時は1980年代。
馴染みの焼鳥屋の店主から聞いたお話。
彼は大学を卒業してすぐオーストラリアに渡って3年ほど料理修業をしていたそうなのですが当時まだ珍しかったうどん屋で変な光景を見たとか。
「うどんのスープだけ飲んでうどんを残していてん」
確かに「肉うどんをうどん抜きで」なんて注文をした吉本新喜劇の芸人さんがいたけどそういった発想なのかしらん。
で、件の焼鳥屋の店主はなんとなく興味が湧いたのでうどんを食べていたオーストラリア人に感想を聞いてみたそう。
そしたら──
「スープは旨いが具はイマイチだった」
ええと……。
うどんは具材ではなくあれがあの料理のメインなのですがという店主の心の叫びが聞こえてきそうです。
けど外国の人の視点に立って視たらそれも無理からぬことなのかもしれません。
彼らが知る麺料理と言えばパスタなど。
皿に盛ってソースを絡めて食べるというイメージがあります。
スープパスタを盛るのもせいぜい深めの皿です。
ドンとボウル状の器を出されてそこになみなみと液体が張ってあったら
「これはスープ料理か。ならこの白いのはクルトン的な具材かな」
と思っても致し方なかったかもしれません。
時は下って数年前、回転寿司屋でネタだけ食べてシャリを残す女性がけっこういるという話がSNSで物議をかもしていました。
理由を訊くと「糖質ダイエット中だから」とか。
「だったら寿司じゃなくて刺身を頼めよ」
なんて思ったものです。
握り寿司は刺身と酢飯が一体になった料理。
それを分解すること自体マナー違反だろと僕は思います。
似た話で最近は丼物を頼んで上のトッピングだけ食べてご飯を残す人がいるとか。
なんかちょっとやるせない気分。
料理は出された瞬間から客のもの。
それをどう食べようが客の自由だとは思います。
それでもせっかくの料理を解体されて一部のパーツだけ残されたら作り手として忸怩たる思いがあります。
けど、ちょっと待って……。
悔しがってそれで終わり?
作り手としてできることはもう何もない?
そもそもなぜそんな残し方をするのか?
──それはその料理が分解できる構造になっているからという見方もできます。
ならば同じ具材を使った丼物でも分解できないようにしてやんよ。
ということでちょっとした意地を張った結果、こんな混ぜご飯を作ってしまいました。
【材料】(1人分)
-調理時間:14分-
- ご飯:1膳分
- 塩鮭:1/2切れ
- 乾燥わかめ:ひとつまみ
- ゆかり(ふりかけ):小匙1/2(山盛り)
【作り方】
- 塩鮭はグリルでこんがり焼きます。乾燥わかめは水(分量外)に浸けて戻して水切りしておきます。
- 塩鮭の皮と身を剥がします。皮は耐熱皿に入れて電子レンジの500ワットで40秒チンしてください。カリカリに焼けた皮をキッチンバサミで粗く切ります。 ※塩鮭を1切れ焼いた場合は半量を別の料理に流用してください。
- ボウルにご飯と塩鮭の身、わかめ、ゆかりを加えてよく混ぜ込みます。これをお茶碗に盛り付けます。皮を散らせばできあがり。
【一口メモ】
- 脂の乗った塩鮭にゆかりは好相性。めっちゃご飯が進みます。あと、カリカリに焼けた鮭の皮が香ばしいアクセントになって楽しい。
- 鮭がこってり系なので千切りにした生姜や茗荷を加えるとさらにさっぱり風味の混ぜご飯になります。梅干しを叩いて混ぜるのもありだよ。
- 丼物も好きですが具と白ご飯の残量バランスを取りながら食べ進めるのがちと面倒──という方には特におススメ。混ぜご飯なので間違いなくご飯と具材を同時に食べ終えられます。