神戸名物「氷すいか」
その日、僕と先輩はとある喫茶店の店先に麗麗と飾られたポップの文字に目を奪われていました。
僕がまだ大学生だった頃、先輩は前年に大学を卒業されていて夏休みで神戸に帰省していた僕を酒に誘ってくれていたのです。
1980年代半ばの話ですね。
「氷すいかって聞いたことあります?」と僕。
「いや、初めて聞いたわ」と先輩。
二人とも神戸生まれの神戸育ちなのですがこの謎の神戸名物に心当たりがない。
せっかくなので店に入って注文してみました。
出てきたのは三角形にカットされたすいかを器の底に敷いてその上にかき氷がてんこ盛りになっている氷菓。
いや、美味しかったんですよ。
美味しかったけど……
いつからこれが神戸名物になってんと終始笑い合いながらせっせとかき氷をつついていました。
世の中には地元の人がほとんど誰も知らない地元の名物というものがあるらしいということを身を持って知った体験でした。
そういえば大学時代を過ごした岡山の名物にえびめし(デミグラス風味の海老焼き飯)やトンカツラーメン(まんまトンカツがトッピングされたラーメン)があるなんて知ったのは大学を卒業して二十年以上経ってからのこと。
学生時代は僕も含めて周囲の誰の口の端にもそんな料理の話題は上りませんでした。
マイナーだったのかあるいは僕が卒業した後に誕生した名物だったのかな。
似た話で京都の人は夕飯のおかずのことを「おばんざい」とは言わないと聞いたことがあります。
テレビのグルメ番組などでは「普段着の飾らないおかずのことを京都の人はおばんざいというのです」なんて解説されたりしていますが当の京都人がそれを聞いてもきょとんとした顔になって「いや、おかずはおかずって言うけど」なんておっしゃるらしい。
「だいたい普段食べてるようなおかずをなんでお店で高いお金出して食べへんとあかんの? そんなんうちで自分で作って食べたらええやん」
なんて至極もっともな意見もちらほら。
「京都のおばんざい」も地元民の知らない間に全国区で知名度が上がっちゃった名物なのかもしれません。
「けど煮物のことを「〇〇の炊いたん」ってのは普通に言うなあ」とのことなのでこのレシピの料理名は京都人も認知できるおばんざい(但し、京都人はおかずという)のひとつと言えるかもしれません。
【材料】(1人分)
-調理時間:15分-
- タラ:1切れ
- 酒:15g(大匙1)
- 大根:2cm
- ごま油:4g(小匙1)
[調味料パート]
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:4.5g(大匙1/2)
- 水:80g(80ml)
[仕上げパート]
- 水溶き片栗粉:3g(小匙1)分
【作り方】
- タラは一口大に切って酒:15g(大匙1)を振ります。大根は横に三等分し、更に半月切りかいちょう切りにします。
- フライパンにごま油を入れて中火にかけます。これに大根を重ならないように並べて片面1分ずつ焼きます。
- 2.に[調味料パート]を加えてひと煮立ちさせます。更にタラを上に並べて蓋をし、5分蒸し煮にします。
- 3.に[仕上げパート]を回しがけてとろみを付ければできあがり。
【一口メモ】
- ちょっと濃い目の味付けですが「The.おばんざい」って感じでなんか気持ちがほっこりするお惣菜です。
- お弁当用に作ったので工程4.でとろみを付けていますが夕飯のおかずにするのであれば割愛しても構いません。
- お魚は白身の魚なら何でもありですのであり合わせでどうぞ。大根はジャガイモに置き換えても美味しく作れます。