2026年春アニメにオンエアされた作品に「とんがり帽子のアトリエ」という作品がありました。
魔法使いにあこがれている少女が魔法の修行を通して成長していく物語です。

毎週楽しみに観ていたのですが、同作に出てくる魔法の設定がちょっと面白いんですよね。
従来、魔法は生まれつき備わった能力で、その能力を持たない者は願っても魔法使いにはなれないと考えられていました。
けれど、実は決まった手順で魔法陣を描けば誰にでも行使できるもので、魔法使いはそれをずっと隠していたという秘密が物語の冒頭に明かされるのです。

まあ、ここに出てくる魔法はフィクションですが、現実世界でも似たようなことはあります。
例えば昭和の昔、ステージの上で歌を歌えるのは選ばれた「歌手」という職業の人たちだけで、それ以外の人は「観客」であり続けるしかありませんでした。
ところが、カラオケや動画投稿サイトの登場で、今や誰でもステージに上がって世界中に歌を届けられるようになりました。
小説家になりたければ昔は出版社に原稿を持ち込んだりコンクールで賞を取ったりして、出版社に認めてもらえなければ本が出せませんでしたが、今では投稿サイトに自由に投稿できて、そこから人気作家になる人も少なくありません。

料理の世界も同様で、今と昔ではハードルがずいぶん変わりました。
昔はお店で出される料理は「料理人」と呼ばれる人たちしか作れないもので、お母さんが作る家庭料理とは別物だと考えられていた節があります。
お店では秘伝の技術や門外不出のレシピが使われているから真似できないんだよ──なんて言われていましたっけ。

ところが……。
インターネットの普及でその「秘密」のレシピや料理のコツがどんどんバレてしまったんですね。
中には「なあんだ、これなら家で作れるじゃん。今度作ってみよっと」なんて言われるものも少なからずありました。
そう、お店の料理は「魔法」ではなくなってしまったのです。

ホタルイカの沖漬けは本来、獲ったばかりのホタルイカをその場で漬け込むので漁師さんにしか作れない料理で、食べたければお店で売っているものを買ってくるしかありません。
けどね、生のホタルイカの入手は無理としても使っている調味料は単純なので、実はボイルホタルイカを使えばわりとそれっぽいものが作れちゃうのです。
過日、今日紹介するレシピで試作してみたら、めちゃ美味しい。
「もうこれで良いじゃん」と思ってしまいました。
またひとつ、魔法が解けた気分。

じゃあ、インターネット時代には飲食店や料理人に存在価値はなくなったかというと、そんなことはないと僕は思います。
件の「とんがり帽子のアトリエ」で、魔法を行使するための魔法陣はフリーハンドで描きます。
どれだけ綺麗に正確に描けるかで魔法の威力や精度が変わります。
だから素人が見よう見まねで魔法陣を描いても、何年も修行を積んだ魔法使いには遠く及ばないのです。
料理にしても同じこと。

家でたまに作るだけの人と何年も店の厨房に立って同じ料理を何千回、何万回と作り続けた料理人では調理の練度が雲泥の差なのです。
だからレシピを知っている料理であっても「たまにはプロが作ったやつを食べたいな」と考えて僕らはお店に足を運ぶと思います。
【材料】(1~2人分)
-調理時間:2分(調味料を冷ます時間、漬け込む時間は含めていません)-
- ボイルホタルイカ:100g
- 濃口醤油:12g(小さじ2)
- 酒:15g(大さじ1)
- 味醂:12g(小さじ2)
- 昆布だしの素:小さじ1/2
【作り方】
- 器に酒と味醂を入れて電子レンジの600ワットで30秒温めてアルコールを飛ばします。これに濃口醤油と昆布だしの素を加えて常温まで冷まします。
- 1.にホタルイカを加えて冷蔵庫で1時間漬け込めばできあがり。時間に余裕があれば一晩漬け込むとより味が馴染んで美味しくなります。
【一口メモ】
- 使っている調味料はシンプルですがわりとそれっぽい味に仕上がりました。早い時間に漬け込んでおけば味がしっかり染みて晩酌の楽しみがひとつ増えますよ。
- ホタルイカの沖漬けは本来、名前の通り漁師さんたちが獲ったばかりのホタルイカの鮮度を保つためにその場(船の上)で醤油や酒に漬けた料理です。なので食べたければ買ってくるしかないのです。けど、使っている調味料はありきたりのものなのでボイルホタルイカを使って似たものは作れちゃうのです。
- 甘めの味がお好きな方は砂糖を3g(小さじ1)ほど加えてください。
- お好みで千切りにした生姜や実山椒を加えて佃煮風のテイストにしても美味しいですよ。

