僕がまだ駆け出しのSEだった1980年代の終わり頃の話。
あるお客様に導入いただいているコンピュータのバックアップ運用についてご提案に伺いました。
バックアップ運用とは、コンピュータに障害が発生した際に、復旧のためにお客様のデータをテープなどに保存しておき、そこから戻す一連の作業のことです。
ところが、話を始めて間もなく、お客様が渋い顔をなさるのです。
さらに話を進めようとすると、たまりかねたようにおっしゃいました。
「……あの。そういう話はやめませんか? 呼び水になったらどうするんですか」
今なら曖昧な表情を作ってうまく流せたと思うのですが、まだ新人だった僕は、たぶん「こいつ何言ってるんだ」という顔をしてしまっていたと思います(笑)
「呼び水」の元々の意味は、ポンプや配管内の空気を抜くために運転前にポンプに注ぐ少量の水のこと。
この場合、お客様は「コンピュータの障害の話をすると悪い運気(?)を呼び込んで、本当に障害が起きてしまうのでは」とおっしゃっていたのでしょう。
「だから、障害が起きても復旧できるようにバックアップを取っておきましょうという話に来ているんじゃないかぃ」──とは、さすがに言えず、なんとかなだめすかして話を軌道に戻しました。
それでもお客様は、「でも、本当に障害が起きることなんてあるの?」と食い下がってこられたので、「コンピュータも機械ですから、壊れる時は壊れます」と、ニコニコ笑いながら答えた記憶があります。
僕も意地が悪いなぁ(笑)
障害対策を議論する際に、「本当に障害が起きるかどうか」を議論するのは、あまり意味がありません。
重要なのは「起きたらどうするか」です。
口幅ったい言い方になりますが、「杖というものは、転んでケガしてから用意するものではなく、転ぶかもしれないと思ったら、あらかじめ用意しておくものですよ」ということですね。
例えば──生まれてから一度もおにぎりを握ったことのない人は、一度くらい練習しておきましょう。
そうすれば、災害時の炊き出しで戦力になれます。
逆に練習していなければ、ただの役立たず。
足手まといになってしまうかもしれません。
では、もしも災害が起きた時、お米がなく、たまたま買い置きのオートミールがあったなら?
……ずいぶん回りくどいたとえ話にはなりましたが、一度くらいオートミールでおにぎりを作る練習をしておけば、その経験はきっと活きてくると思うのです。
【材料】(2個分)
-調理時間:7分-
- オートミール:60g
- 水:100ml
- (あれば)焼き海苔:2枚
- お好み具材:梅干し、おかか、ツナなど
[調味料パート]
- 濃口醤油:6g(小さじ1)
- ごま油:4g(小さじ1)
【作り方】
- 耐熱皿にオートミールと水を合わせてざっくり混ぜます。そのままラップをせずに電子レンジの500ワットで1分半加熱します。
- 1.とお好みの具材と[調味料パート]をボウルに合わせてよく混ぜ2等分します。
- きちんと重さを計って2等分すればおにぎりの大きさが揃って見た目も綺麗に仕上がります。
- しっかり手洗いをしてから手を水で濡らして2.を三角または俵型に握り、焼き海苔を巻けばできあがり。
【一口メモ】
- お米を使った食べ物の頂点は「おにぎり」だと僕は思っています。オートミールで作れるのかなぁと半信半疑でしたが、意外と普通に握れました。味はもちろんお米とは違いますが、醤油とごま油との相性が良く、これはこれで“アリ”だと思います。
- うちの娘もそうですが「おにぎりをラップなしで握るのは不衛生」と申します。けど昭和生まれで子供の頃から母が素手で握ったおにぎりを食べてきた身としては「自分が食べる分には不衛生も何もあるかいな」と割り切って素手で握っています。ただし、手洗いはしっかりと。
- おにぎりは災害時の炊き出しの定番ですが、数分で作れるオートミールおにぎりは速効性に優れています。電気がない状況でも、カセットコンロなどで煮炊きできれば、鍋にこのレシピの分量のオートミールと水を入れて3分ほど煮るだけで、おにぎりが作れますよ。