人情お料理時代小説「みをつくし料理帖」のエピソードに江戸一番と評判の料理屋と料理勝負をするお話がありました。
ヒロインの澪が選んだ料理は「さわらの昆布〆」。
その一品のみ。お膳を見てやれ「貧相だ」、「物足りない」と不満を漏らしていた客たちが料理を口に入れた途端、おしなべて黙り込む場面は圧巻でした。
「なんと言ったら良いのでしょう。手を合わせたくなるような味でした」澪のために極上の昆布を仕入れてくれた商家のご隠居はそんなセリフを口にしました。
人には誰しもルーツと言うか原風景のようなものがあると思います。
何の変哲もない料理だけどそれを口にする人の原風景を呼び覚ますような料理──それをソウル・フードと呼ぶんですかね。
この料理も僕の魂の琴線に触れるようなソウル・フードな料理でした。
【材料】(1人分)
-調理時間:3分-
- ご飯:1膳分
- 薄揚げ:半丁
[調味料パート]
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 鰹出汁:15g(大匙1)だしの素で作るとお手軽です。
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:3g(小匙1)
【作り方】
- フライパンに[調味料パート]を合わせて中火にかけ煮立たせます。
- 1.をやっている間に薄揚げを5mm幅の小口切りにしてフライパンに投入します。 ※[調味料パート]はすぐに煮詰まり始めるので手早く切ること。
- 調味料を薄揚げに絡めながら炒り煮します。水気が減って汁に粘り気が出始めたら火を止めて余熱で水気をほぼ飛ばします。
- 茶碗にご飯をよそい3.を汁ごとかけてよく混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- ガツンと来る醤油辛さ。味醂の豊かな甘味。シンプルだけど、素朴だけど、何の奇もてらっていない変哲のない料理だけど、とてつもないごちそうに感じられて。思わず手を合わせたくなりました。
- このレシピの段取りポイントは工程1.。先に[調味料パート]をフライパンに合わせて火にかけます。煮立つまでの約20~30秒で薄揚げを切って投入すればとても段取りが良くなります。
- この料理では薄揚げは油抜きをしないのがコツ。その油も料理の風味のうちなのです。
- あまり他の具材を足すのはお勧めしません。あくまでも薄揚げ一本槍。江戸の長屋で朝餉をかっこんでいるような気分が味わえますよ。