動物の数え方で不思議なものがあります。
なぜかウサギは1匹、2匹でも1頭、2頭でもなく1羽、2羽と数えるのです。
なんでそうなった?
という理由については諸説あるようですが一説によると4つ足の獣を口にすることができない僧が「あれは二つ足でぴょんぴょん跳ぶから(飛ぶから)鳥の一種なのだ。
これからは1羽、2羽と数えなさい」と言って「2つ足の鳥だから食べてもOK」とこじつけたと言われています。
似た話で僧はお酒を飲んではいけない戒律があるのですが
「空海(弘法大師)様はお酒を薬として用いることは認めておられる。これは般若(サンスクリット語で知恵という意味の言葉)を戴くための薬だから飲んでもOK」
とか言って般若湯と称したお酒を飲んだとか。
美味しんぼにも佛跳牆(ファッチューチョン)と呼ばれるスープが登場する回がありましたね。
料理名の由来は「あまりにも美味しそうな匂いがするので修行中の僧ですら塀を飛び越えて来る」なのだとか。
……。
って、どんだけ坊さんは食い意地が張ってるんだよw
とはいえ人間だもの。
たまにはお肉が食べたい、酒も飲みたいと思っちゃう気持ちを責めたりはできません。
そういえば6月頃に劇団アフリカ座が『超(スーパー)ボウズウォーズ~坊主だって焼肉食べたい~』という公演をやっていたなw
精進料理に扱われる食材の中にもこの「僕らだって肉が食いたい!」という想いが詰まったものがたくさんあります。
例えば高野豆腐。
味がしっかりしみて弾力のある食感はなんか肉っぽい。
あるいは小麦粉から作るグルテン・ミート。
麩に加工して焼いたり煮たりもできるし唐揚げなどの揚げ物にもできます。
あるいは湯葉。
豆乳を煮詰めた時に表面にできる膜ですが巻物のがわにしたり鶏肉の代用品として調理できます。
ナッツや豆類、乾燥野菜に根菜などは食感がしっかりしていて軟らかい料理が多い精進料理の口寂しさを和らげてくれます。
そして──なんといってもこんにゃく。
弾力のある食感で火を通せば肉に似た歯ごたえを出せるのです。
あと──椎茸などの茸類。
くにゅくにゅとした食感、出汁昆布の20倍とも言われるうまみ成分は汁物にすれば動物性の出汁に負けない旨味を挽きだせます。
大ぶりなものはステーキ風の焼き物にしたり天ぷらなんかも美味しいですよね。
この小鉢料理の主食材はこんにゃくと椎茸。
一見地味に見えるお惣菜ですがその内には
「僕らだって肉が食べたい!」
というお坊さんの熱い思いが詰まっているのです。
【材料】(1人前)
-調理時間:10分-
- こんにゃく:半丁
- 椎茸:2本
- サラダ油:6g(大匙1/2)
[調味料パート]
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 酒:15g(大匙1)
- 砂糖:6g(小匙2)
- 鰹出汁の素:小匙1/2
- おろし生姜:ひとかけ分
- 水:30g(大匙2)
- 鷹の爪(小口切り):半本分
【作り方】
- こんにゃくを下茹でするお湯(分量外)を沸かします。待っている間にこんにゃくは大き目のスプーンでそぐようにして一口大に切ります。湯が沸いたらこんにゃくを加えて中火で5分煮ます。終わったらざるに揚げて湯を切ります。 ※あく抜き不要と書かれているこんにゃくを使う場合は下茹での手順は省いてください。
- 1.をやっている間に椎茸の石突を落として軸と傘を分けいずれも細切りにします。
- フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これにこんにゃく、椎茸を加えて軽く焼き色が付くまで炒めます。
- 3.に[調味料パート]を加えて絡めながら水気がほぼなくなるまで炒めればできあがり。
【一口メモ】
- ちょっと濃い目の味付けにしてあるので冷めても美味しいです。夕飯のおかずだけでなくお弁当のお菜にもぴったり。
- これは冷蔵庫のありもので作ったおかずですが肉のおかずにも負けない満足感があると思います。こんにゃくや茸類は常備しておくとお肉の在庫が乏しくなった時の代わりとしてとても重宝するんですよ。
- [調味料パート]の醤油と酒を焼き肉のタレに変えればエスニック風のお惣菜として楽しめます。オイスターソースやXO醤と豆板醤を使うと中華風になりますね。こういったアレンジの場合はスライスしたにんにくをきつね色に焼いてプラスすると風味がぐんと上がりますよ。