「うまい、安い、早い」
と言えば誰もが知っている吉野家のキャッチフレーズです。

けど実はこれがキャッチフレーズに定められたのは2000年以降のことらしいのです。
吉野家が急成長を遂げた1970年代のキャッチフレーズは
「早い、うまい、安い」
だったそうな。
って、たいして変わらんじゃんと笑うなかれ。
このキャッチフレーズの変遷が吉野家の経営方針の変遷を如実に表しているのです。

飲食店としてこの3つのフレーズはどれも大事。
けどどれが一番大事かというと……
そう、フレーズの順番は店の運営における優先順位なのです。
つまり1970年代の吉野家は「早い」を最優先に考えて急成長を遂げたわけです。
「早い」というキャッチフレーズは一見「お待たせしませんよ」という客向けのメッセージに読み取れますが経営観点から見れば回転率が高いということ。

つまり1時間内に食べて行ってくれるお客さんの人数を増やせるということで純粋に利益向上に繋がる要素だったりします。
そのために当時の吉野家はファストフード店の草分けとしていろいろなテクニックを生み出しています。
商品を牛丼一本に絞って客からの注文をシンプルにしたこと。
セントラルキッチン方式を採用して一か所で牛丼をまとめて作って配送することで店舗での調理手順をシンプルにしたこと。

これは味の品質をキープするのにも役立ちます。
食材も牛鍋では定番だった豆腐やたけのこなどをなくして牛肉と玉ねぎのみとしたこと──これにより丼によそうスピードが上がります。
調理や盛り付けの手順を確立し社内で訓練を受けた従業員(=社員)を店に立たせたことなど。
その後、他のファストフード店でも採用された様々なアイデアが盛り込まれていました。
それ以前の話として根本的なところである要素が回転率の速さに貢献したんじゃないかなと僕は考えています。

それは──売っている商品が牛丼だったことって、「それを言っちゃあおしまいよ」と言うか本末転倒な気がするのですが牛丼はハンバーガーよりもフライドチキンよりも注文からサーブまでの時間が極端に短い商品なのです。
ご飯を盛る、牛丼をよそう、はいご賞味あれ。

この配膳のクイックさがそもそも最強武器なんですよね。
これはファストフード店に限らず他の飲食店でも言えることです。
例えば居酒屋に入って一品目を注文する時、お腹がむちゃくちゃ空いていてなんでもいいから早く食べたいという気分なら煮物を注文することをおススメします。
串焼きにしろ、唐揚げにしろ、注文を受けてから調理にかかるのでそれなりに待ち時間が発生するのです。

その点、煮物は注文を受けてから煮こみ始める……
わけはなくて鍋の中で完成品がスタンバっていますからそれをよそって出すだけ。
秒で割り箸を割ることができます。
例えばこんな小鉢料理がお品書きに並んでいたら空腹の時は迷わず
「とりあえず『牛バラ肉と大根の味噌煮込み』ちょうだい」
なんてオーダーをすることをおススメします。
【材料】(1人分)
-調理時間:24分-
- 牛バラ肉:100g
- 大根:2cm
- 玉ねぎ:1/4個
[煮汁パートA]
- 牛ダシダ:なければ本だし小匙1+中華だしの素小匙1
- 白ワイン:25g(大匙1+小匙2)
- 水:150cc
- 昆布出汁の素:小匙1/2
- 三温糖:10g(大匙1)
- 味噌:15g
【作り方】
- 大根を下茹でする湯(分量外)を沸かします。待っている間に大根は7mm厚のいちょう切りにします。湯が沸いたら大根を加えて5分下茹でし、ざるに揚げて水気を切ります。
- 1.と並行して別鍋に白ワインを入れて煮切り(コンロで温めて火を付けてアルコールを飛ばす)ます。これに水、昆布出汁の素、三温糖と細切りにした玉ねぎを加えてひと煮立ちさせます。火を弱火にして蓋をし、10分煮ます。
- 2.をざるで濾して煮汁と玉ねぎを分けます。煮汁を鍋に戻し、牛ダシダを加えて溶かし、生姜の細切り、味噌を加えて混ぜます。更に食べ易い大きさに切った牛肉と1.の大根を加えて強火にかけ色が変わったら弱めの中火(煮立たない程度の火加減)にして蓋をせずに10分煮込みます。
- 3.に玉ねぎを戻してざっとかき混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- 味的には味噌バージョンの牛丼です(ご飯がないので牛皿か)。ちょっと甘めですがほっこり優しい味です。
- 辛いのが平気な方は七味唐辛子を振ると寒い夜にぽかぽか体が温まる一杯になりますよ。
- 手持ちがあれば人参、牛蒡などの根菜、椎茸、しめじなどの茸類も加えてみてください。味がより複雑になって栄養価も高くなります。

