江戸初期の茶人に北村 幽安という人がいます。
1648年生まれということですから関ケ原の合戦から48年後ですね(ちなみに関ケ原の合戦は1600年。語呂合わせがなくても暗記できる稀有な年号の一つです^^;)。
彼が作った茶室は今でも残っていて大津市の指定文化財、国の名勝に指定されています。
この人、茶道以外に食にも精通していて鋭敏な味覚の持ち主だったようです。
ある時、下男が汲んできた水を口にして彼が指定した清水ではなく横着をして近場で汲んできたことを言い当て叱責したとか。
なんか海原雄山みたいな人だなぁ。
彼は酒、味醂、醤油を1:1:1に合わせた浸けダレに柚子の輪切りを合わせたものに鮒を数日漬け込み水気を切って焼くという料理を考案します。
世に言う幽庵焼き(柚庵焼き)の誕生です。
実はこの時代にこの料理を考案したのってすごいことなのです。
醤油の起源とされるたまり醤油が誕生したのは1500年代。
北村幽安の時代にはまだまだ調味料としては一般的でなく塩気を加えるとすれば味噌しかなかった頃に醤油を使っているのです。
また、みりんの誕生もやはり戦国時代。
当時は高級酒の位置づけで料理の味付けに使うという発想はなかったはず。
更に、和食の調味の黄金律である酒、味醂、醤油を1:1:1という配合を編み出している。
意地の悪い見方をすれば後に改良を重ねて今のレシピになったのではと考えた方が自然な気もするのですが、かなり先進的な料理
センスを持った人だったのは間違いなさそうです。
【材料】(2人分)
-調理時間:20分-
- ぶりの切り身:一切れ
- 塩麹:適宜
- 柚子果汁:5g(小匙2)
【作り方】
- 塩麹と柚子果汁を合わせてよく混ぜます。これをぶりの切り身によくまぶして10分置きます。
- 魚焼のグリルで10分焼けばできあがり。
【一口メモ】
- え? それだけ? と言われそうなくらい単純なレシピですが柚子の香りがぷんぷんしてすっごく美味しいんですよ。
- 本来の柚庵焼きは醤油、味醂、酒を同量合わせて柚子の輪切りを加えたものに数日魚を漬け込みます。どれも風味の強い調味料なのでこれくらい浸け込まないと柚子の香りが立って来ないのですが、それを匂いのしない塩麹に置き換えることで短時間で香り付けしました。
- wikipediaを引用するとアマダイ、マナガツオ、イナダ、サワラ、カマスなどで作れるようです。あと、鶏肉の柚庵焼きもお薦め。もも肉よりは胸肉かささみが良い感じ。
- この料理は江戸初期に北村 幽安によって考案されたものですが、醤油や味醂が誕生して間がない頃に生まれました。もしかしたら日本で初めて醤油や味醂を使った料理なのかもしれません。