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厨房日誌

日常がレジェンド(伝説)になる

僕が小学校2年生の冬のこと。

観たいアニメがあったのでテレビを点けたら──やってなかった。

代わりになんか雪山の映像が映っていてなんかキャスター(当時の僕にそんな語彙はなく単に「テレビの人」って呼んでいた気がします)が喋っている。

かなりヘビーなテレビっ子だった僕は諦めきれずに他の番組を観ようとチャンネルをガチャガチャ(時代を感じさせるなぁ)。

が、なんということでしょう。どのチャンネルもおんなじ雪山の映像。これはどうしたことか。

大人たちの説明を聞いても要領を得ず。わかったことは……今日はどこもアニメをやっていないということだけでした。

それどころか、それから数日にわたってお茶の間にアニメが放送されることはありませんでした。

世にいう「あさま山荘事件」は小学生の僕にとって「アニメの放送を邪魔したうっとうしい事件」として長く記憶に残りました(をい)。

実際に何が起きていたのかを知ったのはずっと後の事でしたね。

なんて話を娘にすると「歴史の目撃者じゃん」みたく言われて笑われます。

いや、僕だけが目撃したわけじゃなく大半の日本人があのニュースを観ていた気がするんだけどね。

あるいは僕が幼稚園児だった頃、アニメの「サザエさん」が放送開始されました。

僕が小学6年生の時、少年ジャンプに「こちら葛飾区亀有公園前派出所」という長ったらしい名前のギャグ漫画が連載開始されました。

どちらも半世紀後になってもまだやっているなんて夢にも考えてなかったなぁ。(こち亀は連載が終わったけど)

更にあるいはこんな話もあります。

僕の所属する合唱団の先輩は新設された高校の1期生だったらしいのです。

過日、その高校の卒業生が合唱団に入団してきたのですが微妙に会話が噛み合わない──そう、彼女が入学したその高校は創立30周年を迎えるけっこう伝統のある学校になっていたんですね。

先輩はかなりショックを受けておりました^^

更に更にあるいは僕が大学1年の時、下宿の前にビストロ風の食堂がオープンしました。

学生時代はけっこう通った馴染みのある店だったので、数年前出張でその地を訪れた時は店がまだあるか気になって覗きに行ってみました。

店は──ありました。けど、その店は創業30年を超える老舗になっておりました。まあ、当たり前なんですけどね。

どんな物事にも始まりはあるものです。

けどその「始まり」はそれを目撃した僕らにとって日常の一コマに過ぎません。

あ、なんか新番組が始まったな。あ、なんか新しい店ができたな。

ちらりとそう思ってすぐに忘れてしまう出来事です。

けれどそれから50年後、その店が、その番組がまだ続いていたとしたら……

多くの人があさま山荘事件の目撃者になったように僕らは自分でも気づかないうちに「レジェンド(伝説)」の目撃者になっているかもしれません。

笑いこけていた娘にも「君が幼稚園の頃にプリキュア(1期)が始まったやん。50年後にその話をしてみ。リアタイでプリキュア1期を観ていたレジェンドって言われるで」なんて言ったら妙に納得されました。

2022/12/12 Sun.

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