『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』のワンシーンに、主人公が訪れた未来で、手のひらサイズのピザを電子レンジに入れると数秒後には焼きたてのでっかいピザができあがる場面があります。
僕は劇場でこの映画を観ましたが、客席のあちこちでクスクスと笑い声が上がっていましたっけ。
その笑いの裏には、「いやいやいや、まさかまさか」という気持ちと、「けど、あんなふうに簡単にピザができたら良いよね」という観客たちの願望が見え隠れしていた気がします。
このシーンのテーマは、「未来的な食べ物とはどんなものか」。
現代(1985年)ではあり得ないけど、数十年後の未来ならできていてもおかしくないもの──映画スタッフたちは想像力をフル回転させて、誰も見たことのない料理に知恵を絞ったのだと思います。
この場面を日本に置き換えるとしたら、さしずめ「ピザ(アメリカ的なありきたりな食べ物)」は「ご飯(日本的なありきたりな食べ物)」になるんじゃないかなと僕は想像しています。
たとえばカップラーメンのように、お湯を注いで3分待てば熱々のご飯ができちゃう──そんな未来の食べ物。
なんて思っていたのですが……
実は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が公開される10年も前の1975年に、カップご飯はすでに商品化されていたのです。
豊作続きで余剰米の扱いに困っていた食糧庁が、チキンラーメンやカップヌードルを生み出した日清食品の安藤百福社長に「カップヌードルのように手軽に食べられるご飯を作ってほしい」と要請し、「カップライス」という商品が誕生したのだとか。
かすかな記憶ですが、僕も当時に食べてみて
「なんか違う。やっぱラーメンのようにはいかないのかな」
なんて、生意気な感想を漏らしていた気がします。
それから50年を経た2025年の今、インスタントご飯はもはや特別なものではなく、当たり前の食べ物になりました。
お湯を注ぐだけでできるカップご飯も格段に進化していますし、電子レンジで温めて食べる冷凍チャーハンなどは、唐揚げと並んで冷凍食品の主力商品にのし上がっています。
「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」──フランスのSF作家、ジュール・ヴェルヌの言葉ですが、気づけば僕たちは、かつてSF映画で描かれたシーンをいつの間にか追い越しているのかもしれません。
さて、過日。
お米の代わりにオートミールを使って中華粥を作ってみました。
一口目の感想は、
「なんか違う。やっぱりお米のようにはいかないのかな」
でしたが、よくよく考えると、たった数分でできてしまうこの中華粥は、お米のお粥よりもずっと未来的なのかもしれない──そんなことを思った、とある日のランチタイムの出来事でした。
【材料】(1人分)
-調理時間:6分-
- オートミール:40g
- 水:180ml
- 卵:1個
- 鶏がらスープの素:小さじ1(または中華スープの素3g)
- 刻み葱:適宜
- 炒り胡麻:適宜
【作り方】
- 小鍋にオートミール、水、鶏がらスープの素を合わせて中火にかけひと煮立ちさせます。そのまま弱めの中火で3分煮ます。待っている間に盛り付ける器に卵を割り入れてよく溶いておきます。
- 溶き卵を作るとどうしても器に少し残ってしまってきれいに使い切れないですが盛り付ける器で作れば最終的に料理が戻ってきますので無駄なく卵を使い切れます。
- 1.に卵を流しいれ軽くかき混ぜながら30秒煮ます。火を止めて蓋をし、30秒むらします。
- 2.を器に盛って刻み葱、炒り胡麻を散らせばできあがり。
【一口メモ】
- もちろんお米の粥とは食感が異なりますが、これはこれで“あり”な中華粥だと思います。普通に美味しいですし、何より炊飯が不要なので、インスタントラーメンのようにサッと作れる手軽さが魅力です。
- 具材はシンプルに卵と薬味にしていますが、お好みで鶏肉(ささみや胸肉がおすすめ)やシーフードミックス、きのこ類、野菜を加えて、にぎやかなお粥にアレンジしても楽しいです。
- 隠し味にオイスターソースを3g(小さじ1/2)加えたり、仕上げに五香粉・シナモン・花椒をひと振りすると、より中華っぽさが増しておすすめです。