の押し迫った中で3日くらいかけてせっせと20品以上作っていました。

祖父がいて、父がいて、僕がいる7人家族でしたので1品ごとの量も結構なもの。お重に収まりきらなかった料理がテーブル2客くらいにみっしりと並べられ、それでも足りないと畳の上に新聞紙を広げて並べられる様は圧巻でした。

結婚をして子供ができたとき、僕自身何の疑問を持たずにおせち料理を作り始めました。

今年で結婚23年目になるのでかれこれ20年以上おせち料理を作り続けているのですがふと立ち止まって考えたのです。

おせち料理を家で作るメリットってなんだろう?

 

イマドキは少し奮発すれば結構豪勢なおせち料理を配達してもらえます。年末のただでさえ忙しい時期に、結構な時間を割いておせち料理を作ることに果たして意義はあるのか? というテーマについてちょっと考証してみたいと思います。

おせち料理を家で作るメリット

まず、おせち料理を家で作るメリットとしてどんなポイントが挙がるでしょう?

3ヶ日をゆっくり過ごせられる

これがおせち料理を作る1番のメリットというか本来的な目的だと子供のころから何度も聞かされてきました。

サラリーマンのお父さんと違って、3度の食事を作るお母さんたちには1年を通じて休みというものがない。なので、おせち料理を作ってしまったら3ヶ日は料理から解放されてゆっくり休めるのだと母や祖母はおせち料理を作るたびに言っていました。

それは市販のおせちを取り寄せたって一緒じゃんと思うかもしれません。

けどね、市販のおせちの分量はせいぜい1、2回で食べきってしまう程度という印象です。とても3ヶ日分の食料の備蓄にはならない気がするんですよね(もちろん、それを何セットも買えば別なのでしょうが)。

加えて僕の子供のころはコンビニもなく、お店は軒並みしまっている状態。営業しているのは神社の参道に並ぶ参拝客相手の屋台くらいで、子供は喜ぶかもだけどご飯にはならなかったんですよね。

うっかり準備を怠っていると、かなりひもじい正月を過ごす羽目になるというのは、昔のお正月あるあるでした。

安い予算でおせち料理が作れる

作る料理にもよりますが総じて市販のおせち料理よりは安い予算でおせち料理を作ることができるのも自分で作ることの大きなメリットです。

また、予算に応じて作る料理や量を加減することもできます。市販のおせち料理の中には「これなくても良いのにな」と思うものもあって、よく考えるとそれを入れることで単価を上げているのではと疑ってしまう場合があります。

自分で材料を買ってくる場合は財布の中身と相談しながら食材を選べるので「これはいっぱい食べたい」と思うものに予算を集中させることだってできるのです。ちなみに、僕の場合は数の子さえあれば何もいりません^^

おせち料理制作のスキルが上がる

おせち料理の制作は普段の夕飯と違って同時並行で何種類もの料理を作るのが一般的です。

つまり、家庭料理というよりはお店の調理に近い実地体験ができるのです。段取りが悪ければ年が明けてもまだ作っている(をい)ハメになっちゃいます。

  • それぞれの料理のレシピがびしっと頭に叩き込まれていること
  • どの料理から着手していくべきか調理全体の工程が描けること
  • 各工程同士で無駄を省くこと(例:同じ野菜を料理ごとに別々で切っていたら無駄ですよね。あるいはだし汁はボウルいっぱい作っておいて、それぞれの料理にシェアしていくのもセオリーです)

など、「普段から簡単な料理でもすごく時間がかかっちゃう」と嘆いておられる方にとっては貴重な体験になりますよ。

また、短期間に大量の料理を作るので合宿研修のような効果も期待出来て1品、2品作っている時より効率的に調理スキルを体に覚えさせることができます。

おせち料理の伝承ができる

子供のころから舌に馴染んでいる祖母や母の手料理を自分でも作れるようになるのは幸せなことだと僕は思います。

先にも書きましたが、おせち料理は3日間みっちりと料理の合宿研修をするような効果があります。普段は忙しくてなかなか横について教えてもらう機会が作れないのならなおのこと、この機会に祖母や母の技術を伝承してもらうのも有意義なこと。これもおせち料理を家で作るメリットじゃないでしょうか。

料理の合間に普段はなかなかできないおしゃべりをしてコミュニケーションをとること自体も有意義だと思うのです。

好きなおせち料理を中心に作れる

市販のおせち料理は万人向けで、美味しそうな料理ばかり詰められていると思いますが中には苦手な料理の1つや2つ入っていたりするものです。

その点、自分で作るおせち料理は好物だけを詰めれば良いわけですから100%自分好みのおせち料理に仕上げることができます。

好みの味付けに調理できる

例えば、あなたが生まれも育ちも関西で、お取り寄せしたおせち料理の制作者さんが関東出身だとします。

一般論ですが関西のほうが薄味を好み、関東のほうが濃い味を好むと言われますので、もしかしたら味付けがお気に召さないかもしれません。逆の場合もまた然り。

料理はそれを作る人が「美味しい」と感じるように作られるものですから、それを食べる人と生まれ育った土地が違ったり、環境が違うとどうしても合わない場合があると思うんですよね。

その点、きちんと味を見ながら自分で調理すれば間違いなく自分の好きな味に仕上げることができます。これも大きなメリットかな。

食材や調味料のコントロールができる

イマドキの市販のおせち料理は多様化が進んで伝統的なおせち料理以外に洋食や中華料理も入っているのが当たり前のようになっています。

例えばローストビーフがでんっと鎮座していると見た目も豪華な印象ですよね。価格が高めに設定されていても納得感があります。

けど、そのお肉はどこで生産されたものか明確になっていますでしょうか? 怪しげな外国産のお肉でもローストビーフはローストビーフです。って、美味しんぼっぽい発言をしちゃってますが^^;

完成した料理のお取り寄せと家でおせち料理を作る場合の大きな違いは、食材や調味料を吟味できることです。

あなたが食材の問題や添加物を気にする人であれば家でおせち料理を作ることは大きな意義があると思います。

おせち料理を家で作るデメリット

ここまで良いことづくめのように書いてきましたが家でおせち料理を作るデメリットももちろんあります。例えば……

一度作り出したら完成するまで止められない

あなたが飽きっぽい性格の場合は3日くらい厨房でずっと調理をするというのはかなり苦痛かもしれません。

けど、一度作り始めた料理は途中で投げ出すことはできません。どんなに嫌でも仕上げるまでは調理を続けることになります。

作る量や種類は自分の性格とよく相談して決めるのが吉だと思います。

多種類作ろうとすると原価が高くなる

市販のおせち料理は何百膳も作るので材料を大量買付けすることで原価を抑えつつ多くの種類の料理を並べることを実現しています。

家で1膳分作るのに、同じくらいの種類の料理を作ろうとすると原価はあっという間にかさんで「これなら市販品を買ったほうが良かったのでは?」と後悔することになるかも。

ピザ屋のトッピングの豪華さを家ではなかなか真似できないのと似た理屈ですね。

まずは最初に予算を決めて、あまり欲張りすぎずその予算内で収まる材料で作ることを心がけましょう。

作りすぎてしまう

冒頭でも書きましたが僕の生家は7人家族でしたのでおせち料理もとにかく大量に作られました。黒豆なんかどんぶり2杯ほども作られていました。

それで「誰がこんなに食べるねん」と毎年もめるのですが、それでも祖母は改めませんでした。あれは何か思い入れがあったのかな。で、泣く泣くみんなでほとんどノルマのように黒豆を食べていましたっけ。

この教訓からもわかるように作りすぎは禁物です。おなかがいっぱいになる以前に飽きてくるほうが先にやってきます。それでも残したらもったいないですから無理やりにでも食べるハメになります。

失敗しても食べなければいけない

家でおせち料理を作る一番のリスクは「失敗してしまうこと」ではないでしょうか。その点、市販のおせち料理はよほど変なお店でない限り、無難ではあっても失敗作が入っていることは原則ありません。

料理に失敗してもなんとか工夫して頑張って食べなければいけない──ハメになるかもしれないという覚悟は必要だと思います。

年末の貴重な時間を割かれる

年末はただでさえやることが多い季節です。年賀状を書く、大掃除をする、まとまった休暇が取りやすいですから普段できていない雑用が溜まっている人も多いでしょう。

そんな中で2日も3日もキッチンに立って時間を消費していられるかい! と思う心情はよくわかります。僕は食べることが好きなので多少掃除をおざなりにしてでも料理に没頭したいタイプなのですがたぶん特殊な部類です。

なので、おせち料理制作の計画を立てるときは調理時間を織り込んで「××時間内」で作れる範囲で作るを心がけるのが吉だと思います。

そもそも、おせち料理を作ることは義務ではない

あ、本質的なことを書いちゃった。

そう、年末におせち料理を作ることは義務ではありませんし、新年におせち料理を食べることも義務じゃありません。端から、おせち料理には見向きもせずに食べたいものを買い込んでおいてそれで寝正月を決め込むという選択肢だってありなのです。

その場合は、「市販のおせち料理 vs. 手作りおせち料理」といういささか不毛なバトルについて悩む必要もありません。

加えてイマドキは元日から空いているお店もたくさんありますから、何か美味しいものを食べに出かけるという選択肢だってあるのです。

まとめ

つらつらと書いてきましたが、まとめるとこんな感じかな。

家でおせち料理を作ることはたくさんのメリットがあります。反面、デメリットがあることも否めません。なので、

  • 予算を決めて計画する
  • 調理に使う時間を決めて計画する
  • 料理に飽きてこない範囲でやる

を旨として、欲張りすぎない計画を立てるのが吉だと思います。欲張りすぎてとん挫したら、あなたは来年から2度とおせち料理なんか作るもんかと思っちゃうかもしれませんから

それでもお正月におせち料理を食べたいのなら市販品も取り寄せつつ1品でも2品でも手作りおせちを用意することをお勧めします。一度身についた料理のスキルは一生使い物になります

そして、来年はまた違う1品か2品を作っていけば、10年後、20品近くのおせち料理を作ることができるようになっています。

逆にあなたが今年も来年も、5年後も、10年後もおせち料理を作らなければ、いくつになっても「おせち料理が食べたかったらお取り寄せする」という選択肢しか持てなくなるのも事実です。

2019/12/30 Mon.

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