2022年の秋頃、テレビ東京で「ザ・ファーストレシピ」という番組をやっていたみたいです(僕はテレビを持っていないのでネットで番組紹介を見かけただけですが)。
なかなか面白いコンセプトのバラエティーショウでスタジオに一流の料理人をお招きして彼が見たことも聞いたこともない未知の食材を提供。
制限時間内にその食材を使ったフルコースを考えるというものだったみたい。
ちょっと観てみたかったかも。
未知の食材、料理と対峙する──なんて21世紀の今ではなかなか得られない経験かもしれませんが明治初期、文明開化と呼ばれた頃はそんな機会がわりと頻繁にあったんじゃないかなと想像します。
欧米人が持ち込んだ洋食という料理自体が未知だったというだけでなく獣肉、乳製品など未知の食材がいっぱい到来していましたから。
「で、これはどうやって食べるの?」
なんて困惑する明治人たちの顔が思い浮かぶよう──ちょっと見てみたかったかも。
ま、そういう時はとりあえず自分が知っている似たような食材を使った料理を真似てみるというのはごく自然な発想でしょう。
なので、牛肉の食べ方として考案されたのは鍋料理でした。
実は江戸時代も猪や鹿肉などジビエを食べる習慣はいくばくかはあってその食べ方が牡丹鍋や紅葉鍋だったんですね。
ストレートに猪鍋や鹿鍋と呼ばず牡丹(=猪)とか紅葉(=鹿)と隠語で呼ぶ当たりなんか可愛いw
てか、やっぱ隠語を使わないといけないくらいにははばかられていたんでしょうね。
とまれそれを牛肉に転用して牛鍋が誕生しました。
味付けも牡丹鍋同様に味噌を使ったとか(臭み消しの目的もあったみたい)。
牛鍋と言えば牛丼のルーツと言われていますが最初はだいぶ違ったテイストだったみたいですね。
味噌味の牛丼ってちょっと食べてみたいかも。
実は江戸時代にも近江牛の味噌漬けなんて名物はあったので(食べたのは将軍とか偉い人だけだったみたいですが)獣肉に味噌というのは今より馴染み深かったのかもしれません。
牛肉に比べれば猪の品種改良版である豚肉はもうちょっととっつきやすかったのかな。
「これは猪だと思えば食べられないことはない」
なんて自分に言い聞かせながら箸を伸ばした明治人もいたかもしれませんね。
豚肉はその後、カツレツやトンカツのように洋食屋を背負って立つ看板料理に育っていきますが明治の黎明期、未知の食材だった豚肉のファーストレシピは案外、牛肉を真似た味噌漬けだったかもしれません。
【材料】(1人分)
-調理時間:20分-
- 豚ヒレ肉(ブロック):150g
- 付け合わせ野菜:冷蔵庫のありあわせを適宜。今回は大葉とミニトマト。
[漬けダレパート]
- 味噌:9g(大匙1/2)
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:6g(小匙2)
- 豆板醤:6g(小匙1)
- おろしにんにく:ひとかけ分
【作り方】
- 豚肉は5mm厚の小口切りにします。[漬けダレパート]を合わせてよく混ぜます。豚肉を重ならないようにバットに並べて[漬けダレパート]をかけて良くまぶします。上からラップをかけて圧着し冷蔵庫に入れて半日寝かせます。
- 1.の豚肉からキッチンペーパーで[漬けダレパート]をふき取ります。魚焼きのグリルで片面10分、ひっくり返して5分焼けばできあがり。お皿に盛り付けて付け合わせの野菜をあしらいます。 ※味が抜けるので水洗いはせずキッチンペーパーでふき取ってください。
【一口メモ】
- 日本人の舌に馴染みやすい味付けの肉料理だと思います。21世紀を生きる僕らが戴いても美味しいですが、これなら明治時代の人でも食べられるんじゃないかなって思えるテイスト。
- [漬けダレパート]はわりとギリギリの量に抑えましたがもう少したっぷり目に作って漬け込んだ方が良いかも。残った漬けダレは出汁で伸ばしてちょっと変わり種の味噌汁にするなど捨てずに活用してください。
- あしらいにする野菜は山菜を取り合わせた純和風でも生野菜を見繕ったサラダ風でも合います。けっこうこの料理は汎用性が高いかも。
- そのまま食べても良いですが軽くトーストしたパンに辛子バターを塗ってサンドイッチのスタイルで戴いても美味しいですよ。