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豚肉の料理(和食)

豚ロースと青梗菜のみぞれ煮

《貴方の愛読書を教えてください》──そんな質問をされたら僕は迷わずこう答えます。

ジーン・ウェブスター作「あしながおじさん」だと。

僕の読書歴はひらがなが読めるようになった4歳の頃に始まります。

字が読めるのが嬉しくて買ってもらった絵本を片っ端から読んでいた覚えがうっすらと記憶に残っています。

それから数十年。

61歳になった今までに何万冊の本を読んだかわかりませんが、ただ1冊を選べと言われたら迷わず僕はあの本を選びます。

けれど、どんなところが好きなのですか?

と改めて訊かれるとなかなか巧く答えられないんですよね。

なんでなんだろう。

既読の方も多いと思うので今更な気はしますが「あしながおじさん」は孤児だったヒロインが匿名の篤志家に援助されて大学に通う話です。

彼女は、その篤志家が孤児院を出ていく時の後ろ姿の、伸びた影しか見ておらず、その長い足のシルエットから彼を「あしながおじさん」と名付けました。

彼が援助の見返りに求めたことはたったひとつ。

毎月、彼に大学の様子を手紙で知らせること。

物語は全編、彼女があしながおじさん宛にキャンパスライフを綴った手紙という体で語られます。

物語の中盤、ヒロインが扁桃腺を腫らして寝込んでしまう場面があります。

ベッドの上で改めて自分の孤独を思い知った彼女はあしながおじさんに八つ当たりめいた手紙を書いてしまいます。

「私は毎月毎月、手紙を書いているのに、いくらお願いしても貴方は一通の手紙も下さらない。

これからは私も授業の内容を事務的にお知らせする手紙だけを書きます」

なんてね。

その数日後──彼女のもとにピンクのバラの蕾がみっしり詰められた白い箱が届きます。

箱にはカードが添えられていて少し読みづらい左下がりの字で丁寧なお見舞いの言葉がつづられていました。

そのカードを抱きしめて、二十歳に近い娘は赤ん坊のように泣きました──というくだりを読んで、中学生だった僕も大泣きしました。

さすがに買ったばかりの本を抱きしめて台無しにはしませんでしたけど(笑)

僕がこの本を好きな理由は僕と主人公の感性の相性が良くて共感を通り越して心が共鳴するような一体感を味わえたからじゃないかなと分析します。

だからこの扁桃腺の件(くだり)でも彼女の心情がどストレートに伝わってきて感極まってしまったのでしょう。

どんなに陽気な人でも、前向きな人でも、体が弱っている時には心も沈むものです。

そんな時に誰かからもらう温かいメッセージはたとえカード一枚きりの簡素なものであっても心の支えになってくれるものです。

同様に時に音楽や小説やアニメは弱った体や心にどんな薬より効くことがあります。

そして──一皿の料理もまたしかり。

過日、夕飯の献立を考えていて冷蔵庫を覗いたら豚肉と青梗菜がありました。

これを組み合わせた献立で一番に思い付くのは炒め物だと思うのですがちょっと胃の調子が思わしくない。

「煮物というのも案外ありなんじゃないかな」

と思いまして大根おろしを加えたこんな料理を作ってみました。

体に沁みて少し元気になった気がします。

──、久しぶりにまたあしながおじさんを読み返してみようかな。

【材料】(1人分) 

調理時間:15分-

  • 豚ローススライス:80?100g
  • サラダ油:6g(大さじ1/2)
  • 青梗菜:1/2株
  • しめじ:1/4株 または他の茸類
  • 人参(3mmの輪切り):3枚
  • 大根輪切り:2cm
  • 柚子胡椒:チューブ2cm分

[下味パート]

  • 塩、ブラックペッパー:少々
  • 片栗粉:9g(大さじ1)

[煮汁パート]

  • 水:80ml
  • 濃口醤油:18g(大さじ1)
  • 味醂:6g(小さじ1)
  • 砂糖:3g(小さじ1)
  • オイスターソース:6g(小さじ1)

【作り方】

  1. 豚肉は食べやすい大きさに切って[下味パート]をまぶしておきます。青梗菜はざく切りにして葉と茎を分けておきます。しめじは小房にほぐします。人参はいちょう切りか細切りにします。大根はすりおろしておきます。
  2. フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これに豚肉を加えて色が変わるまで炒めます。さらに青梗菜の茎、しめじ、人参を加えて1分炒めます。
  3. 2.に[煮汁パート]を加えてひと煮立ちさせます。蓋をして弱火で2分煮込みます。蓋を取って青梗菜の葉と大根おろしをおろし汁ごと加え、再度煮立ったら火を止めます。仕上げに柚子胡椒を加えてひと混ぜすればできあがり。

【一口メモ】

  • この食材の組み合わせだと炒め物が定番だと思うのですがなんだかもうちょっと胃に優しいものが欲しくてこの料理をチョイスしました。疲れた時、落ち込んでいる時、何かを迷っている時、ほっこり心まで抱きしめてくれるような優しい味ですよ。
  • [煮汁パート]で使っている調味料は参考にしたレシピでは麺つゆを使っていました。ただ、うちは麺つゆを常備していないので、蕎麦の返しの配合を参考に醤油、味醂、砂糖(返しを作る時は白ザラメを使ってます)を合わせて風味に奥行きを出すためにオイスターソースを少し加えています。もちろん、めんつゆをお持ちならそれを使って時短するのもありですよ。
  • 仕上げに入れる柚子胡椒が香りの良いアクセントになっています。もう少し柚子の香りを楽しみたい場合はポン酢を小匙1(5g)ほどいっしょに加えてください。
  • 野菜を楽しむ煮物です。このレシピに書いた野菜以外にも、玉ねぎや山菜、茄子などのあり合わせの野菜を加えると、摂れる栄養素が増えるのでおすすめです。

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