いきなり数学の話をします。
ここに長さXの直線があります。
この線上に1点を設けて長い線と短い線にに分割するとします。
見た目が安定していて最も美しく見える点の位置はどこでしょう?(注意、なぞなぞの問題じゃないのでダジャレとかは関係ないです)答えを言いますとこんな感じです。
「長い方の線の長さ」:「直線全体の長さ」=「短い方の線の長さ」:「長い方の線の長さ」となる1点が最も美しく感じられるポイントです。
具体的な数字で言えば1:(1+√5)÷2(約1.618)の比率。
これを黄金比と呼びまして美術や建築の世界にはこの黄金比が溢れています。
例えばパルテノン神殿の柱やピラミッド、ミロのヴィーナス、モナリザの顔の縦の長さと横の長さもこの黄金比になっているそうです。
もっと身近なところならiPhoneに付いているリンゴのロゴマークの曲線もこの黄金比に基づいてデザインされていると言われています。
かように黄金比は美術界にはなくてはならない重要な数字ですが実は和食の世界でも黄金比と呼ばれるものがあります。
その比率で調味料を合わせてやれば間違いなく美味しい料理になる魔法の数字。
その比率とは──醤油:酒:味醂:砂糖=1:1:1:1。
これを知っていれば毎日の晩御飯はぐんと美味しくなります。
ためしにちょっとネットで和食のレシピを調べてみてください。
この比率を使っているものが大量に見つかると思います。
けどね、今は昔、江戸時代には別の黄金比が人気だったらしい。
その名は「八方」。
その比率は出し汁:醤油:酒=6:1:1。
全部足すと8になるのが名前の由来です。
この八方を使った豆腐料理は「倹約料理番付」で「大関」を獲ったという記録も残っています。
当時は横綱という階級はなかったので大関=一等賞という意味。
そんなことを聞かされたら食べずにはいられないじゃないですか。
ということでさっそく作ってみました。
【材料】(1人分)
-調理時間:5分-
- 絹ごし豆腐:半丁
- 大根おろし:1cmの輪切り分
[出汁パート]
- 昆布出汁:60g(60ml)
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 酒:10g(小匙2)
- 片栗粉:3g
【作り方】
- 豆腐を縦に長くうどんのように細く切り丼に入れます。これに熱湯(分量外)を注いで1分置き湯通しをします。待っている間に大根おろしを作りましょう。
- 1.と並行して[出汁パート]を盛り付ける器に合わせてよく混ぜます。これを電子レンジの400ワットで30秒チンします。とろみが偏らないように再度よく混ぜて再度電子レンジに投入。400ワットで30秒チンします。
- 1.をざるに揚げて湯を切り2.の器に入れます。その上に大根おろしをちょんと載せればできあがり。
【一口メモ】
- はんなりと優しい味。ちょっと薄味に感じるかもですがこれが江戸の町で人気だった八方(出し汁:醤油:酒を6:1:1のつゆ)の味なのです。
- [出汁パート]の量を加減したいときは6:1:1をキープするように加減しましょう。ちなみにこの比率は重さではなく体積ですので計量カップや計量スプーンを使うのが吉です。キッチンスケールで計るときは材料表のグラム数を参考にしてください。
- 八方のつゆに浸した豆腐なので「八方豆腐」という名前が付けられました。名前の冠にある「草」は草野球などと同じ語源でお手軽な、アマチュアのというほどの意味だそうです。これ以外に「真の八方豆腐」という御大層な名前の料理もあってそれと区別するための呼び名らしい。
- つるりとしたのどごしが身上なので使う豆腐は絹ごしがおススメです。