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厨房日誌

常識の行方

例えば引っ越しをして新しいマンションに入居したとします。

案内してくれた不動産屋さんは部屋の間取りぐらいまでは説明してくれますが部屋の中の設備の使い方について事細かに説明してくれるでしょうか?

  • 部屋の中でピンポンという音が鳴ったら誰かがドアチャイムを鳴らしたということです。
  • コンロのこのボタンを押すと火が付きます。
  • 家電製品は壁にあるこのコンセントに差してお使いください。
  • 水道はこのバーを上げると水が出ます。
  • 給湯パネルのボタンを押すと水道の水がお湯になります。

恐らくそんなことを解説してくれる不動産屋さんはいないと思います。

それでも、「いちから説明してくれないと、暮らすのに困る」と感じる人はいないでしょう。

なぜなら、そういったことは全てこの時代を生きる人間にとって肌に染みついた常識だからです。

今更説明されなくても当たり前のことだからです。

でも、江戸時代の人が、いえ昭和の時代を生きている人でも今の時代にタイムスリップしてきたらどうでしょう?

きっと、戸惑うことの連続に違いありません。

けどね、それは僕らも同じで100年後の世界にタイムスリップしたら使い方のわからない設備や道具に戸惑うことがいっぱいあると思います。

そして、逆に江戸時代……いえ、昭和三十年ごろにタイムスリップしても同じことだったりするのです。

  • コックをひねってもコンロに火が付かない⇒マッチで点火するだと!!

  • 洗濯したいといったら波打った木の板とたらいを渡された。

  • 電話の掛け方がわからない⇒ダイヤルを回すだと!!

  • 音楽が聴きたいというと変な黒い円盤を渡された。

  • 裁縫を手伝ってと言われてミシンのある部屋に案内されたけどミシンにコンセントが付いてない⇒このペダルを踏んで操作するだと!!

僕の世代は流石に使えますが今の十代、二十代ならパニックを起こしているかもしれませんね。

かくいう僕もちょっと前までスマホを持っていなかったので、娘にいきなり渡されて使い方が分からずパニクったことがあります(いつの時代を生きてるんだか^^;)。

今、タイムマシンが出てくるSFを書いているのですが、この「時代限定の常識」に結構悩まされています。

2045年に暮らす人間にとって1985年の暮らしはどこまでが「常識」でどこからが「非常識=非日常」なのか?

(あ、ちなみに1985年は映画「バック・トゥ・ザ・ヒューチャー」が公開された年です)

これくらいはわかるだろうと思っても、それはあくまでも実際に1985年を生きていた僕の感覚。

案外、テレホンカードの使い方がわからないかもしれないし、もっと言えば自転車の乗り方すらおぼつかないかもしれません。

僕らが常識だと思い込んでいることは存外に危ういものでその時代でしか通用しないものがたくさんあります。

そして、かつては常識だと弁えていたことを僕らはいとも簡単に記憶のかなたに追いやってしまいます。

言われてみればそういうこともあったなぁと、思い出すことがどれだけ多いことか。

今、常識と信じていることもあと五年、十年すると日常から遠ざかってしまっているのかもしれませんね。

2020/03/17 Tue.

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