誰もが恐れる札付きの不良が道で転んだおばあさんを助け起こす。
そのお婆さんに向けた優しい笑顔にヒロインが胸をキュンとさせる──そんな王道エピソードは、往年の少女漫画でよく見かけたものでした。
このエピソードのようにある対象の普段との印象の違いに、ときめきや魅力を感じる現象を指す"ギャップ萌え"という言葉は1990年代にオタク界隈から生まれました。
けど、実は名前が付いていなかっただけでそれよりずっと前からこの現象はドラマや漫画によく登場していたと思うんですよね。
越後のちりめん問屋のご隠居が実は先の副将軍だったという水戸黄門だってある種のギャップ萌えと言えなくはないでしょう。
"ギャップ萌え"と聞いて僕がすぐに思い浮かべるのはジャッキー・チェンの初期のカンフー映画に登場していたお師匠様かな。
飲んだくれて足取りすら怪しそうなのにジャッキーのハイスピードな拳をこともなげにかわす姿はなかなかに萌えました。
お師匠様を演じたユエン・シャオティエンは太平洋戦争が終わった頃から香港映画界で武術指導者として活躍されたガチの実力者。
その体さばきがあってこそ、ジャッキーとのアクションも映えたのでしょうね。
料理の世界でも"ギャップ萌え"と言える現象はしばしば見かけます。
一見、お洒落なカフェ風のお店なのにメニューに並んでいるのは大衆的な居酒屋料理、あるいはその逆で店内は純和風のたたずまいなのに出される料理は本格的なフレンチ──なんてシチュエーションは想像するだけで胸が躍ります。
けど何といっても、料理のギャップ萌えの王道は味そのものかな。
例えば、関西人が東京の寿司屋に行って驚くのは卵焼き。
そう、東京の卵焼きは甘いのです。
人によってはその味にハマって"ギャップ萌え"と感じますし、「なんで玉子焼きが甘いねん」とお気に召さなかった人にとっては"ギャップ萎え"になります。
北海道の白いカレー、静岡の真っ黒なスープに使ったおでん、名古屋の冷やし中華にはマヨネーズがかかっているなどなど、初見では箸を伸ばすのを躊躇させる見た目をした料理が世の中にはけっこうあります。
ギャップというなら今日のこの炒飯のギャップもなかなかのもの。
見た目からしてなんか赤っぽい。
そして、一口食べてみると……。
すっぱい! 爽やかなトマトの酸味が口いっぱいに広がります。
けど、意外に旨くてヤミツキになっちゃいますよ。
トマトが旬の夏にこそおすすめしたい1品です。
【材料】(1人分)
-調理時間:9分-
- ご飯:1膳分
- 卵:1個
- オリーブオイル:12g(大さじ1)
- トマト缶(ダイスカット):100g
- ウィンナーソーセージ:1本
- 玉ねぎ:1/4個
- バター:5g
[味付けパート]
- 塩:2g(小さじ1/3)
- 粗挽きブラックペッパー:少々
- オレガノ:少々
- ガーリックパウダー:少々
【作り方】
- ウィンナーソーセージは縦半分に切ってさらに5mm厚の小口切りにします。玉ねぎはみじん切りにします。卵はよく溶いておきます。
- 中華鍋かフライパンにオリーブオイルを入れて強火にかけ煙がうっすら立つくらいまで温めます。これに卵を流しいれざっとかき混ぜたらご飯を加えます。卵を和えながらご飯がパラパラになるまで炒めます。これを一旦皿に取ります。
- 2.の中華鍋(またはフライパン)を洗わずにそのままウィンナーと玉ねぎを入れて中火にかけ、玉ねぎが透明になるまで炒めます。これにご飯と[味付けパート]を加えてよく和えながら炒めます。
- 3.にトマトを加えて水気がほぼなくなるまで炒めます。仕上げにバターを加えてひと混ぜすればできあがり。
【一口メモ】
- トマトの酸味が際立っています。すっぱい炒飯というのもちょっと新鮮です。
- このレシピではお手軽に[調味料パート]にガーリックパウダーを使っていますが、手持ちがあれば生ニンニクのみじん切りを使ってください。風味がぐんと引き立ちます。
- 具材はほかにもピーマン、コーン、小口切り(厚さ3mmくらいの輪切り)にしたオクラなどの野菜がおすすめです。