椀物が料亭の華ならば、居酒屋の華は──揚げ物だと僕は思います。
山盛りの若鶏の唐揚、バラエティー豊かな串揚げ、天ぷらにシーフードフライ。
まだジュージュー音を立てている揚げ物の皿が運ばれてきただけでテーブルが華やぎます。
肉も魚も野菜も他の調理法では味わえない高い熱、サクサクの食感が楽しめる──イメージしただけでわくわくしちゃいますね。
そして揚げ物は普通の調理法では食べられなかった食材や肉の部位も美味しく食べられるようにしてくれるのです。
鶏の軟骨なんて揚げ物がこの世になかったら捨てるしかなかった部位だったんじゃないかな。
ところで、このレシピでは市販の唐揚げ粉を使っています。
中には
「そんなの邪道だ。わざわざレシピに書く意味がない」
とお叱りになられる方もいらっしゃるかもしれません。
けどね、例えば僕の手持ちのカレーのレシピの大半は市販のルウを使うことを前提にしています。
それだって人によっては
「そんなの手作りカレーとは呼べない。ちゃんとスパイスを吟味して調合するところから…以下略」
という人もいるでしょう。
でも、同じルウを使っても作る人によって味に差が出ます。
どうせなら美味しく作って欲しい──そう思って僕はレシピを書き続けています。
ごく最近、ほんのちょっとした偶然から市販の唐揚げ粉を使った軟骨の唐揚げのコツを掴みました。
自分で言うのもなんですがそれまで作っていた軟骨の唐揚げとは別物と言いたくなるくらい格段に美味しくなりました。
そんな秘密のテクニックを書き残しておかないなんてもったいないじゃないですか。
ということでレシピを書きます。
【材料】(2人分)
-調理時間:10分-
- 鶏軟骨の唐揚げ(ひざ、やげんどちらでも):200g
- 片栗粉:6g(小匙2)
- 薄力粉:6g(小匙2)
- 市販の唐揚げ粉:適宜
- 揚げ油:適宜
【作り方】
- 揚げ油を180度に温めます。待っている間に片栗粉、薄力粉、唐揚げ粉を合わせてよく混ぜます。これを軟骨にまぶします。
- 揚げ油が温まったら軟骨の半量を投入して3分揚げます。揚がったら引き上げで同じ要領で残りも揚げればできあがり。
【一口メモ】
- 片栗粉と薄力粉のお陰で軟骨はしっかりした衣をまといます。その衣に守られて火の通りがマイルドになり柔らかくジューシーな唐揚げにに仕上がるのです。そして分厚い衣はさくさくの食感。まさに一挙両得な調理法。唐揚げ粉オンリーだと素揚げに近い調理になってしまうのでこうはいきません。
- 実は他の料理を作っていて片栗粉が余ってしまったのです。捨てるのももったいないので軟骨にまぶしてみたというのがこの調理法の誕生秘話だったりします。偶然は時に思わぬ天啓を連れてきてくれたりするものですね。
- 鶏もも肉や胸肉は肉厚なので醤油をベースにしたタレをしっかり吸い込んで受け止めてくれます。けど軟骨は肉の少ない部位です。その特性から唐揚げには液状のタレより粉末の唐揚げ粉のほうが合う気がしています。