長女が生まれて引っ越した街の駅前に焼鳥屋さんがありましてけっこう通いつめちゃったのでそこのご主人ともずいぶん仲良くしてもらいました。
ご主人と言っても僕の1歳下。
しかも大学が二人とも岡山市内だったので「学生時代にどこかでニヤミスしてたかもね」なんて話で盛り上がりましたっけ。
彼はかなり変わった経歴の持ち主で理学部数学科を卒業後すぐにオーストラリアに行って3年間、焼鳥屋で修行していたそうです(なぜ、オーストラリアw)。
ちょうど元号が平成に変わったばかりの80年代終盤の頃のことです。
その後、すかいらーくの工場長、和食のさとの料理長などを遍歴し、貯めたお金で焼鳥屋を開いたのだとか。
飲食店を遍歴しただけのことはあって面白い裏話をいろいろご存じで折に触れて伺いましたっけ。
彼が工場長をやっていた頃のすかいらーくのハンバーグが飛び切り美味しかった理由なんかも教わりました。
当時あそこのハンバーグはオーブンの輻射熱で焼いていたので美味しかったんですって。
その影響で今でも我が家のハンバーグは半冷凍にした種を網に載せてオーブンで焼くんですよ。
ただ、彼が焼鳥屋を始めた頃には効率化の波で方式が変わってしまい味が落ちたと残念がっていました。
それから十数年後、くだんの引っ越しをしたもとになった長女も高校生になりまして、ファミレスでアルバイトなどするようになりました。
彼女の言によると厨房の調理はレンチンのみ。
バイト初日の子でもできるような作業ばかりだったそうです。
なんだかなぁ。
嘆いても仕方がないかもしれないけれど、そういう調理手順の劣化って一度手を染めてしまったら二度と戻ることはなくて、それは必ず味の劣化に直結するんだけどな。
そして、その味が当たり前になって、もっと美味しく作れる方法があるなんて誰も知らなくなっちゃうんだけどな──先人が創意工夫して作り上げたノウハウが忘れられていくのはなんとももったいないと思ってしまいます。
フライパンひとつでできるこのレシピの一皿は大して手間のかかる料理ではありません。
けど、これもやがて「レンチンすればもっと簡単じゃん」と言われるようになるんでしょうか。
──大した手間ではないけれどレンチンと比べれば仕上がりは歴然と違います。
ま、いつか「この料理、もっと美味しくできないかな」と考える人が現れた時のためにここにレシピを書き残しておきましょう。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- 生鮭または塩鮭(甘塩):1切れ
- かぼちゃ:正味100g
- じゃがいも:小1個
- ピザ用チーズ:30gまたはスライスチーズを細切りにしたもの1枚分
- 粗挽きブラックペッパー:少々
- オリーブオイル:6g(大匙1/2)
- 酒:15g(大匙1)
- 昆布出汁:30g(大匙2)
- 塩:1g(塩鮭を使う場合は不要)
【作り方】
- かぼちゃ、鮭は食べやすい大きさに切ります。その際、鮭の骨を取っておきます。じゃがいもは皮を剥いて3mm厚にスライスします。
- フライパンにオリーブオイルを入れて中火にかけじゃがいも、かぼちゃの順に重ならないように広げます。その上に鮭を載せて酒、昆布出汁を回しがけ塩を振って蓋をし、5分蒸し焼きにします。
- 2.の蓋を取ってチーズを散らし粗挽きブラックペッパーを振って再度蓋をして1分蒸し焼きにすればできあがり。
【一口メモ】
- 焼き野菜と魚介を合わせた定番のチーズ焼きですがフライパンひとつでお手軽にできるところがうれしいですね。味付けはコンソメの素等を使わずにシンプルに塩にしました。
- ポイントは酒と昆布出汁で蒸し焼きにすること。蒸気で火を通すのでほくほく感が保たれます。
- 人参、玉ねぎ、きのこ類など冷蔵庫のあり合わせと相談して工程2.のタイミングで一緒に入れましょう。にぎやかな1品になりますよ。